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『伯父』


「彼氏は連れてこないのか」

「そろそろイイ歳だぞ」

「周りはみんな嫁に行ってるだろ」


近所に住む伯父は

時代錯誤が甚だしくて

いつもわたしに

無用なお世話を


伯母さんのほうも

とくに咎めるでもなく

ニコニコ頷いていて

悪気がないから

たまったものじゃない




それで

わたしは結婚するよ




結婚式はもう

両親と友達だけで

つつましくしようとしてた


でも夫のほうが

ちょっとしたお家で

ご親族も多いうえに

会社関係もかなりの数


そんな感じだから


つり合いをとろうとしたって

とても無理なんだけど

それでもいちおう

わたしのほうもできるだけ多く

呼ばないとって


そういうの苦手なんだけどな


けっきょく

500人近い出席者の

派手な披露宴になるみたい




「なんだもうデキちゃってんのか」

「順番が逆だろう」

「やることはやってんなあ」


わたし伯父に一言も

そんなこと言ってないのに

ほんっとにデリカシーがない


この人だけは披露宴に

呼ぶのやめようかな




なんて思っていたのも

仕事とか準備に追われて

いつのまにか当日


人数に圧倒されているのはもちろん

家柄の違いってやっぱりあるよね


うちのほうの親族は

なんだかそわそわしちゃって




挙式が終わって

披露宴




あぁそういえば

伯父はお酒が入ると余計に…


もう気が気じゃなくって


夫の上司の方の

乾杯の挨拶が終わったときに


とつぜん伯父が大きな声で

手をあげて


「あのー」


えっなに?


「ちょっといいですか!?」


慌てて司会者がどうしましたかと

やめてよね


「いやそのね」


しーんとする列席者一同

おねがいだから


「席次表きょろきょろタイムないの?」


会場は皆ぽかんとして



「こんだけ多いんだからさぁ、席次見てさぁ、誰が誰でって把握してさぁ、お近づきにならなくちゃなぁ、せっかくのめでたい披露宴、新郎新婦もこれから家族、ひとつになるんだからさぁ、だからきょろきょろさせてよぉ、別に絡んだりしねぇよぉだから司会者のあんたさぁ、全員を紹介してよぉ」



もしかして伯父さん

とってもイイこと言ってる?


でも500人いるんだよなって


夫とわたしは目を見合わせて

苦笑い


そしたら司会者さんが

「それでは右端の方から」

とか言い出したものだから


慌ててうちの父がそれを制して

それから伯父をなだめて

そのままご歓談になったの


伯父さんはけっきょく

楽しく飲んで最後は寝ちゃって


無事におひらきとなりました




ちなみにこれは

あとで知ったんけど


伯父さんからのご祝儀

夫側の列席者の

お金持ちたちを差し置いて

いちばん多かったみたいで


だからってわけじゃないけど


だからってわけじゃないけど!


なんだかんだで

素敵な結婚式だったなって



























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