『あぶねあぶね。』

知り合いの社長の会社でパーティがあるから来いって誘われたんすよ、社員でも取引先の人間でもないのに、社長からじきじきにね。

そいで俺、まぁうまいもん食えるし酒も飲めるし、あとキレイどころいるっていうからノコノコと期待していったわけですよ。

俺なんかには一生縁がないっていうような高級ホテルの宴会場でさ、なんかすごい料理たくさんあってね。びっくりしたね。

社長のところ御礼に行こうと思ったんだけど、次から次へといろんな人が社長に挨拶行ってるから、俺なんてなかなかたどり着けなくて。

ひとりで高そうなウイスキー飲んでぼうっとしてたら、おねえさんに声掛けられてね。おねえさんつっても俺より下っぽいけど。

俺あんまり口がうまくないけど、めちゃくちゃ話上手なおねえさんで会話ぜんぶ盛り上げてくれて、そんで連絡先交換したわけですわ。

こりゃきょうはほんと来てよかったななんて思ってたら、今度はビンゴ大会が始まるっていうことで、こりゃ一発行くぞって。

ツイてる日ってあるもんっすね、特等の温泉旅行が当たっちゃってさ、びっくりしたよ、俺なんかがいいのかな。

横にいたお姉さんが、もし相手が居なかったらワタシ一緒に行きたいとか言うから、驚きつつもぜひぜひ行きましょうなんつってね。

そろそろお開きって頃になって、もう俺もほろ酔いでいい気分で、お姉さんに絶対連絡するねっつって別れて。

帰り際にようやく社長に挨拶できるタイミングあったから、マジできょうは最高でしたありがとうございますっつってね。

社長もひゃっひゃっひゃって笑ってて、そんで聞かれたのが、あの横に居たイイ女誰だよっていうわけ。

いや社長が連れてきたおねえさんじゃないんすかって聞き返したら、社員でもないし、そういう仕事のおねえさんでもないんだって。

じゃあなんなんだよっていうことになって、もしかしたらスリとか、あとはもっと悪事を企んでんじゃないかっていう話で。

そういえば俺、温泉旅行もしかしたらあの人と行くかも知れないから、連絡先交換してありますよって社長に言ったの。

社長が連絡してみろって言うんだけど、いや待てこれで俺は温泉旅行におねえさんといけなくなるかも知れないって咄嗟に思って。

やっぱ連絡先登録し忘れましたとかいうバレバレの嘘ついたら、社長怒っちゃって温泉旅行取り上げられちゃったわけよ。

ツイてない日ってあるもんすね。きょうはそういう日。

ちなみにあとで聞いたらあのおねえさん、社長の昔のオンナだったっぽい。

あぶねあぶね。