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嫌われた監督を読んでーおすすめしたい本だ

 落合博満さんの、中日ドラゴンズの監督時代について書いた「嫌われた監督」を読んだ。476ページというボリュームに本を手に取った瞬間驚いたが、おもしろい内容で読破するのに苦労はしなかった。この本はプロ野球ファンには勿論、そうでない人にもおすすめしたい。

 本書は、記者の視点と12人の落合さんと関わった人物によるエピソードで構成されている。プロ野球ファンとして耳にした情報もあったものの、13人の視点から見た落合像を一気に知る事によって、それまで見ていた自分の中の落合監督像が大きく変化した。点と点が線となったのだ。

 この本をまだ読んだ事がない人の落合さんの印象はどんなものだろう?俺流?孤独?タイトルと同じく嫌われ者?何を考えているかわからない人?別の世界の人?そのどれも違ってはいないが、この本を読むと、それが実は落合さんを語る上でごく一部の表面を見ただけのものだとわかる。詳しくは実際にこの本を読んでほしいので書かないが、血が通った人間「落合博満」を是非知ってほしい。思えば、落合さんを思い浮かべた時、僕は以前からすぐに「何故?」という言葉もすぐに出てきていた。

 何故、川崎憲次郎選手を開幕投手に指名したのか?

 何故、山井投手を降板させたのか?

 何故、荒井選手と井端選手の守備位置を交換したのか?

 何故、在任中多くを語らなかったのか?

 何故、孤独でいたのか?

 何故、嫌われたのか?

 その数々の疑問の答えが476ページの中に記されている。野球の天才であるがゆえに凡人と違った視点で見ていた景色の一端もわかる。本を閉じた後、凡人の自分にも少しはその気持ちが理解出来た気がした。だから彼は開幕投手を川崎選手にしたのか、だから彼は山井投手を降板させたのか、だから彼は本来の饒舌さを消し、多くをあえて語らなかったのか、そしてだから彼は孤独になり、嫌われた。全ての理由は決して冷徹さからきてはいなかった。どれも人間だからこその決断であった。そのどれにもきちんとした理由があったのだ。人間だからこそ、彼の決断は彼を孤独にさせた。表面から見ただけの印象ではなく、本書を読んで多くの人に人間「落合博満」を知ってほしいと思う。おすすめの本です。


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