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スペインの女性像を見る。映画「ボルベール(帰郷)」を見て

冒頭5分で思ったこと。

「男がいない、、!」

映画冒頭のシーンが何人もの女性たちが墓掃除をするシーン。とっても印象的だった。

(ちなみにこのお墓掃除は、監督ペドロ・アルモドバル監督の故郷でドンキホーテの舞台の"ラ・マンチャ"の伝統的行事だそう。)

登場人物は、姉妹ライムンダ(ペネロペ・クルス)とソレ(ロラ・ドゥエニャス)、そしてライムンダの娘のパウラ(ヨアナ・コボ)。

かなり序盤でライムンダの夫はパウラを犯そうとして、パウラに刺殺され速攻死亡。

この時、「あ、女性のための映画か。」と確信した。


女が男を殺すというのは、かなりインパクトがある。今は見慣れてしまったけど、「テルマ&ルイーズ」「シカゴ」など。女性をフィーチャーするよーー!っていう象徴だから、私はこれを見ると、お!きたきた!と胸が高鳴る。(軽度のフェミニストなので、、)

まず、“帰郷(ボルヴェール)”がタイトルなので、ここをしっかり考えてみた。本作の中での"故郷"の印象は、、、

「コミュニティ」、「秘密」、「信頼関係」、あとは「貧困」

だと思った。

そもそも小さな街なので、コミュニティは狭い。ただ、その分、厚い信頼関係がある。印象的だったのは、ライムンダが「明日お金は払うから、何も聞かずに、今あんたが持ってる食材買わせて欲しい。」と頼み込むシーン。近隣の女性たちは皆その日暮らしで、明日の生計も見えていない様子。だけど彼女たちは何の疑いもなく、快くライムンダの要望に応える。(しまいには、ライムンダの夫の死体遺棄にも質問一つせず加担してしまっている始末。)

そんな生活の中、登場する女性たちは必ず、誰かに会うと、愛情たっぷりな様子で執拗に挨拶のキスをする。生きている限り、コミュニティ内の皆で助け合い、支えていくという、長年刷り込まれ続けてきた彼女たちの女としての生き様をみた気がする。この女性像のおかげで、アグスティナは自分の母親に関する故郷の情報をテレビで漏らさなかったし、近所の人たちは仲良しだけど誰も私生活についてがっつり首を突っ込まない。多分、ライムンダのお母さんのことも街の人は皆んな知っていたんじゃないかな?秘密をみんなで所持し、守っていたのかな、と思う。狭いコミュニティの中には、生きていくために、秘密は絶対守るんだという信頼関係があるということかな。

一方で、”故郷”には、過去=故郷の意味もあるのかなと思う。目をつぶっていたかつての過去=故郷に向き合う話ってことなのかなぁと。。。

ぐろぐろドロドロのライムンダの過去も終盤明かされるし。


ただ、やっぱり男の監督が描く女像には、かなりの理想像があるし、ある程度無理があると思う。

彼の生まれ故郷を舞台にしているからと、ペネロペは役作りにお尻に綿入れたそう。気丈で常に忙しそうだけど、人を信じるお人好しさ、人情深く、なんでもYESと答える優しい女性像、それでいて女としてセクシーで楽しむことを忘れない、、皆んながそんなことはないよ、ペドロさん。。

終始ペネロペめちゃくちゃセクシーなんよな〜美しすぎる!まぁ、それは見てて楽しいし、監督も故郷の女の美しさを見せたかったんだろうなと!私的にも見惚れてしまったので全く問題ないねんけどね!

ライムンダの母は、自分の中の”女”を優先したから、事件を起こしてしまった。だから死んだふりをして叔母の面倒を見ることでその罪を償っていた。ライムンダに赦されてからは母親として生きる。それが「話を聞くと泣いてしまう、幽霊は泣かないでしょ?」って発言から読み取れるかな。でもこれはこんな簡単な発言ではなさそう。

ていうかそもそも夫がひどいやつやからって、娘を置いて、死んだふりするって、、、あるかぁ??まぁ理由も理由やけどさぁ、、

日本じゃその価値観ないと思うんよね。それは多分スペインのこの監督の価値観では、女は何歳になっても女!なのかなと思う。母でもなく労働者でもなく。結局女は女。

冒頭と最後のシーンで印象的だった風車について。昔ながらのラマンチャの有名な風車ではなく、今回映し出されていたのは無機質な風力発電用の風車。形は現代になって、変わっていても、風を利用して何か(電力を生み出す風車。もしも風車を女に例えているのだとすると、いろんな風=逆境・出来事を上手く利用して何かを生み出している。今回の話の中では、ライムンダはえぐい出来事(夫の死)を受けてそれを追い風に生活や暮らしを豊かにしようと動き、もがき、頑張っている。山火事の描写は、逆境も度がすぎると火事になるくらい手に負えんぞ、女は。ってこと?かな??適当すぎか?笑

うーーーん。やっぱりカンヌ系統の話は難しい。もちろんカンヌ絡みはわかりやすいのもあるけど。

私の小娘脳では感じ取れていないことが多すぎる。

あ〜〜all about my motherを見ていない!それが非常に悔やまれる、、、

あと、途中のペネロペの歌唱、絶対歌ってないよな笑。

まーとにかくペネロペ様の魅力たっぷりの映画!髪型可愛い、、あと、スタイルがほんとに良すぎる、、ただ全部理解するにはアルモドバル監督の作品もっと見なきゃなと、、

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作品:ボルベール(帰郷)について簡単な説明↓

第59回カンヌ国際映画祭で脚本賞と、6人の女優が揃って女優賞を獲得。またアカデミー主演女優賞にペネロペ・クルスがノミネートされた作品。主演のペネロペ・クルスとアルモドバル監督は1998年の「オール・アバウト・マイ・マザー」以来の顔合わせとなる。


タイトル、劇中歌でもあるタンゴの"Volver"について↓

1935年、カルロス・ガルデル(Carlos Gardel)作曲、アルフレド・レペラ(Alfredo Le Pera)作詞。 タンゴ界のスターであったガルデルが自身の主演する映画『想いの届く日』の劇中歌として作曲。この映画のプロモーションを兼ねた演奏旅行中にガルデルは飛行機事故で衝撃的な死を遂げ、自らの帰郷はかないませんでした。タンゴ カルロス・ガルデル『帰郷・・・人生は風のひと時、20年なんて無にひとしい』。。




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