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会津の食べ物についての考察



前置きとあらすじ

先日喜多方でライブだったため、一泊二日で会津地方へ行きました。

昨年からツアーの様子をYouTubeにちょいちょいアップしているのですが、純粋な観光ではないので駆け足気味な上に、「せっかく来たのにここ行かないの!?」と突っ込み所も多々あるかと思います。

が、少しでも現地の雰囲気を一緒に楽しんでくれたらいいなぁとの思いでマイペースに更新しています。お時間ある時にぜひお付き合い下さい。

今回二回目の会津だったんですが、前回も思ったんですが私めちゃめちゃ会津好きです。食べ物と風土がすごく合います。

車で団体行動だった前回と違い今回は空き時間一人で行動できたので、気兼ねなく好きなものを食べて気兼ねなく好きなとこへふらふら歩いて行きました。みんなでわちゃわちゃするのも楽しいし決して嫌だと言っているわけではないです笑。気ままに行動するのはまた別枠の楽しさ。

なのでYouTubeで伝えきれなかった会津の食文化の考察を少しここに書き散らかします。書き散らかしていたら思いのほか長くなったので、久しぶりに見出しが必要なボリュームになりました。

ざっくり要約すると、歴史を知ると楽しい!という内容です。私は一般常識が疑わしいレベルの日本史の知識で生きてきたので、何か気付きや知識を得た際の驚きや喜びや感動の沸点が非常に低いです。

わっぱ飯

ライブ前に会津若松駅で2時間程インターバルがあったのでランチをしようと適当に検索しつつも、せっかくなのでそれっぽいものを食べたいと思い辿り着いたわっぱ飯屋さん。

輪箱飯・田季野さん

もうこの佇まいで優勝してない?今回の旅やり遂げた感ない?

軽はずみに店をチョイスして待ってる間にわっぱ飯とは何ぞや?と調べ始める。

すると、木の入れ物「わっぱ」を使った新潟と会津の名物で、新潟は1955年、会津は1970年にそれぞれ考案され、この田季野さんが会津発祥のお店だということがわかりました。ナイスチョイス!

で、新潟は出汁で炊いたお米に海産物の具を乗せるのに対して、会津は白いお米に山菜など山の幸が特徴だそう。

「熱いですよ」と言われて、想像以上にご飯が本当に熱かった!

何で新潟と会津の名物なんだろう?わっぱ自体は全国にあるよね?と調べたら、秋田の大曲の伝統工芸なんですね。へー!

以下壊滅的に地理歴史が弱い私なりの想像です。見当違いなとこもあるかもしれませんがアウトプットしてみます。遠慮なくご意見・ご指摘下さい。

入れ物としてのわっぱは北前船ルートの海コース・新潟→会津なのか、羽州街道で陸コース・福島→会津なのか、南下してきたんですかね。いずれにせよ間の山形県ではわっぱ飯は考案されなかったんでしょうか?と思い「山形 わっぱ」で検索してみると、食べログで3件見つかりました。

その流れで一緒に引っかかったのが、秋田のわっぱ飯屋さんで1977年創業のお店があったという情報。新潟と会津のわっぱ飯が先で、わっぱの発信地である秋田が逆輸入って感じなんですかね。地理や文化的に会津よりも新潟の情報の方が強く拡散されそうだな。もしくはそれっぽいものはあったけどその地の名物料理としてではなくひっそりと食べられていたのかもしれません。

さらに「わっぱ騒動」という庄内地方の歴史上の事件をGoogle先生が教えてくれました。

wikiのこの記事の信憑性を判断できる知識を持ち合わせていなくて申し訳ないですがご参考までに。教科書で見たことあるかもしれない!と思ったけど、冷静になって「米騒動」との区別がついていない可能性があると思いました。

田季野一件でもう散らかりまくっていますが、「入れ物としてのわっぱはちゃんと秋田から山形に伝わっていた!」という感動と、地理歴史に興味のなかった私が音楽活動と魚食を通してここまで興味を持って辿り着くことができた奇跡と、どんなジャンルも興味の入口は決して一方向からだけじゃないという可能性を少しでも感じてもらえたらと思います。

こづゆ

「こづゆ」という会津の郷土料理をご存じですか。わたしはととけん(日本さかな検定)のテキストを読むまで知りませんでした。ってゆうか内陸の魚料理って、海から獲れて食卓に上がるまでのストーリーが正直全然イメージできずに苦手分野でした。

こづゆは、貝柱の出汁にきくらげや里芋、豆麩や糸こんにゃくなどの具を入れた汁物です。貴重な海産物である貝柱の出汁を使うことで、冠婚葬祭の人が集まった時のおもてなし料理として伝わってきました。

以前福島物産展でレトルトのこづゆを購入して食べた感想は、「あ、好き」でした(語彙力)。というのも、昔ながらの保存食や郷土料理って味濃いめで甘めなのが多いじゃないですか。甘露煮とか。それが予想に反してあっさり塩味だったので驚いたのと、ホタテ貝柱味はDNAが好きって言ってる。それにきくらげが大好物なので(主観)。

今回なんとライブ終了後の打ち上げでこづゆを振る舞って頂きました!!!

リアルこづゆ

本物のこづゆ!みんなが集まった場で食べるこづゆ!エモすぎる…(´;ω;`)ウゥゥ

ここで現地の皆様より貴重な一次情報を頂きました。「お正月とか食べるけどその前にクリスマスに食べたの初めて(12/22開催のライブにて)」「子供の頃嫌いだった」「味薄くない?大丈夫?」等々。リアルな意見!

