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『「先生は!まさに!きょう!この日!その若さの大切さを!痛感した!」』
「まぁ…先生なんてな…こんな情けない担任だったから、なにもおまえたちに教えてやれたことなんてないんだけど、それでもいちおう教師の端くれとしてな…これだけは伝えたい。おまえたちは、本当に、本当に、可能性の塊だ。チャンスは無限にある。」
卒業式のあとの
最後のホームルーム
担任の田中が熱弁してる
いつもはふざけてばっかりで
ロクに授業もしないんだけど
きょうはなんだか
様子が違うぞ
「進学する奴ら!勉強頑張って、学生生活楽しんで、思いっきりやれよ!社会人になる連中!おまえらもう一人前だ。胸張って生きろ!だけど小さくなるな、失敗を恐れるな!先生の教えた方程式も…まぁ忘れないでほしいけどそんなことよりもっと大切なことがある。そして今しかできないことってのがある!」
クラスのなかには
目頭が熱くなってる奴もいる
俺もなんだか
もらい泣きしそうだよ
「先生は!まさに!きょう!この日!その若さの大切さを!痛感した!」
それを痛感した?
どういうことだ?
涙を浮かべてた連中も
いったんキョトンとしてる
いっぽう田中は号泣して
「先生は!中野にフラれた!」
教室がざわつく
うわああああっと
声を上げて泣き叫んで
教室を飛び出したのは
田中にコクられた
クラスのなかでは
5番目(俺基準)にかわいい中野
女子何人かが
中野の後を追いかけて出て行った
「先生のことは尊敬してるけど、そういうことじゃないらしい!」
うわああああっと
田中もいっそう号泣する
「LOVEじゃなくてLIKEだって!俺は数学教師だから、英語よくわかんね!三次方程式で答えてほしかった!」
いよいよ訳が
分からなくなってきた
「おい原口ぃ!」
あ俺呼ばれた
やっぱりそうきたか
「奢るから今夜付き合え!とことん呑むぞ!」
2留してハタチを過ぎてる俺は
ちょくちょく田中に誘われる
そんな俺は来年も
この学校に残る(残りたくはない)
今夜は長くなりそうだな
(あとがき)
季節感