『「常温に戻ってるなら、やっちゃって」』


「先生、そろそろ解凍しておきますか?」

「そうだな、今から出しといたら明日の朝には…」


働き手が不足している仕事ほど

若者たちはやりたがらない

集まらない

抗えない高齢化の波がどこもかしこも


「先生、できましたね」

「ふぅ…できた」

「さっそく被験体に射しますか?」

「常温に戻ってるなら、やっちゃって」


だったら

惜しまれつつも若くして亡くなった者たちを

"カラダと脳の一部"だけ蘇生させて


考えることはできても

自分の意志を持たない

いわゆるゾンビ状態にできればと


「先生、さっきの被験体ちゃんと動いてます」

「お、成功だな。とりあえずこの部屋の掃除でもさせてみるか」


それが実現すれば

下手な人工知能やロボットよりも安価で


無給かつ

無休の

元気な働き手が

確保できるだろうと

とある研究者が新薬を開発した


「先生、そういえばこの薬って、死人じゃないと効かないんですか?」

「いや?生きてても効くはず。ちょっと効きが弱いかも…だけど」

「だったら…」

「やめろよ!」


「すみません、悪い冗談でしたね…」

「いや、こちらこそごめんな…」

「そんな…謝らないでください」

「実はもうね、君に無断で射してあるんだよ」















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