私忖度とか媚びるとかじゃなくて、本当に本当に心からこづゆが大好きです…皆様と一緒にこづゆを食べられて幸せです…。貝柱の出汁ときくらげが入っているからでしょうか、どこか中華風味も感じるんですよね。懐かしいけど今の時代でも受け入れられる味です。

ちなみにこづゆは新潟の「のっぺ」と似ているとか。これも興味深いので追々深堀してゆきたいです。

鰊山椒漬け

かつて北前船で北海道から新潟まで運ばれて、さらに川を通って会津に届いた身欠きにしんを、戻してタレに漬けた保存食。これがもう気になって気になって仕方ありません。

他の郷土料理や保存食にありがちな甘辛い甘露煮のようなものではなく、お酢が入っているのが特徴。酸味と葉山椒の風味がとてもおいしい。

10月に食べた鰊山椒漬け

この鰊山椒漬けについて10月からずっと考えていたのだけど、他にあまり似たような料理がないのが不思議。各地域の魚加工品が豊富な吉池(御徒町の水産物専門スーパー)にすら、身欠きにしんかお蕎麦に乗せるような甘露煮か、飯寿司か麴漬けのようなしか私の見る限り扱っていない。ごく地域的なものなのではないかと推測しています。

会津には鱈を干した棒鱈を戻して煮る料理もあるようだけれど、こちらは酢を使っていないみたい。

干してある鰊もしっかり脂を感じます。酢を入れるのは青魚の臭み消しの他、脂がさっぱりする効果があるからかな。内陸の保存食風味もありつつ、〆鯖や飯寿司、千葉の郷土料理「いわしのごま漬け」に似ている要素も感じます。「青魚×お酢」の組み合わせと考えればわかるけど、今まで出会ったことのない存在。うーん私が知ってる限り一番近いのはいわしのごま漬けだなぁ。

それにしても、この鰊山椒漬けもそうだし、私の大好きな鮭とばも、鱈や氷下魚を干したものも、魚を干してキシキシするような独特の繊維っぽい食感がめちゃくちゃ懐かしい。好きとか嫌いじゃなくて、「あ、この感覚知ってる」っていう感じ。

いか人参

これ松前漬けじゃんって思った食べ物。松前漬けとは、するめと昆布と数の子と人参を細切りにして醤油で漬けた、ネバネバしていてごはんにかけるとめっちゃおいしい北海道の郷土料理。地味だけどおいしい。

人参多めなのが内陸アレンジ。

ところで地域が違っても似ている料理や文化って、たとえばある地域で「今こうゆうの食べ物がバズってるよー」っていうのが伝言ゲーム的に他の地域に伝わって、「あ、じゃあうちでは代わりの材料で似たようなのやってみよう」っ広まったと今まで考えていました。このいか人参も。

あまりに自分のDNAが会津と波長が合うから、ここまでの文章を書きながら並行して北海道との関係を調べていたら(昨夜)。

標津町ホームページより

安政二年(1855)、江戸幕府は従来松前藩の管轄下にあった蝦夷地を直轄地とし、東北諸藩に沿岸警備を命じます。しかし蝦夷地警備は多大な財政負担を強いることから、警備地を各藩の領地とし、開拓権を与える方向へと転換していきました。こうして安政六年(1859)11月、広大な蝦夷地を分割し、仙台藩、秋田藩、津軽藩、南部藩、庄内藩、そして会津藩に領地として分け与え、各藩分割統治による開拓と警備が始まりました。

標津町ホームページ

私の地元って会津藩の領区だったん!?!?!?

恥ずかしながら本っ当に歴史に今まで興味がなくて、自分の郷土史もわかってなかったから衝撃。いや、風土が合うの納得。かつて私の地元の町を整備した人の祖先が会津にいる可能性があるってことだよね???すげええええええ。そして歴史っておもしろ!!!

頭の中が大渋滞を起こしたので、一晩置いて少し冷静になって今また書いています。

いか人参について一晩考えていたのですが、そうすると伝来について上記と別の仮説も浮かびました。伝言ゲームパターンではなく、当時北海道を行き来した会津人が直接持ち込んだ(モノか情報かはさておき)可能性もあるんじゃないかと。

松前漬けの材料であるするめと昆布と数の子は、高価とはいえ他の地域にも流通はあったはずだし人参も入手しやすかったんじゃないかと思います。なので、配合はともかくどこの地域でもある程度の再現性はあるのではないかと思います。が、目立ってそのようなものを食べる地域は私の知る限り見かけないというのも、この仮説に行きついた理由の一つです。

もしかしたら他の町でも似たようなものが食されていたけれど、海沿いの町なんかはもっと目立つ名産品があったからあまり注目されなかったという可能性も考えられるし、単純に私の知見が狭くて実はみんな食べているかもしれない。答え合わせをしたいので各地のいか人参情報求む。

まとめ

思いがけない方面から自分の郷土史に興味を持つきっかけになりました。とりあえずわーーーっと勢いに任せて、備忘録もかねてアウトプットしてみました。何か意見交換や交流につながるきっかけになったらいいなぁ。このページ上やSNSでなくとも、頭の中にある考えを地元の方や郷土史に詳しい方と話したりしてみたいです。

食べ物、特に水産物って文化の違いをわかりやすく感じられるのがいいところ。

桜の頃にまた会津に行けたらいいな~と思っています。


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