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映画の秋、読書の秋、大学開始。日記。

半袖が心許なくなったと思ったら、パーカーでは汗が滲む暑さになったり。秋の気温の変化は難しい。でもそんな天気も秋らしいと目を細めている間に、一気に生活が加速した
長い休みを終えて学期を始めるたびに、身にかかる風圧が強くなることに驚かされる。こうも私の生活は穏やかになっていたのかと、加速してはじめて気付かされる。
大学3年目の秋、良きものにしたいもんだ。

来学期以降の身の振り方に関してはまだ悩んでいるし、生活が変わったので考えも変わりそうではあるけれど、取り急ぎ、また始まった新しい生活を、丁寧に送ろうと思う。

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そういうわけでここ数日のコンテンツ日記。
映画を2本観て、高田郁さんの『あきない世傳 金と銀』『みをつくし料理帖』を読了。自分の関心領域の本も併読し始めている。


ラストマイル

久しぶりの大スクリーン。ベトナムでよくわからないタイのホラー映画を英語字幕で見たぶりの映画館だ、半年ぶり。こんなに映画館に行ってないだなんて、何やってるんだ私。

手のひらサイズのデバイスで手軽に映画を見れるようになった便利さを、私はほとんど無批判に享受していたけれど、あぁあれはコンテンツ消費に近い見方だったなぁと、フルスクリーンのお陰で気付かされて反省させられたりもしつつ、味わってきた。
(もちろん、3日間で2クール分ドラマ見切る荒技でアンナチュラルとMIU404も予習済みです。)

思うことは本当にたくさんあった。

・マジックワードに踊らされること。
・生活は、構造に立ち向かうには重すぎること。
・消費欲を駆り立てて、駆り立てられて消費して、そこで犠牲になっているのはどこなんだろうか、私はそれが許し難い、ってこと。
・資本主義や新自由主義やその辺り、もうちょいロジカルに批判したいとは常に私言ってる。

など。
ちょっとダラダラと書き連ねる。

エレナや山崎に個人的に重ねるものが多くて考えたこと、こういう構造に覚えていた憤りが加速して考えたこと、の二つがあった。

半年前、ベトナムに居た時に働いていた会社は、お金史上主義という意味での資本教がとても根強いところだった。
商材に対しても、取引先に対しても、きっと全く搾取などしていない、という点は、ビジネススタイルとしてはマシな方なのかもしれないけれど、少し突き詰めたらその前提には常に資本階級のお金遊びのような気持ち悪さがあったし、そもそも会社は人件費を削り出そうといつも必死だったし、私は嫌いだった。
だけど、私は辞められなかったし、流れを止めようともしなかった。辞めたらベトナムでの生活は成り立たなくなるし、一歯車でしかない自分に対して諦めのような何かがあった。怖かった。

そして縋ったのは、マジックワードだった。
その会社でよく唱えられていたのは、「あなたの成長のために」だったし、それこそ「Own grit」とか「Empower Asia」とか「GLOBAL Challenger」みたいな標語が壁に描かれていたりもして、そういう言葉で私は上司から頑張るように言われていたし、自分で自分のお尻を叩いたりもしてた。

そんな半年前の自分の葛藤が、いろいろ重なった。


稼働を止めたら生じる損害は数十億単位な一方、末端のドライバーがどうにかして勝ち取った賃上げは数十円単位、この圧倒的な不均衡。そんな中で身と心を削って働き続けるエレナは、自分の生活を背負っているのだから、加速する歯車を止めるわけにはいかない。マジックワードだと知っていても、誰かを使うための言葉たちにすがるしかない。

この世界は常に不均衡だ。資本階級と労働者階級、植民地と被植民地、男と女、教師と生徒、どんな場所でも権力には勾配が常にあって、だから私たちは、自分が手にしているものと手にしていないものを、誠実に吟味しなくてはいけない。
だけど。
一生活者である自分に、渦を巻くような大きな大きな流れに立ち向かうことなんて、出来ないじゃない。

映画では、ラストで賃上げを勝ち取って、安らかに眠るエレナがそこにはいたけれども、だから、私は素直にそれを喜べなかった。

この世界は良いものだとは私は思えないけれども、直に人に触れる、ラストマイルを走る人には、その温もりには、期待したい、とも思ったけどね。

あんのこと

こちらは手のひらサイズのスクーリンにて。などと書いてみれば、インスタントな映画視聴にも気持ちの面で歯止めを効かせられるだろうか?

死ぬか殺すしかないじゃないか、と思ってしまった。あまり大きな声では言えないけれど。
社会の歪み、という大きすぎる言葉ではぼやける、輪郭のある何かがそこにずっとあって、見終えた後、どっと疲れた。徹夜明けで見たからかもしれないけれど。

私たちが浮かされたように見上げたブルーインパルスの下で、当時の私と一つ違いの女の子たちが、あんなにも虚な目で地面を見ていたこと。そんな歪さはいつも現在進行形でそこにあって、でも、それでも、世界に祝福されたような柔らかい光が横顔を照らす瞬間だってきっと確かにあって、だけど。だけど。

それでも紡ぎ続けた糸がプツリと切れた最後がほんとうに悲しかったけど、涙は出なかった。

あきない世傳 金と銀

13巻、4日ほどで一気読み。こういう長編小説を一気読みするなんて、中学生以来のことで、心躍る読書体験だった。よい。

笑って勝ちに、行きたいですね。


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