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『「夏の晴れやかな太陽はときに残酷なのさ」』


「きみはなぜ、泣いているの?きかせてよ」

「…」

「黙っていてはわからないよ、さぁ」

「…」

「ほら、外をごらん!こんなに晴れやかだよ」

「あの…」

「うん」

「そっとしておいて…もらえないかな?」

「どうして!ぼくはきみのためを思って!」

「…」

「いけない…また声を荒げてしまったね」

「…」

「夏の晴れやかな太陽はときに残酷なのさ」

「あ、きょうはそれ?」

「そう…かな…」

「満足した?」

「うん…わるくない」

「じゃあきょうはこれで…」

「ちょっと待って、たまにはランチでもどう?」

「友達と約束があるから…」

「そ…そうか、ありがとう」


--


モラハラ吟遊詩人の彼は

毎日の創作の種に

わたしのことを

懐柔して

キラーワードの天啓を待ちます


きょうはわりと早く済みましたが

長いときは

半日以上かかることもあって


それでもわたしは

彼の書く詩が好きなので

満足しています


もともとわたしたちは

大学の音楽サークルで出会い

フォークデュオで

活動していました


ところが少し

音楽の好みが合わなくて(彼が浮気して)

活動範囲もズレて(わたしもつい浮気して)

デュオは解散しました


そして

彼はギターを置いて

口述専門の

吟遊詩人として

全国を旅し

公民館でお年寄りに

幼稚園で子供たちに

刑務所で囚人たちに

魂の叫びを訴え

活動しています


いっぽうわたしも

地下アイドルになり

公民館でお年寄りに

幼稚園で子供たちに

刑務所で囚人たちに

萌えの伝道師として

活動しています


わたしたちも

いい歳になりました

でも気持ちは

十代のままで


ところで周りからは

配信とかしないの?って

言われますけど

よくわからないので

やってません


最近の悩みはもっぱら

年金がもらえるかどうかです

もっとも

払っていませんけど









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