2023.10月日記まとめ

2023.10.3
窓を二つ開けて部屋の空気を換気していた。空気が乾いている。その日の午後には加湿器の水がなくなった。補充を促す赤いチカチカした点滅を床に横たわりながら斜めに見る。秒針があまりに緩慢に1秒を刻む。遠くを走る自動車の音とモーツァルトのピアノだけがただしく時を刻んでいる。

秋風にすさぶれてこのまま遠く草原の上で眠りながら空気に溶けたい。友達ができると自分の孤独が強く浮かび上がる。わたしはわたしの肉体を手放したい。こんな夜は中原中也の詩がしみる。


2023.10.5
トカトントンって木槌の音が頭蓋骨のなかを反響してる。何度挑戦してもうまくいかない。自分でつけた轍を踏む。自分の悪意の破片が落ちていて足裏が傷だらけになってもう歩けなくなる。しゃがみ込んで何度も何度もその音が反芻する。



当たり前に受け入れてもらえるって思えるのは羨ましい感性。わかったような顔して何も分かってないし分かろうしない。わたしのことこんな人だねなんて言わないでよ。耳障りのいい言葉は綺麗な暖簾を下ろしてただけでいつまでも腕押し。


夜が早足でぼくを絡め取ろうとする。柔らかな小川で息も絶え絶えに。季節がちぎれて甘美な陶酔が顔を覗かせる。僕は、誰にも所有されぬ僕は、確かにここで最後の一息を吐き切ろうとする。紅葉が燃える前に。その赤はあまりに目に痛い。

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