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CEO以外に焦りがないスタートアップが少なくない件について

人材界隈やRPOなどで情報交換をしていると話題になるのがスタートアップ不況です。2022年後半からの不景気に伴い、資金調達が鈍化しました。下記の記事でも次のような傾向に触れています。

  • 資金調達社数は増加

  • 資金調達金額の大型化はストップ

結果として最初に赤字を大きく掘ってその後に爆発的な売上を狙うJ字型の成長を狙うスタートアップは非常に少なくなりました。現在元気の良いレイター期のスタートアップは爆発的に人を増やさず、地道に売上を伸ばしてきた企業となっています。

【最新版】2023年上半期スタートアップ調達トレンド

調達金額の状況と、エンジニアも含めたメンバーの集め方などによってスタートアップにもいくらかの階層が別れています。

  1. 従来どおりJ字型を狙うスタートアップ

  2. 大手企業に寄るジョイント・ベンチャー

  3. クライアントワークを手掛けており、資金調達はしていない・もしくは少額のスタートアップ

  4. 資金調達はしているが、サークルみたいなCEO以外に焦りがない期スタートアップ

  5. 4に加えてCEOも夜の街で有名なスタートアップ

この中で特に気になっているのが4「資金調達はしているが、サークルみたいなCEO以外に焦りがない期スタートアップ」の増加です。特にシード期スタートアップにて確認されています。今回は4の組織の特徴と、今後どうするのかという懸念、及び周辺の企業はどう接することになるのかといったことについてお話していきます。

先に念のためお伝えをしておくと、納期に遅れのない範囲での受託開発や、確保工数で請求されるSESについてはサークルで何ら問題ないと思います。何なら世間的にはスタートアップではなくSMBに分類されている傾向があります。これらのビジネスではむしろ和気あいあいとした雰囲気がないと採用も厳しいです。また、スタートアップであっても特に資金調達していないところも好きにすれば良いと思いますので今回のお話からは対象外としています。

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サークルみたいなスタートアップが生まれた背景

なぜ資金調達をしつつもサークルのようなスタートアップが登場しているのでしょうか。その共通項が見えてきたので整理します。

採用経路はリファラルか、直接応募で選考緩い

これらのタイプの企業ではリファラル採用、もしくはコーポレートサイト、Wantedlyなどでの直接応募が主流です。たまに人材紹介が見られます。

特にエンジニアに関して知人や、友人の友人を1人目のエンジニアとして据えつつ、CTOに任命するケースが多く見られます。ただしCo-FounderとしてCEOと共に借金を背負っているケースであればこの問題は起きにくいように見えます。

リファラルでは友人の友人や、知人を引っ張ってくるため選考がないケースが多いです。CEOが非エンジニアだと、エンジニアの優劣や選考基準が分からず、エンジニアとして就業しているだけで内定が出たりします。

直接応募の場合、事業やビジョンへの共感がされたと思いやすく、嬉しくなって盲目的に勢いで採用しがちです。場合によってはその共感が「気の所為だった」ということもあります。

人材紹介やスカウトの場合、前職の会社名や企業規模といったハロー効果で決まったりします。

スキル選考などが難しい場合、副業から入ってもらってスキルマッチやカルチャーマッチを図ることを強くお勧めしています。

採用についての訴求ポイントで「ワークライフバランス」を入れてしまう

シード期スタートアップにも関わらずワークライフバランスが確保された働き方が認められている組織をよく見掛けます。採用が困難であるが故に、フルリモート、フルフレックス、副業、少ない残業といったものが打ち出されているケースはそれなりに存在しており、(CEOは大きな借金を背負ってるけどな…)と思うとなかなか居た堪れないものがあります。

シリーズC以降のスタートアップでも景気は良くない中、シード期スタートアップで大盤振る舞いして大丈夫なのだろうか?と懸念しています。

シード期スタートアップにジョブ型雇用を導入してしまう

人材の流動化に伴う中途採用の一般化に伴い、日本企業でも企業が採用をする際に職務内容を明確に定義して雇用契約を結び、職務や役割で評価をするジョブ型雇用を採用するケースが徐々に登場しています。

一方、ジョブ型雇用をシード期スタートアップに来てしまうのは違うと考えています。まだ組織が形作られていないため、職務内容を定義しきれない「隙間に落ちる業務」が多数あります。担当者も予算も足りないので例えばサーバサイドエンジニアであってもフロントエンドやスマホアプリ、インフラを兼務したり、情シスを兼務することが自然であると考えています。

しかしここを区切って「私の仕事ではないので」と定時で上がってしまう人が増えています。浮いた職務を任せられる追加人員を雇うにも限界があるので、プロダクトリリース遅延に繋がっていきます。その結果、資金ショートに向かっていきます。

一時的な外注やEXITマネジメントを伴う抜本的な組織の再構築が必要なケースは多いですが、サークルのような組織特性を考えるとそこまでの思い切った決断は廃業するまではしないだろうなと捉えています。

スタートアップ周辺企業も岐路へ

ここ半年、特に「本格的にJ字カーブを狙ったスタートアップ」にお金が流通しなくなり、彼らを対象にしたビジネスを行っていた企業が苦戦しています。これらのスタートアップが主要顧客だったり、営業注力していたSaaS、人材系、RPO・・・弊社も例外ではなく多かれ少なかれ影響を受けています。

新規営業先としてシード期スタートアップにもお話をしていくわけですが、これが驚くほど何も起きません。CEOとお話ができれば話が進むことはあります。しかしそれ以外の方は課題は抱えているものの、何も起きないことが多いです。CxOなどでも決裁権がないので即断即決は見たことがありませんし、「勉強になりました!」とお礼を言われて終わることが殆です。その後何かしらの態度変容があればまだ良いのですが、特に何もアクションは起こしていないようです。どこかで見たパターンだなと思い返してみると地方企業へのDX営業でした。

いくつか共通した事象としては「総務部 情報収集課」という方が商談に立つというものです。セミナーに参加し、話を聞き、「勉強になりました」と切り上げてレポーティングするというのが主要業務なようです。
こちらも商談の過程で課題がありそうなところを提案するのですが、どうも芯を食った感じがしませんでした。

シード期スタートアップを相手に営業をかけていくのは、かなり悪手なのではないかとすら思い始めている今日この頃です。

スタートアップ界隈はもう一弾不況になるのでは

不景気に伴う資金調達の鈍化はレイター期から始まると言われています。一方のシード期スタートアップは一般的に芽が出るのが5年後なので、ここのところの不況であっても比較的投資がなされてきました。

昨年までの「起業して一攫千金」感が薄れたというものもあるのですが、実際の働き方やプロダクトの出方などを見ていくと、「この組織はEXITできるんだろうか?」という疑問が残ります。プロダクトを持っているにも関わらず、急にクライアントワークや教育ビジネスを新規事業で始めるところも出てきています。

これまでも資金ショートの後に雲隠れする経営者も一定居られたのですが、どうしていくのか気になっています。最近やたらとXに流れるカジュアルな債務整理をしてしまうのでしょうか。このまま実らない企業が増えてしまうとスタートアップ投資がもう一弾鈍化するシナリオもあるのではないかと懸念しています。

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