『在庫』
「あの、すみません」
「はい、お客様」
「これの…ピンクあります?」
「お調べしますね」
「お願いします」
「お客様…あいにくピンクは在庫ございません」
「そうですか…次の入荷は?」
「メーカーのほうでも製造未定のようです」
「残念…カタチが気に入ったんだけど…」
「グレーかブラックでしたら在庫に余」
「いやです!」
「申し訳ございません…では、ホワイトなど」
「白ねぇ…それって真っ白です?純白?」
「えぇご覧のとおり」
「それは逆に汚れが目立ってしまって…」
「さようですか…」
「やっぱりこの型番のピンクは人気なんですね」
「はい、最近ではレインボーと並んで人気ですね」
「店員さん、わたしどうしたらいいでしょう?」
「別の型番をあたることをお勧めします」
「やはりそうですか…お店はここだけですよね?」
「はい、当店が独占させていただいておりまして」
「あっちょっと待って店員さん!」
「どうされました?」
「この、この、薔薇、薔薇色っていうのは?」
「あぁ薔薇色ならお探しの型番で在庫ありますよ」
「お値段は他の色とかわらないですよね?」
「えぇもちろん」
「薔薇色ください!すぐに!」
「か、かしこまりました!ご用意します」
「それにしても薔薇色、素敵…」
「お客様お待たせしました」
「きょうお会計して、いつになります?」
「はい、次が…」
「なるべく早い方が良いんです」
「あぁいま臨月の女性がいますのですぐに!」
「ほんとに?うわぁうれしい!」
「ありがとうございますお客様」
「御礼を言うのはこちらですよ店員さん!だってわたし、薔薇色の人生を手に入れたんですから」