『志望する大学へ』
いい歳をして
俺は駄々をこねた
進路指導の三者面談で
駄々をこねた
働きたくない
大学に行きたいと
駄々をこねた
前日までは
学校の紹介する会社に
喜んでいくつもりと
両親には伝えていた
担任のほうからも
紹介先は心配するなと
そう言われていて
ところが俺の本心は
そうではなくて
担任の顔色が変わり
母親の困惑も手に取るよう
キミの偏差値では残念だけどと
担任はあっさりと言う
そんなことはわかっている
今年は受けない
1年間勉強して
つまり浪人ということ
それから
志望する大学へ
俺は行くんだ
学費はどうするの
予備校だってお金が
そんなことを言い出す母親
けっきょく
俺への思いやりなんて
そんなものかよ
予定していた45分
面談時間はあっという間に終わり
きょうのところはまず
家庭内でゆっくり話して
後日また学校で
ということになった
俺の意志は固い
予備校はすでに
申込みを済ませている
実はこの計画
密かに姉ちゃんにだけは
伝えてあって
ありがたいことに
大学を去年出て
今年から働いてる姉ちゃんが
予備校代を
持ってくれるっていう
勉強して
いい会社に入って
ぜったい返すからって
そう約束して
そんな姉ちゃんを
裏切るわけにはいかない
楽じゃないのは
姉ちゃんや先輩の話を聞いて
よおくわかってる
一分一秒でも惜しんで
勉強をしないとなって
父親が帰宅してきて
晩飯のあとに家族会議
東京に出た姉ちゃんも
リモートで繋いで
父親は予想外に
俺の気持ちを受け入れてくれた
姉ちゃんからは
学費を自分が出すって話があって
それで母親はなんだか諭されて
けっきょく俺は
来春からは浪人生
再来年から
大学生
そういう道を
歩むことになる
一件落着
きょうは疲れたから
ちょっとゲームでもして
アイスでも食べて
寝ようかな
勉強は
明日から