『仰向けでヘッドスライディングする術を』

とても長くて

とてもつらい

猛練習の成果で

ようやく身に着けた

シグナルをきっかけに

一目散にダッシュ

ターゲット目前で反転したら

仰向けでヘッドスライディングするという

高度な技術を

コトの発端は寿司

そう

みんな大好き

あの

お寿司

食いたいがそんなカネはない

もう何年もありついていない

このところはずっと

近所の回転寿司屋を

ガラス越しに

指を咥えて

覗くばかりだった

ああタコか

サーモンか

コーン軍艦か

ある日曜日のお昼ごろ

店内を一周するレーンの角で

皿が渋滞し

ついにはバアァーンと何皿か

飛び散ってしまうという

大惨事が起きた

無残にも

愛しき寿司たちは床へ

「あれだ！」

目撃した瞬間に

電流が体内を駆け巡った

その日から

猛特訓が始まったというわけ

カネを払って寿司を食う余裕はない

かといってゴミ漁りをするほど落ちぶれていない

だったら

レーンを外れて床に落ちる寸前の寿司を

仰向けヘッドスライディングで

我が口へ

放り込めばいいのでは

そして技術は身に着いた

来る日も来る日も

待った

皿が渋滞に耐え切れず

飛び散るときを

ところがあの事故以来

店側は工夫をしたのか

クラッシュは起こっていない

※なおレーンを外れて床まっしぐらの寿司を仰向けヘッスラで口に入れる行為も立派な犯罪とみなされると、きっと有識者も言うと思うし、そんな事件が発生しそんな技術で口に放り込むことが現実に起こりえるかというと、別の有識者はノーと言うでしょう。あと仰向けヘッスラで頭をぶつけて、もともと悪いアタマがさらに悪くなっても知らないよ。みなさんごきげんよう。