見出し画像

キャリア選択における3要素「都落ち感」「我慢への対価」「ネズミの嫁入り」

新卒を巡って「大手かベンチャーか」の議論が起きやすい時期になりました。大手とベンチャーの内定が両方出ていて、どちらか悩むようなふわっとした状態であれば大手で良いんじゃないかと思いますし、ハロー効果が手に入れられるチャンスがあるなら手にしたほうが良かろうと思います。

有料設定していますが、最後まで無料でお読みいただけます。もしよければ投げ銭感覚で応援をお願い致します。


キャリアの3要素

例えファーストキャリアが大手であっても、入社後数年経つと気持ちが変わる人が増えてきます。オンラインサロンyoorや、Meetyなどで経験者層の皆さんとのキャリア相談をお受けすることが増えているのですが、キャリア選択において重要なものとして「都落ち感」「我慢への対価」「ネズミの嫁入り感」があるのではないかとお伝えしています。特にスタートアップへの転職が流行しているからこそお伝えしたい3要素です。

キャリアの「都落ち感」

この「都落ち感」というのは私自身が気に入っている言葉でして、元は自動車雑誌でテリー伊藤さんが話していたものになります。かつて大ヒットを飛ばした車である「初代ワゴンR」を指して概ね下記のようなことをお話されていました。

例えばベンツやBMWから初代ワゴンRに乗り換えたとしても都落ち感が無かったと思う

車格は傍目から見て明らかにダウンするものであったとしても、新しい概念だったり、洗練されたデザインだったり、エコロジーだったりを前にして
プライドを持った前向きな選択であると主張できるという意味合いだと捉えています。同様の流れはハリウッド俳優に愛されたプリウスなどにもあったように思います。お金という軸ではなく、何かしらの意識の高さに起因した選択とも言えるでしょう。

ではキャリアの都落ち感はどういう状況かと言いますと下記のようなものがあるように感じます。

  • 有名企業からマイナー企業への転職

  • 上場企業からスタートアップへの転職

  • 正社員からの起業

  • 年収ダウンでの入社

年収ダウンの上で社格が上の企業に転職というのは最近ではあまり聞かなくなりましたが、多くの場合は社格のダウンに繋がる選択となるでしょう。先の初代ワゴンRの話と同様に、下記の3点が重要になると考えています。

  • 自身の選択に対して腹落ちがしているかどうか

  • 自身が大切にしているポイントが我慢した結果ではないか

  • 家族は理解してくれているか

私もベンチャー界隈で採用を続けていますが、この3点が達成されない転職はお勧めできません。例えば大切にしているポイントが「他所様からの見え方」なのであれば格を下げるような選択肢はしないほうが良いでしょう。

経歴を拝見すると有名上場企業、メガベンチャークラスがずらずらと並んでいて、それでも何か満たされずに小規模・中規模ベンチャーの面接に来るも「なんだか違うな」と去っていかれる方が居られます。入社して頂いたとしても企業のフェーズが合わずに去りがちです。柔軟性という括りで考えるには厳しく、もっと手前の根本的に満たされない上記の3要素があるように感じます。

一方で社格を上げ続ける選択肢というのも辛いものがあります。明らかに格が上であるという会社を選ぶしかなくなるため、選択肢がおのずと減っていきます。こちらもまた生きにくそうだなと感じます。

我慢への対価

企業の原則として、社員に支払う給与以上の価値貢献をしてもらわないと立ち行かないというものがあります。分かりやすく売上に直結している営業や、数値化しやすいマーケティング職であれば問題はありませんが、開発やバックオフィスなどの売上貢献に対する計算というのは非常に難しいです。顧客に対して人月精算をするSIerやSESであれば明朗会計が可能ですが、それ以外は困難です。例えば自社サービスなどの場合であればある施策を作ったのはエンジニアだとしても、売ったのは営業だったり、呼び込んだのはマーケターだったり、発案したのは企画部門だったりするため特定の人を評価するのは困難です。

勢い十分な粗利が確保されていない企業の場合、これらの売上貢献説明がしにくいポジションへの風当たりが強くなります。私が最近見聞した事例でも、肝いりで始めた新規事業が「まだリリース前なので」という理由でボーナスをカットした企業があり、離職に向けての動きがあります。

こうした殺伐とした企業の場合、「我慢への対価としての給与」という考え方をする方が出てきます。理不尽な仕事、やりたくない仕事、納得の行かない評価、殺伐とした雰囲気だけども1日8時間程度、不快さを我慢して座っていれば給与は入るという発想です。転職に対して抵抗がない方であれば辞めてしまいますが、一定数残留する方が居るというのもまた事実です。この層によって支えられている殺伐とした企業は少なくありません。

