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『顛末を聞いた母は』


一人娘だった母は

祖父が創業した会社を引き継いで

いまや国内では知らないものはおらず

海外にも多くの拠点をもつ

国際企業にのし上げた


一人息子の俺は

そんな敏腕経営者である母の秘書として

出来がいいとは言わないまでも

それなりの仕事っぷりだと自己評価している


父は祖父に拾われて

この会社に長く勤めていたものの

働くことが嫌になったのか

早期退職をして

毎日ゴルフばっかり

おまけに

フリンまでしている


母と俺が懸命に働いている傍らで

放蕩の限りを尽くす父


もともと夫婦の間に

愛情などなかったのかもしれない

俺がこの世に生を受けたのも

なんとなく成り行きで

夫婦が夫婦であるための

そんなものを偶像化したのが

俺なのかなって

ときどき思う


さておき


父のフリン相手に

俺は迫られている


父との逢瀬の隙を見つけては

オンナは俺に連絡をしてくる


無視を決め込んでいると

会社に突然現れたりと

面倒なことこのうえない


母もそれには気づいているが

おかまいなしといったところで


ある晩

めずらしく父が

自宅で夕食をとっていたので


オンナのことを洗いざらい

父に言いつけた


父は激昂した

俺は殴られた


理解を超えたので

俺ははっきりとした理性の名のもとに

父に反撃した


手加減はしたつもりだった


しかしもうすぐ還暦になる父と

二十代の俺とでは


父の口元に血が滴る

その口を開いて

父は言う


「お、お前も…ひ、避妊は…してるんだろうな?」


早く〇ねばいいのにと

心から思った


顛末を聞いた母は

爆笑していた












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