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性別公開☆単数形のtheyとジェンダー教育におすすめの絵本について。

こんにちは。ニッポンxオーストラリアの日豪国際結婚、通訳翻訳(ツーホン)を生業とする我々夫婦が、二人の幼児をなんとか日英バイリンガルに育てようと苦労する様子をお届けする「日豪ツーホン夫婦、バイリンガル育児に取り組む」。わたくし日本人妻・英語通訳翻訳者のカイザー真紀子がお届けします。仕事用ウェブサイトはこちら→ https://www.officemakiko.com/

色々考えるに、子の性別の明らかにせずにバイリンガル育児ネタを書くのは無理があると思うようになりました。日本語ではぼかせても英語ではぼかせないと思うのは、人称代名詞(he、sheなど)という問題があるからです。

性別がわからないまま未知の固有名詞が出てくると、通訳現場の通訳者は非常に困ります。例えば企業の会議で通訳しているとして、誰かが「田中さんからの報告によると、この件はAでBでCなので、田中さんはDの対応が望ましいと言っています」と発言したとします。

一回目の「田中さん」はそのまま、Tanaka-sanと訳出します。「〜さん」は、日本語では名前のあとにつけるものである、という認識が比較的進んでいるので、企業の会議だったら(しかも日本法人だったら)、ここはそのままTanaka-sanと言ってしまって構わないと思います。大リーグの中継でも、大谷翔平さんのことをOhtani-sanって言ってますよね。

問題は二回目の「田中さん」です。英語的には、ここは人称代名詞で受けたい。日本語とちがって、同じ語、同じ表現を繰り返すのは英語的ではないからです(そのために定冠詞やらなんやらがあります)。ここを通訳しなくてはならない、しかも同時通訳であって聞き返すことは出来ない、という場合のアプローチは、私は二通りかんがえられると思っています。

対策1・英語的にはイモいですが、性別を間違いたくないので、そのままTanaka-sanを繰り返す。

対策2・単数のthey を使う。←ここポイントです。

単数のtheyに私が初めて触れたのは20年前、英国のEdinburghという都市に交換留学生として赴いてすぐのことでした。大学の正規のコースが始まる前に語学学校に2ヶ月位通ったのですが、その英語の授業で習いました。なので、最近あらわれた用法ではありません。上の性別不詳の「田中さん」のように性別が不明の場合も使えるし、あるいは無性別を自認している人が、he でもsheでもなくtheyで呼んでくれと希望する場合もあるようです。

性別がわからない固有名詞を受けるのにtheyを使いたいなと思う理由は、この会社で活躍している田中さんが、女性である可能性があると思うからです。年配の通訳さんと組むと、ためらわずにheとされる方が非常に多いという印象をもっていますが、考えてみてください。企業で活躍する人がみな男という世の中であってほしいでしょうか? 

性別によって役割が固定するのは個人の能力の可能性を尊重しないということで、非常にバカバカしいと私は思っています。ホワイトカラーならなおさらです。ただし英語のネイティブではない人が通訳を聞いている場合、単数のtheyを知らなくて混乱する人もいるので、そういう場合は従来どおりhe or sheという表現に切り替えています。うちの夫によると古い英語に聞こえるそうですし、無性別等の人である可能性が排除されてしまいますが、男性だと限定するよりはマシです。

有名な英語の小咄に、こういうのがあります。

『子供が事故にあった。父親がその子を病院につれていった。手術が必要である。外科医が出てきた。外科医は言う。「この子は私の子供なので、私は担当できません」』

「?」となった方。この話を初めて聞いたときの私のように、外科医というものは男だと思いこんでいませんか。この話のオチは「この外科医は実は女性である」というものです。ママが外科医だったから、私は我が子に執刀できない、他の医者にやってもらおう、ということなんです。

前置きが長くなりましたが、うちの子はふたりとも女の子です。theyでよんでくれとは言われていませんので、英語で人称代名詞が必要な場合は、ふたりとも she で受けたいと思います。

ついでに愛称も設定しましょうか。年中組の上の子は甘ったれで「甘えタレ子」と愛称をつけたので「タレ子」。ゼロ歳の下の子は葉が生えてきておっぱいをガブリガブリと噛むので「ガブリエル」と愛称がついたので「ガブ子」としておきたいと思います。

詳しく言うと、上の子もおっぱいガブリ!をしていたころガブリエルと呼んでいたことがあり、厳密には下の子はガブリエル二世ですが、まあいいでしょう。タレ子とガブ子で行きたいと思います。

さて今週、左側の絵本が届きました。

”Girls Can Do Anything” 

https://www.amazon.co.jp/Girls-Can-Anything-Caryl-Hart/dp/1438050623

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右側の日本語版「女の子はなんでもできる!」は今年の春くらいに日経新聞で紹介していて、即ポチしたものです。

夫婦ともにフェミニストの我が家では、「女の子だからどうこう」という教えは一切していないのに、タレ子(年中)が保育園で色々とバイアスのかかった思想を吸収してくるのに危機感を抱いて、読み聞かせています。私がやめてほしいと思っているのは「女の子は可愛い、男の子はカッコいい」「ピンクは女の子の色、青は男の子の色」などです。(保育園が悪いと言っているのではありません。世の中の固定観念を、子供はすごい速度で吸収してしまうということを言っています)

日本語版を読み聞かせるうちに、これを英語でも読んでみたいと長女タレ子が言ったので、英語版も購入する運びとなりました。本は大抵Amazonで買っていますが、千円もしないような本でも、待っていたら海外から届くんだからすごく便利ですよね!Prime会員になっているからか、送料もかからなかったです。さすが元祖オンライン書店です。(ベゾス関連の記事、何回か翻訳させてもらったことあるな…)

絵本を読み聞かせる効果は、なかなか侮れないものがあると思います。ジェンダー教育を親が自前でゼロからできるか?といったら、なかなか難しいと思うのですが(すくなくとも私には)、こういう絵本があるなら活用すると良いと思いました。「女の子はなんでもできる!」という力強いフレーズはすでにタレ子の頭の中に浸透しています。

荷物が届くとソワソワしてしまうタレ子、早速あけて、届いたばかりの英語版をソファーに座って真剣に見つめていました。その夜は父親に読み聞かせてもらって、大変満足していたそうです。


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