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『ゴンドラ戦隊ロープウェイジャー』


ヴインヴインヴイン

鉄製の滑車が唸る


俺がここのロープウェイで働き始めて

つまりレッドロープウェイジャーになって

もう5年は経つんだな


ふだんはお客様の乗り降りの補助をしている


コロナ禍で客足が遠のいたときは

失業が怖くてまいにちひやひやしていたが

幸いにも観光需要の高まりとともに

お客様に紛れて怪人がやってくるのだ


きょうもまた

団体バスの御一行に紛れて

怪しいやつがひとり


あぁ巨大ハサミを持つ

ロープヂョッキリがやってきた


ヂョキヂョキヂョキヂョキ

ヂョッキヂョキ

器用にハサミにビールヂョッキを持ち

泥酔でゴンドラに乗り込もうとする危ない奴


もちろんチケットも買わずにだ


俺はすかさず

整備士のブルー

チケット販売員のピンク

頂上の食堂で働くイエロー

駐車場整理のグリーンを呼んだ




「ちょっと待って!そいつは白よ!」




チケット販売員のピンクが言うには

ヂョッキリはいつもと違って

きょうは回数券を持ってきたから

黒とは言えず

グレーだとのことだ


色ばっかり出てきてややこしいのは

ごあいきょう


ふん

ヂョッキリめ

どうせその回数券

新宿の金券ショップで買って来たんだろう




「それは別にいいだろ」




俺のひとりごとを

レンジャーでもなく戦闘にも参加しない

社長が聞いていたようで

背後からツッコミを入れてきた


でもね社長さぁ

あとメンバーのみんなも聞いてるかな?


ヂョッキリはなぁ

泥酔しているんだぞ

ハサミでいつロープを切るかわからないんだ


とっても危ないんだよ

これまであいつにどれだけの目に

遭わされてきたことか

みんなは知らないだろう


まぁそれも無理はない

社長をはじめ他のレンジャーの4人は

ここで働き始めてまだ半年



コロナ禍で親会社が変わって

新しいほうの会社の

社長と社員の方々


じゃあ俺レッドがなぜここに5年もいるかって?


それは俺がバイトだからだ


バイトは安いから

いまの社長がそのままでいいよって

言ってくれたらしいんだ


だから俺は社長には

頭が上がらない


ヴインヴインヴイン

鉄製の滑車が唸る









(あとがき)
ついこないだも戦隊ヒーローものを書いた気がするけど別にいいか



















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