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増加するフリーランス志向と日本を席巻する圧倒的中間管理職不足

経験者採用がしたい。5年前であればちょっとしたベンチャーでも市場感相応の相応の紹介フィーとビジョンと若干のSO(ストックオプション)があればなんとかなったのですが、ここ1-2年は様相が違っています。とにかく人が居ない。何故人が居ないかというと下記のような背景があります。

今回はこうした人材不足に巧みにリンクする中間管理職不足と、特に影響を及ぼすフリーランス志向についてお話します。

伝統的な新卒一括採用・終身雇用型キャリアパス

素養のある人材を新卒一括採用し、0からを想定して長期の研修で戦力化する。そして素養のある人材をリーダーやマネージャーに登用していくという伝統的なスタイルです。

できる人材を階段をすっ飛ばして登用するような過激な人事は起こしにくい一方、じっくりと中間管理職を育成できるのもまた新卒一括採用・終身雇用型のキャリアパスではないかと考えています。

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管理職と専門職を分けたキャリアパス

営業職中心の企業の場合、先の新卒一括採用・終身雇用型キャリアパスをベースにした評価・給与制度を採用する企業が多いように思います。

しかしそれでは技術力が高い人材が新卒や中途で現れた際、0からスタートするのも提示給与的にアトラクトできないですし、中途にしても面接や実技だけで急に上位から初めて良いかと言うと悩ましいという問題があります。

こうした評価と階段のギャップを解消するために専門職のキャリアパスを導入している企業が多く見られます。

人を管理するというよりは技術を牽引するリーダーと据え置くこともあります。技術力が高いのは素晴らしいことですが、その技術を社内に広めて組織を強化したいという願いを持つ企業も多く、ちょっとしたリーダーシップを期待しているケースがほとんどです。

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新卒比率が高かったり、未経験人材が多かったりする企業ではリーダーあたりから管理職コースか専門職コースかで分岐していくケースが一般的なようです。

一方で上位数%の学生時代にベンチャーで社員と机を並べて働いていたような中途と見紛うような即戦力新卒人材の場合、この専門職キャリアパスでいう一人前ライン以上からスタートしているように見えます。

伝統的な業務委託・フリーランス

ITに限らず伝統的な製造業でも以前から採用しているのが「自社の評価・給与制度だと全く対応できないがどうしても参画して欲しい高度な人材」を組み入れるための業務委託です。本noteでも何度か登場しています。

昨今話題になっているAI新卒1000万円人材も広く見ればこの特例に近い正社員なのではと考えています。

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フリーランスになることがゴールの世界

従来の業務委託は前述したような高度人材を対象としていたのですが、フリーランスという働き方が一般化すると共に2012年のソーシャルバブル以後からメンバークラスが増えてきます。

2021年現在の都内フリーランス市場で行くと80万円/月くらいで実装が任せられる人材、100万円/月で設計もできる人、凄いできる人は120万円/月くらいというのが相場観です。

そしてここ2年程度のトレンドとしてはフリーランスになることがゴールとなった結果、経験の浅いフリーランスが市場を席巻するようになります。元をたどっていくと一部オンラインプログラミング教室の広告や、YouTubeやオンラインサロンを起源としたインフルエンサーが出てきます。

上記コンテンツでもお話しましたが未経験でもフリーランスになれるというのが売り文句にあったり、それをゴールにした有料オンラインサロンやセミナーも人気を博していることから、一定数それを実行する方がおられます。こうしたムーブメントを包括していくと下図のような微経験・未経験のフリーランスが出来上がります。

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こうした微経験・未経験フリーランスは単価としては40-50万円/月あたりで見られます。クラウドワーキングであれば通常の受託会社であれば1000万円でもお見送りするサイズのWEBシステム開発であっても10-50万円とかで募集されていたりもします。

月単価60万円のフリーランスエンジニアが「ITエンジニアとしてフリーランスになる」ための情報商材を売っているのを見かけました。年収が720万円に見えるようですが、税金・年金、諸経費の類を差し引いて受け止める必要があります。

手取りの高さは下記のものを考慮するべきです。むしろまだ列挙漏れがある気さえします。正社員のときと同じ生活水準を目指すなら2倍は稼ぐべきという声はフリーランス経験者からはよく聞きます。

このケースの場合、生活費が足らないから情報商材を売っているという見方もできますが、一旦ウシジマくんのフリーエージェントくん編あたり読めば良いと思います。

実際のフリーランス市場を見てみると「特に欲しがらなければ生きていける」という悟りのような世界で生きている方は多いです。あるいは足りなければ巷に溢れるギグワーク(配達員とか)である程度は満たすことができる。行動評価などに意味が見いだせないと楽な世界に移るのかも知れません。ある意味優しいようにすら見える世界です。

本来であれば成長して正社員としてステップアップして行ったかも知れない人材がフリーランス市場にダダ漏れしている状況と言えます。そこで感じるのはインターネットという自己に都合の良い情報を取捨選択できるプル型メディアの限界であり、「何をどうしたらそうなる?」という意思決定に対する情報発信の無力さです。渦巻く甘言を前に現実を伝える重い発信というのは本当に響かないものですよね。ヒトは分かりやすく、かつ短期的に儲かりそうな雰囲気の情報を好むのです。

既に到来しつつある圧倒的中間管理職不足

フリーランスの人気というのは現在ではスペシャリストが人気という意味合いではなく、スペシャリストな気持ちになったメンバー層(上図内の「一人前」)が人気というのが実態です。

何をどうやっても避けられない少子化の問題だけでなく、本来であれば企業内で育成され、視座が上がり、中間管理職になったかも知れない人たちもまた、1メンバーのフリーランスとしてリーダーシップやマネージメントに関わる機会もないまま増え続けています。

今多くの中小企業で見舞われつつある問題がこの中間管理職不足です。フリーランス(メンバー)を入れるにしても指示を出せる中間管理職が居ない。

この先にある日本のIT業界の未来としては、下記の3タイプの企業に分類されてしまうのではないかと考えています。

・中間管理職を育成できる大手企業
・M&Aにより統廃合し、中間管理職を確保できた中小企業
・中間管理職が不要なスタートアップ

このあたりのお話もまた別の回でできればと思います。

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