「女性管理職30%」って必要?
先日、何気なくnews zeroをつけていたら、ポスト安倍三人衆が生出演していて、有働アナとディスカッションをしていた。
今後の取り組みについて限られた時間で幅広く話していたわけだけど、少子化問題から女性の社会進出、そして女性管理職30%目標について話されていた。
(もっと多い国の比較もあったけど会員登録要 or 統計とった年がバラバラだった…)
男女平等の指標として女性管理職の割合をよく見るけど、わたしはこれはあくまで男女が平等になった結果の副産物であって、日本の現状から目指す目標としてはふさわしくない気がしている。
根底が同じだから同時に取り組むべき問題ではあるものの、女性の立場がまだまだ不安定な日本社会で「出生率」と「女性管理職の割合」を同時に上げていくのはまず無理。それこそ以前バッシングを受けた、「女性は子供を産む機械」発言以上の苦役を強いているように思える。(そしてこの発言が2007年という事に震えてる・・・当時わたしJK)
「女性管理職30%」達成の前に、「女性がもっと働きやすい環境」が必要だと思うし、それ以上に「女性も生活しやすい文化」が必要だと思う。
家庭での家事分担比率
「イクメン」という言葉が流行語になったのが2010年。受賞者のつるの剛士さんはこうコメントしている。
「自分の口からイクメンと発したことがない。男性が育児休暇を取ることが共感をいただいて、大変うれしく思う。育児休暇が普通になって、いい意味でイクメンという言葉が消えていければと思う」
10年経った今、「イクメン」という言葉はあまり耳にしなくはなったものの、死語になりきれてはいない気がする。男性の育休も、今年2月に小泉環境相が取得したことで物珍しがられメディアに取り上げられるレベル。つまり、10年経っても男性の育休取得は大して進んでいないということ。
それを踏まえたうえで、11年前、平成21年(2009年)内閣府による夫婦の家事・育児の分担割合に関するアンケート。
夫0割:妻10割 9.6%
夫1割:妻9割 31.6%
夫2割:妻8割 24.0%
夫3割:妻7割 17.4%
夫4割:妻6割 6.9%
夫5割:妻5割 5.3%
どうしても母乳を与えられるのが母親だけで、子どもが母親寄りになってしまうことを考慮しても、日本の約65%の夫たちは家事・育児に2割以下しか携わっていない。3割以下を含めると約83%。
ただ、もちろんこの中には好んで専業主婦をして、稼ぎは旦那さんに一任している家庭もあると思うから、その点も留意しておきたいし、「文化」として後でまた話したい。
前職では、多くの子育て真っ盛りの女性社員さんたちと働いた。けれどそんな女性社員たちの中で昇格を目指す人は居ても、管理職を望む人はほとんど居なかった。みんな口を揃えて「職場で責任を負いたくない」と言った。
ただでさえ家庭での責任、というか家事の担当範囲がまだまだ多い日本の女性。一従業員として働くのもやっとなのに、その文化の下でいきなり管理者に仕立てようとするなんて都合が良すぎる。
管理者の責務過多
「責任を負いたくない」と主婦社員さんたちに言った通り、日本の管理者の職務は荷がかなり重いように感じる。なんやかんやで大学を出てから現職で3社目だが、残業をあまりしない管理者にはまだ出会えていない。
特に現職の管理者は、わたしたち一般社員より2~4時間後に帰っているらしい。そして朝は誰よりも早く出社している。中には負担が集中しないように一般社員に分配できることもあるだろうに、管理者というだけで、扱える物事の「権限」の都合で仕事量がドッと増える。
一方で、ハワイでバスガイドの仕事をしていた時は、管理者も時間になるとオフィスから去り連絡すらつかなくなる。現場で緊急事態が起こったにも関わらず連絡が取れないこともあった。そんな時は他部署のまだ勤務中の、助けてくれそうな管理者に連絡をする。すると、大体なんとかなる。そして翌日電話かメールで上司に事後報告をして「大変だったのね。関連部署にレポートしておきます」と言われて終了。ちなみに当時の上司は日本人女性。