下記の本はご献本頂いたものなのですが、物語形式で転職について触れている候補者目線での一冊になります。今回のnoteと同じく新卒入社した大企業について疑問を感じ始めるのが転職のきっかけとして語られています。終身雇用型の企業であれば、入社するとどういうタスクを渡されようが身分が保証されているのでやむなしという風潮があったと言えるでしょう。しかし実際のところは終身雇用型というのはなし崩し的に消滅しつつあり、残留するのも転職するのも自己責任という形に着地しようとしているように感じます。

身分が保証されていないという以上、将来に繋がる仕事を優先的にこなすべきですし、社内にそうした仕事が無いのであれば副業などで収入の補填だけではなく経験の補填・追加をする必要があるということだと捉えています。

キャリアの「ネズミの嫁入り」

人材紹介界隈にいると「キャリアアップ」という言葉がやたらと聞こえてきます。「キャリアアップ」には世間的には役職のアップ、年収のアップ、社格のアップなどいくつかの観点が含まれていると捉えています。このうち年収のアップは分かりやすい数字ではありますが、役職と社格については世間的な任意の時点でのスナップショット的な印象であり、曖昧です。世間の印象は急上昇もすれば急降下もするものです。

そんな中で注目する必要がある要素が、以前も紹介したキャリアの「ネズミの嫁入り」だと考えています。

渋谷六本木界隈で中間管理職をしていると、必ず大手メガベンチャーと比較した際の待遇差、福利厚生差について社員からなじられるという悲痛な声が聞こえてきます。

しかし当の大手メガベンチャーのVPoEの方に言わせると「待遇を巡ってGoogleと比較されて辛い」とのことです。皆がGoogleに入れるのであれば入れば良いのでしょうがそうでもない難しさが香ばしいです。

更にGoogleの友人に話を聞くと「良くも悪くも大企業なんですよ」と言って仲間内でスタートアップを起こしました。

流れが早く、他者他社比較も容易なIT業界ではキャリアのゴールというものは恒久的には存在し得ないものです。誰しもが満足するキャリアというのもまた無いのでしょう。再度繰り返しますが、腐らずに前を向いていれば後からでも何とかなります。そして世間的に良いとされている企業に入ったからといって満足行くかと言われるとそうでもないのがキャリアの妙味です。

新卒(学士・修士・博士)・第ニ新卒 ITエンジニアになるための就職活動の傾向と対策

キャリアの価値観というものは人の数だけ正解がありますし、その時々の外部要因や環境要因によっても変化するものです。

「会社の雰囲気」は気の所為

近年、就職活動や転職活動において「会社の雰囲気」が重視される傾向にあります。殺伐とした企業よりは気持ち良いコミュニケーションが取れる企業の方が良いですが、「会社の雰囲気」は残念ながら変わりやすいため、それを選択理由にするのは危ういです。

私自身も学術から転向してベンチャーからの上場企業、メガベンチャー、海外子会社を含むベンチャーと渡り歩いてきましたが、企業とは生き物のようなものだと捉えています。入社時に何かしらに共感して入ったとしても、その後方針が変わるようなことは沢山あります。

1980年代の高度経済成長期の大企業であればネガティブな環境要因も少なかったわけですが、バブル崩壊、リーマンショック、相次ぐ震災、コロナ禍、ウクライナ問題、円安などと難しい状況が断続的に発生し、籠の中の社員を将来を予想しながら守るのは難しくなってきたと捉えています。その結果、企業の言うことは変わるものだと思うのが適切でしょう。ある日突然過激なパラシュート人事が起きたり、妙な経営フレームワークが入って雰囲気が変わる事例だってあります。非常に残念な事実ですが、組織の雰囲気を改善するには1-2年かかりますが、悪化するのは3ヶ月あれば十分闇落ちできてしまいます。

向こう3年を見越してのキャリアドリフト

私の場合、「中期的に世間様から声がかかるような仕事ができているか」ということに重きを置くと健やかに仕事ができるらしいと気づくに至りました。キャリアを考える上でお勧めしたいのは、「向こう3年程度のスパンでどうすれば納得できそうか」いう観点です。また、地位やお金、自由な時間など様々な「働く理由」がありますが、「自分はどういう状況が許せないのか」という観点もまた有効でしょう。

noteやTwitterには書けないことや個別相談、質問回答などを週一のウェビナーとテキストで展開しています。経験者エンジニア、人材紹介、人事の方などにご参加いただいています。参加者の属性としてはかなり珍しいコミュニティだと思っています。ウェビナーの期間限定公開なども手掛けてみようかと画策中です。

執筆の励みになりますので、記事を気に入って頂けましたらAmazonウィッシュリストをクリックして頂ければ幸いです。

#技育祭 登壇を記念して学生さん向けキャリア相談Meetyを作成しました。多数の学生さんにご応募頂いております。

経験者向けMeetyも開設しております。キャリア相談、組織づくり相談などお気軽にどうぞ。


ここから先は

0字

¥ 500

頂いたサポートは執筆・業務を支えるガジェット類に昇華されます!