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身なりで身を守る (防犯。隙を見せない旅・その3)


日本の人たちはオシャレだと思う。世界基準からするとファッションにとっても敏感だ。雑誌に載っているような、全身キメキメな人も多い。
しかし、あまりにもオシャレだとイコール、お金持ちと判断される。あるいはイコール日本人だと。そうなると、ターゲット・ロックオンだ。
「浮かないようにする」といえば、格好にも注意が必要だ。目を付けられないことが大事なので、観光客はあまり目立つような姿をしないことをオススメする。

新品じゃなくたって、くたびれていていい。シンプル・イズ・ベスト。
高価な時計もしない。高価そうなアクセサリーもオススメしない。襲われそうになったら……ということを前提にして、人にあげても惜しくないものを身につけよう。ダイヤのピアスを引きちぎられたという話は噂なのかもしれないけれど、治安の度合いによっては、あってもおかしくないと思う。
旅の間は目立たない。飛び抜けて素敵でなくていい。自己顕示欲は自分の家のクローゼットの中に置いてこよう。私は以前、真っ赤なダウンを持っていたが、わざわざ従兄弟がもう捨てるという茶色のダウンを羽織って中国を旅をし、道を聞かれるほど現地に溶け込んだ。そう、何度も言うが、溶け込むつもりで。
志茂田景樹のようだったり、叶姉妹のようだったり、人としてこう、何かものすごく近寄り難いレベルまでファッションが完成しているのなら、私も何も言うまい。
しかしそうではないのなら、派手な服は避けたほうが無難だ。リゾート系リッチな旅行者も高級レストランにタクシーで行くならいざ知らず、単なる街歩きなら防犯のために極力質素なのである。

特に女性は基本的にリゾート地ではない限り、肌の露出の多いスタイルは避けよう。またリゾート地であっても人通りの少ない場所や夜は十分に気をつけて。
日本の場合、痴漢に遭うと「ミニスカートを履いているのが悪い」という発言に対して、「そっちが悪いのに何言っちゃてるの⁉︎」と反論するという構図がある。それはごもっともな意見だとは思うのだけれども、深刻な性犯罪が起こってから「ミニスカートが悪い」「なにそれ!」などと吠え合っても埒があかない。
自分のスタイルを貫いている場合ではなく、環境に適応していかなければ命取りである。とりわけ初めての土地では、まずは防衛することを第一に考えるべきだ。


そもそも。たとえば寺院や教会など、観光資源が宗教的施設であった場合、そういう場所でのショートパンツやタンクトップなどは入場をお断りされることが多い。これは男性も同様だ。寺院などに行く予定がある場合は、長袖のカーディガンや長ズボン、巻きスカートなどを持っていくなどの対策を立てよう。

ファッションでクロス(十字架)のアクセサリーをつけていたり、クロス模様がデザインされた服を着ている人。が、それは宗教問題に鈍感な日本でならOKかもしれない。しかし十字架はイコール自分はクリスチャンだという主張にみなされる。
イスラム圏のうち、歴史的な因果関係からキリスト教に強い反感を持っている地域では、「お前はキリスト教徒なのか? 違う? ではなぜ」などといった余計な宗教論争に巻き込まれないためにも(街中で簡単にふっかけられる)、そういったファッションをあえて選ぶのはやめよう。

同様に、うっかり読めない文字入りTシャツを着ていて、それがアラーを批判していたり、なにやら卑猥な言葉が書いてないかチェックしておこうね。
以前も触れたことがあるが、かくいう私は昔、よくわからないでタイの露店で買ったTシャツが、ズバリ「大麻」のイラストで、なんだかヤバそうな奴らに声をかけられた、なんてこともありましたね。ボタニカル柄じゃなかったわけだ……。


また、その土地の民族衣装を着て歩いている日本人もたまに見かける。
ベトナムのアオザイだとか、モロッコのジェラバだとか、インドのサリーだとか。日本円からすると随分とお安い値段で売っているので、異文化にどっぷり酔いしれている最中、ディズニーランドのグッズ感覚で、つい買ってつい着たくなる気持ちはおおいにわかる。
しかし、そこはコミケ会場でも、その日はハロウィーンでもないのだ。非日常の世界を非日常的な衣装で楽しんでいるのは、君だけなのだ。いや、現地の人はサリーだのジュラバだの着ている。が、外国人の君は完全に浮く。
そんな衣装を纏った君を、現地の人はどう思っているだろうか。「おお、うちの文化を愛してくれている、いい人よ……!」だろうか。違うね。現地の人々には「押しの弱い、なんでも買ってくれそうな観光客。すなわち『カモ』が来たよ!」と映る。当然、魅力的な君は何ちゃらホイホイのように、物売りや客引きや悪い奴らをドンドンと惹きつけてしまうのだ。


ちなみに女性へのアドバイスとして。
国によっては日本人女性というだけで、めちゃくちゃ声をかけられるところもある。もうモテるを飛び越して、何というかディズニーランドのミッキーのように、すれ違う人ほとんどが声をかけてくるのである。
そういった国の女性は、基本的に宗教上の理由により布で顔やボディラインを隠していたり、1人で外出したりしないことが多い。女そのものをあまり見ないといった、禁欲的な国である傾向がある。
なので、彼らは外国人の女には、本当に軽い気持ちで声をかけてくるのだ。とくに日本人女性は、異教徒だからどうでもいいのか、華奢だからか、物腰が柔らかいからか、声をかけられやすいという傾向がある。西洋人の女性と比べて、彼らの我らにグイグイとくる感じは明らかに違った。
上記の理由以外には、「強く断らないので押し切れる」と踏んでいるか、「日本人は尻が軽い」という噂(ある、本当に)を信じ込んでいるか、「金持ちなので、運が良ければ玉の輿」と勝負をかけるのか強引に攻めてくる場合もあるように思われた。本当にやかましく、おちおち街も歩けない。嬉しい悲鳴とか、そういうのを超えて、疲弊するほどの騒ぎなのだ……。
そんな過剰なモテキに入った時のために、あるいはそもそも護身用のために、女性は「指輪」を持っていくのもアリだ。そして声をかけられたら「主人はホテルで寝てるんだけど」と言いながら、左手で頬杖でもついて薬指をチラリと見せると、潮が引くように諦めてくれる。たまにめげない人やニブイ人、そんな風習を知らないっていう地域もあるんだけどね!

(その4へ続く)



ここまで読んでくれただけで、うれしいです! ありがとうございました❤️