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『被せ気味にプロポーズされた』


河川敷に散歩に出かけようと彼氏に言われたから

そんなに気乗りがしなかったけど

ついていった


夕陽のせいでまだ暑いし

蚊がぶんぶん飛んでいて

あんまり心地よくはなかったけど

道すがら買ったアイスカフェラテに

助けられた


ベンチに座ると

少年野球チームが練習を引き上げる光景


そういえば付き合い始めた頃

いまと同じように

河川敷に腰かけて

ぼうっとした記憶があるよ


こんなのって

その日以来かな


わたしたちは

付き合って

4年になるね

5年か


そんなことが脳裏をよぎったから

問いかけてみた


「ねぇ、そろそろ」

「ん?」

「そろそろ5年経…」

「結婚しよう!」


被せ気味にプロポーズされた


NOという理由を

わたしは

持ち合わせていなかった


「だから河川敷に誘ったの?」

「まぁ、そうだな」

「わたしは、かまわないよ」

「よかった」


それからわたしたちは

なんだかまた

付き合い始めたころの気分に戻って


じゃあ式はいつにする?

どこでやる?

もちろんいつかは旅行も行きたいよね?

なんて話になった


ひとまず二人だけで

ちょっとしたお祝いに食事でも

なんて話になったところで


彼氏はさっそく検索して

レストランのリンクを送ってくれた


「な、なつめなな?お店のなまえ?」

「え?え?」

「いま送ってくれたリンク」

「あ、えぇとそれ…」



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こちらの作文は、kesun4様から一言「夏目ナナ」というお題をいただき書かせていただきました。私、こっち方面にはそれなりに精通(←)しているつもりだったんですが、恥ずかしながら存じ上げない人名で、改めてぐぐってなるほどと思った次第でした。素敵なお題です。夏だからって思い出さんだろふつう。

kesun4さん、ありがとうございました。


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