戯曲『張り込み物語 ー犯人は誰だー』

張り込みを任される一人の刑事
場所はとあるマンションの一室、部屋の窓から向かいにある容疑者の住むアパートの一室を覗き、張り込みしている。

カーテンを開け、双眼鏡を覗き、カーテンを閉め、部屋をグルグル。


名探偵コナンのテーマを口ずさむ

刑事 「探偵じゃねーか!警察が探偵のテーマ歌ってどうすんだよ!・・・っつてな」

ルパン3世のテーマを口ずさむ

刑事 「怪盗じゃねーか!警察じゃないんかい!」

名探偵コナンのテーマを口ずさむ

刑事 「またコナンかい!コナン大好き人間かよ!」

再びカーテンを開け、双眼鏡を覗き、カーテンを閉め、部屋をグルグル。

刑事 「暇か!暇人か!」

ため息をつく

刑事 「あー暇だ。こいつに張り込み始めて三日目だけど、張り込みってこんなに暇だったかー?
あれだ、今回の“星”は家にいる時間が短すぎんだ。さっさと帰って来いよ、退屈じゃん。
前の張り込み先の“星”は面白かったのになー
ずーと引きこもってゲームしてんだもん。
で、めっちゃ上手いのね。ゲーム。ゲーマーだよ、ただのゲーマー。凄すぎて、見てて飽きなかったもんなー
それに比べて・・・」

ため息をつき、時計に目をやる

刑事 「そろそろ今週のコナン始まるな。たしか今週解決編だったなー」

   間

刑事  「誰が犯人なんだろ・・・全然予想つかないな・・・
うわーめっちゃ見たくなってきた。あーみてぇ。コナンみてぇ。みてぇ。コナン、コナンみてぇ。うわぁコナン、コナン、コナン。あーコナン、コナン、コナン・・・コナーーーーン!!!」

刑事 「まぁ、家で録画してあるし、この張り込み終わってからゆっくり見るべ」

カーテンを開け、双眼鏡を覗く

刑事 「お、やっと“星”が帰ってきたよ。
  買ってきたものを冷蔵庫に入れて、やさいを取り出し、キッチンへ・・・
  そうなんだよ、こいつ以外と家庭的なんだよな。
今日はニンジン、ジャガイモ、たまねぎと牛肉かー
  ・・・ステーキかな?」

腹の音が鳴る

刑事 「腹減ったなー。
そういや、山田さん遅いな。ちょっと夕飯買いに行ってくるわーって出ていって、30分は経ってるぞ。どこまでいってんだよ。そもそもカップ麺、箱で持ってきたから買い物行かなくてもいいのに。サボりか?
  あれ?“星”がキッチンから帰ってきた。料理じゃなかったのか?
  袋の中から何か取り出して、作り始めたぞ。
  よく見えないけど、どー見ても怪しいな」

チャイムが鳴る

刑事 「やっと帰ってきたよ」

チャイムが鳴る

刑事 「鍵持ってますよね?今、手が離せないんで自分で開けて下さい」

チャイムが鳴る

刑事 「一人で入ってきて下さいー!」

チャイムが鳴る

刑事 「もー、どんだけ買ってきたんですか?」

といいながら玄関へ向かう

刑事 「はーい」

といいながらドアを開ける。
ドアの向こうには見知らぬ男性(NHKの職員)が

刑事 「え?どちら様ですか?」

NHK職員とのやり取りが始まる

刑事 「あーうち、テレビ置いてないんで大丈夫です」
  
刑事 「ほんとですって」

刑事 「いまちょっと手が離せないので、後日改めて来て貰ってもいいですかね」

刑事 「いやいや、居留守とかつかいませんって」

刑事 「仕事中なのですいませんが」

刑事 「土曜の昼間から家で仕事してる人だっているでしょ!」

刑事 「バードウォッチング・・・?
  あーもう!さっきもいいましたけど、うちテレビ無いんで」

刑事 「上がって確認ですか?それはちょっと・・・」

刑事 「いや、怪しいものじゃないですよ」

刑事 「いやー警察は呼ばないほうがいいんじゃないですかね。
  ほんとにテレビ無いんで、とりあえず帰ってもらってもいいですか」

刑事 「え?携帯ですか?」

刑事 「iPhoneではないですけど」

刑事 「スマホでワンセグ?見れますね・・・」

刑事 「契約しないと駄目?
  いやー色々と事情がありましてですね」
  
刑事 「わかりました契約しますよ・・・
  キャッシュカードが必要?取ってきます」

窓辺に戻り、“星”の様子をみる。

刑事 「うわー明らかになんか作ってんじゃん。
  机にめっちゃ筒置いてあるじゃん、どうみても爆弾じゃん」

チャイムが鳴る

刑事 あーもう、今いいとこなんだけど!

チャイムが鳴る

刑事 「行きます、行きますよ!」

といい財布を手に取り、玄関へ向かう。
キャッシュカードを機械に通す

刑事 「はい、これでいいですか?
  サイン?ここ?」

といい、乱暴にサインを書く
その後、部屋に戻る

刑事 「結局契約するはめになったよ・・・
テレビ無いのに。ていうか、そもそもココ、俺の家じゃ無いのに…
  すぐ解約してやる。速攻で解約してやる!」

窓辺に立ち、“星”の様子を見る

刑事 「おいおいおい、嘘だろ。なにコナン見てんだよ。
  ふざけんなよ、俺まで音声届いてこないんだぞ。
  それはつまり、犯行の動機も方法もわからないのに、犯人だけがわかってしまうってことだぞ。
  俺の張り込み後の楽しみを奪うってことだぞ!!!!」

刑事 「コナンを見ている“星”を見張らなきゃいけない俺。
  一体どうしたら、犯人を知らずに張り込みを続けられるんだ・・・」

刑事 「お?リモコンを手に取り?チャンネルを・・・変えないんかい!音量上げただけかい!
  がつっりコナン見るつもりじゃん。
  ほら、爆弾作る手も止まってんじゃん。
  コナン見てないで爆弾作れよ!テレビ消して、作るほうに集中しろよー」

刑事 「俺がそれいっちゃ駄目だろ!
  あーでもどうしたらいいんだよ。このままだと犯人分かっちゃうよ。
  そうだ!山田さん?山田さんちょっと代わって貰えますかー!
  ・・・山田さん?山田さん代わってって!
  そうだ、買い物行ってるんだった。ふざけんなよこんな大事な時に」

双眼鏡を覗き込む

刑事 「コナン君麻酔銃構えてんじゃん。真実暴く気まんまんじゃん。
  どーすんだよ、このままじゃ犯人分かっちゃうよ。俺の張り込み後の楽しみが!
  どうする?どうするよ」

携帯を手に取り考え込む

刑事 「もう、この手を使うしかないか・・・」

といい、電話をかけはじめる。

刑事 「もしもし、田中さんですか?はい、四月一日です。
  “星”が怪しい動きをしているので、今すぐ逮捕したいと思います!
  至急、応援をお願いします!!」

といいながら刑事はける。
終わり

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