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『これしかなかった(はず)』


「ふつうこういうのは、死んでからなんだけどな」


晴れ晴れとした夏空のもと

本社ビル屋上の庭園で


かっかっかと笑いながら

社長みずから幕を引く


じゃじゃーんと引かれた布の下から登場したのは

なんとも立派な

社長本人の銅像


(に、似てない…)


式典に寄せ集められた社員一同の感想は

これしかなかった(はず)


「んん?これ俺か?」

自身も目を見開いて銅像を覗く


社員一同うつむく

じっと目を閉じるもの

吹き出しそうになるのをこらえているもの


(なんでハゲ社長なのに銅像は髪があるんだよ)


「これ、俺?」

秘書に確認する社長

さすがに彼女だけはうつむくわけにいかず


潤んだ瞳をじっと向けていた


そんな矢先

にわかに雲行きが怪しくなり

ピカっと光ったと思えば

ドドォンという激しい落雷

にわか雨


式典は中止となって

社員一同

各自のデスクに戻ることになった


なお屋上の避雷針のおかげ

あるいは

”髪の毛”のおかげで

社長の銅像は

無事である

















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