おかげで現場で苦労することも多々あったが、これくらい割り切って仕事ができるなら、日本の女性管理職も増えると思う。しかし、日本は顧客も内部もとにかく仕事に緻密さを求めるから、なかなかそれが実現できない。
ハワイでは日本人のお客様のガイドをしていたが、バスドライバーがトイレに寄り道したり、バスを停めて友達と話し始めたりしても、「ハワイではよくあることなんで許してくださ~い」と言えば怒る人は誰もいなかった。日本国内で日本人ドライバーが同じことをしたら、おそらくモザイクをかけられてワイドショーに出演することになるだろう。。
「男だから」「女だから」
いくら法律を改定したところで、いくら自分の家庭内の課題を解決したところで、最後の最後に残るのはやはり「文化」だと思う。
日本は古来から「女は男の一歩後ろを下がって歩く」文化だった。兄との二人きょうだいだったうちの母は、きょうだい喧嘩をすると「女が男に物言うて!」と、おばあさんに叱られたらしい。女性が男性より強くあるなどもってのほか、等しい存在であることも許されなかった。
そんなのは昭和の話だろうと思うかもしれない。けど、平成を通り越し令和になった今も、その格差は緩和されつつはあるものの、解消はされていないと思っている。
たとえば、YouTube、Instagram、TikTokなどのSNSが自粛ムードの追い風もあり最盛期を迎えている今、恋愛相談系のアカウントに多くのフォロワーがついている。
「男を振り向かせるLINE」「女子にドン引きされる行動〇選」「手放したくないオンナになる方法」etc.
わたしもこんな動画を見ていた時期もあったけれども、だんだんと「まだこんなことして異性の機嫌をとらないといけない時代なのか?」と疑問を抱くようになって見るのを辞めた。結局のところ、男を立てて、自分はか弱くいるような女性がモテるというような内容がほとんどだった。
「男は大昔狩りをしていたからその本能で・・・」と語られる場合もあるが、おそらく欧米からしたら「いつまでそんな大昔のこと引きずってんの?」と言われそうだ。ちなみに欧米でぶりっ子はウケないらしい。
そんな「女はか弱い方がいい」なんていう文化だから、女性が上に立とうとすると「女に務まるはずがない」「どうせ感情的になるんだろ」「産休なんかで穴開けられたら困る」なんて心無い陰口が飛び交ったりもする。
そして日本においてはすべての女性が男女平等になることを望んでなかったりする。バブルがはじけて30年経とうとする今でも、寿退社して専業主婦になりたいという女性は少なくない。
また、それ以上に「専業主夫」は肩身が狭い。家庭内では成立していたとしても、「男なのに奥さんに働かせてるんだ」「ヒモ男なんじゃない?」と言われ、もしキャリアとして数年のブランクを経て再就職しようとするものなら、「この間何をなさっていたのですか?」と企業につっこまれ、いい顔をされないケースがほとんどだろう。
真に女性の権利を解放するということは、男性にも多様な選択肢を認めることなのではないか。
「フェミニズム」じゃなくて「男女同権」を
前職の昇格試験の模試で、社内に「女性社員のみで行う管理職育成研修」があることを知った。わたしはその取り組みに疑問を持った。もちろん、望む人は参加すればいい。だけど、目指すところは「女性管理職を増やす」ところではなく、「性別問わず意欲のある人が管理職を目指せる環境をつくる」ことじゃないのか?
昨今の取り組みはどうしても「女性の社会参加」に集中しすぎていて、結局大した実を結んでいないような気がする。それを望んでいる人もいれば望んでいない人もいる。出産もキャリアもどっちも取りたい人もいれば、子どもは最初から望んでなくて、ただキャリアを積み上げたいという人もいる。一方で家事と育児に専念して、夫を支えていきたいという人もいる。
「出生率」と「女性管理職の割合」の数字にばかり着目されていないだろうか。男性と女性、そしてどちらとも言えない性をもつ人の価値観はちゃんと尊重されているだろうか。日本には素晴らしい文化がある。だけどその「文化」を改良していかないと、鎖国はいつまでも終わらない。
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