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『とても記憶はあいまいで』


とても記憶はあいまいで


小学校低学年の頃

視聴覚教室で観せられた

よくわからないフィルム


たしか砂漠の風景と

アマゾンかどこかの

ジャングルの風景


自然を大切にしましょう

そんな感じだったと思う


これといって

特別な瞬間でもないのに

何年経っても

いくつになっても

なぜか覚えている


そんなことって

あるでしょう


もうひとつは

包丁で背中を刺されたこと


同級生が家庭科の時間に

ふざけて僕の背中を


そいつは悪意なく無邪気に

とっても無邪気に

ふざけて僕の背中を刺したんだ


でもその瞬間の風景は

不思議なことに覚えていなくて


たしかこれは6年生だったと思う

カレーを作っていた

ということしか記憶にない


幸い刺さった場所が良かったので

命に別状はなくて

でも1か月は学校を休んだよ


僕が学校に戻ったら

その同級生は居なくなっていて


うん

もちろんそうだよね

今となっては理由はわかる


あぁそうだ

父は以前

映像制作会社に勤めていて


とはいっても

小さくて地味なところで

教育系の映像を作っていたらしい


砂漠とジャングルのフィルムは

父の会社が作っていたと

あとから聞かされた


学校の先生に

ゴマをすって

接待漬けにして

教材を買ってもらってたんだって


大人の社会ってのは

そういうものだ

父の口癖がこれだったよ


同じ昔話を繰り返す父は

砂漠とジャングルのVHSみたいで


もうテープは

だいぶ擦り減っている

そのうちに切れて

再生できなくなるんだろな


それと

僕を刺した同級生は

おそらくとっくに

娑婆に出てると思う













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