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彼こそ、日本を代表するオーセンティック・リーダーだ(元ソニー会長:平井一夫氏)

私はSONYが好きではありません。
それは関西出身なので、パナソニック(旧松下電器産業)により親しみを感じていることや、育った場所の近くにシャープ本社があったからかもしれません。
それよりも、何かすました感じや、この数年で業態を広げているため、この会社のアイデンティティが見えづらくなっていることもその理由なのかもわかりません。

そんななか、2021年7月に元CEOの平井一夫さんが書かれた『ソニー再生』が出版され、それを読んで思うところがあったので、記事にしてみます。

SONYとは、どんな会社なのか

SONYと聞いて、思い浮かぶのはなんでしょうか?
創業者の井深大さんや盛田昭夫さん、ウォークマン、プレイステーションなどなど、どの世代でみてもSONYを知らない人はいないでしょう。

視点を少しずらすなら、私のSONYに対するイメージは、『ソニー再生』のサブタイトルにも書かれている「異端」につきます。
SONYがアメリカ市場に進出したときの、盛田さんの逸話には事欠かないので触れませんが、1980年代に声楽家だった大賀典雄さんが社長になった時には、驚きました。
いくらSONYが音楽ビジネスを手掛けていたとはいえ、当時はエレキが主流だった同社で、大賀さんを社長に任命するとは!

振り返ってみると、SONYという会社の凄さは、「異端」を受け入れる度量の広さと、その強みの活かし方をDNAとして持っていることにあります。

『ソニー再生』を読んで思うこと

この本の主旋律は、「変革」「異端のリーダーシップ」です。
有名な事例で言うと、リーマンショックで瀕死の状態だった日立製作所をグループ会社に追いやられていた川村隆さんが日立本体に呼び戻されて、V字回復を果たしたことが挙げられます。
アメリカ企業でみても、電気自動車のテスラ創業者であるイーロン・マスクさんや、eコマースをここまで発展させ、流通業界に大変革をもたらしたジェフ・ベゾスさんも、「辺境の地」から現れた変革者です。

『ソニー再生』では、平井さんの生い立ちから、ソニー・グループのなかでどうやってトップに上り詰めたのかが赤裸々に描かれています。その原点は、幼少の頃に親の仕事の関係でニューヨークで暮らすことになり、異端者として見られ(当時のアメリカの人種差別の実態についても詳しく書かれています)、日本に戻って高校では、中途半端な日本人扱いをされたという経験にあります。
だからこそ、彼が大切にしているのは、異端者に対する共感や思いやり、信頼関係を築くことであり、そのためのEQの高さです。

それを象徴する文章を抜粋します。

「重要なのは異見で、それは待っていれば舞い込んでくるものではない」

平井一夫さんのリーダーシップスタイル

ここまでは異端についてみてきました。
ですが、本書では異端のリーダーシップと同じくらい、リーダーとして大切なことが書かれています。それは、自分らしさで人や組織を導く「オーセンティック・リーダーシップ」の重要性です。

先に書いた「異見を取りに行く」もそうですが、「リーダーは逃げてはならない」「できないことはできないと正直に言う」「知ったかぶりをしない」という胆力と謙虚さこそが平井さんの真骨頂なんだなと感じました。

〔エピローグ 卒業〕に書かれていることも、この人らしい誠実さにあふれています。

「私は生きるために働いてきたが、会社のために働いてきたわけではない。
  あくまで私の人生と家族のためだ」

こんなリーダーの下で、いや共に働ける人は幸せです。

前言を撤回します。
私はSONYが大好きです。

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