『その名も”不謹慎カフェ"』
脱サラをして
夢だったカフェを開いた
この俺のことだ
そこらのカフェとは
一線を画す
その名も”不謹慎カフェ"
色々な体験型カフェが
巷を賑わせていると思う
そんななか
俺が思いついたのは
不謹慎な光景を見ながら
食事や雑談を楽しめる店
たとえば最初の企画はこれ
徳の高い坊さんを呼び寄せ
説法をしてもらうという趣旨
ところがそれは表向きで
店の庭先に落とし穴を掘ってあり
ズンドコに陥れてやろうという
爆笑必至の大仕掛け
さっそく告知を出した
駅前でチラシを配り
フリーペーパーにも出稿
SNSでも呼びかけて
瞬く間に予約で満席
よっしゃこれで
と張り切ったものの
肝心の坊さんにまで
バレてしまった
徳の高い坊さんだから
ワンチャン理解して
乗ってくれるかと思ったけど
そんな期待も淡く
激怒された
情報統制って難しいのな
しょうがないから
代替の企画を練った
よっしゃこれでいこう
その日の朝
ケイムショから出てきた人を
店に呼んで
ナカでの暮らしっぷりや
どんな思いで過ごしたか
それを訊くという
設定
だけど客らはその人に
いっせいに生卵を
投げつけるっていう
なんせ囚人は
得られる情報が限られてるから
やりやすいもんな
逆切れして
ソッコーでまた
塀の中に戻ったりして
あぁそうだ
落とし穴はもう掘ってあるから
別に生卵じゃなくていいんだ
生卵もったいないし
食べ物で遊んだらダメって
おばあちゃんの言いつけだし