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【新卒・中途/候補者・面接官共通】ITエンジニアに求められる志望理由とは

先のコンテンンツでは新卒・第二新卒の方々を対象にした就職活動の傾向と対策についてお話をしました。その中でも触れたのが業界理解についてです。数多く応募してしまう方の傾向として、企業一社一社に対しての業界研究が深くできないために薄い志望動機になってしまうということがあります。就活面接マニュアルを丸暗記してどこの企業にも使える汎用的な回答をした結果「没個性的だ」「どうしてうちじゃないとダメなの?」と言われてお見送りされてしまったという話は枚挙にいとまがありません。

志望理由が脆い方の特徴としては下記のようなものがあります。

  • 基本的に売り手市場であるため無策でもどこかに引っ掛かると思っている

  • コミュニケーションを避けてITエンジニアを志す方が少なくないため、志望理由のような自身のアピールに興味を強く持っていない

結果として志望理由についての説明がうまくできず、就職活動・転職活動の立ち居振る舞いがうまくできていないという事象に繋がります。

ではその志望理由とは一体何なのでしょう。志望理由の方向性のズレでミスマッチになるのはなかなか不毛だと捉えています。今回は志望理由とは何なのかを整理しながら、方向性や求めるレベル感も合わせてお話しします。後半には面接官に取っての注意点にも触れていきます。

IT人材は不足しているが、誰でも良いというわけではない

前回も書きましたが、千と千尋の神隠しの千尋的なアプローチはよろしくなく、内定が出たとしても不利な条件が提示されると思ってよいでしょう。

特定の領域に特化している自社サービス企業(ア)を受ける場合、その事業や業界に対する共感や興味が求められる傾向にあります。

逆に領域が多様であり、配属先がどこのサービスになるか不明な企業(イ)であれば、サービスへの共感よりミッション・ビジョンへの共感が求められます。これらの企業では志望理由や企業選びの方向性が候補者と企業で合致していないと厳しいものになります。

「なんでも良いからできる人が欲しい」という会社(ウ)では純粋に作業者としての参加が期待されています。

こうした志望理由や企業選びの方向性を話す際に例としてだすのが「千と千尋の神隠し」です。千尋が湯婆婆に対して「ここで働かせてください!」と5回目で雇われるシーンがありますが、実際の(ア)(イ)の就活ではそんなことはまずありません。建設的に経歴の差まり、雇うことによるメリット、志望理由を伝えなければまず通りません。それでも通してくれた湯屋は(ウ)の企業群と言えます。

同じく「ハクという人に言われて来ました」というのもカジュアル面談では許されますが、最終面接ではまず落ちます。こう話す人は新卒採用シーンで増えています。逆求人イベントや新卒スカウト媒体の台頭に伴い、志望理由が「スカウトされたので来ました」となりやすくなっています。これは志望理由ではありません。

2018年にみずほ情報総研がIT人材数の(供給)の推移を発表してからというもの、IT人材は不足するという言説だけが独り歩きしています。事実足らないことには違いないのですが、誰でも良いというわけではありませんし、未経験の方々の短期離職にも警戒しているため「ここで働かせて下さい」というだけでは通らない現状は変わらないでしょう。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

志望理由は遅くとも最終面接までにはあったほうが良いでしょう。そこまでの選考過程であれば「興味を持った理由」「応募しても良いかなと思った理由」があると好ましいですし、やがて志望理由にも繋がっていきますので大切にしてください。

候補者向け:志望理由の見つけ方

志望理由はどう組み立てれば良いかというと、次の3つを起点にするのが分かりやすいです。

  1. サービスへの共感

  2. ミッション・ビジョンへの共感

  3. 自身が興味をもったきっかけ

それぞれ注意事項はありますので受けたい企業別に考えてみてください。

企業別 求めるサービス共感レベル

当該企業が展開しているサービスにどれだけ興味があり、貢献したいかというところです。初めてサービスに当事者として携わる新卒の方や、クライアントワークばかりだった方には非常に大きなハードルとなりやすいです。

ポイントは下記の4点です。私がサービス共感を強く求める企業で採用活動をする際は必ずこれらのことを事前に候補者にお伝えするのですが、最終面接前の3割位の方はやらないので十分差別化できます。

  • サービスに関するプレスリリースに目を通す

  • 実際に当該サービスを触ってみる

  • 競合サービスと比較してみる

  • その上で自身が期待される立場から何か意見を言う

しかしいたずらにサービス共感をすれば良いかというとそうではありません。企業によって異なります。区分したものを以下の図に示します。

企業別志望理由を求める方向性

(A)サービス数が限られている企業や、配属先が明らかになっている企業、toC向けのように利用障壁が低い事業展開をしている企業ではサービス共感が強く求められます。特に社長がプロダクトオーナーだったりすると職種を問わず強い共感や意見が求められます。

(B)サービスがtoC以外だと分かりにくいため、求めるサービス共感は低い傾向もあります。当該業界への興味があれば十分な企業もあります。

(E)ミッション・ビジョンが不明瞭な自社サービスはあります。何度読んでもよく分からないミッション・ビジョンの企業はあります。サービス共感がしっかりしていれば問題ありません。

一方で(C)サービス数が多かったりして配属が不明な場合や、(D)純粋に作業者が欲しい場合はそこまで求めません。特定のサービスへの共感を全面に打ち出しすぎたところ「このポジションはそこではない」「そのポジションに配属されない場合はどうするのか?」「実はそのサービスは撤退予定です」という展開もありますのでどういう企業なのかはしっかり見定める必要があります。(C)については注意が必要で候補者の方が「○○のサービスが大好きです!○○に配属希望です!それ以外は興味がありません!」という場合には企業としては困ります。中途で明確に募集サービスを経験者採用で設けていれば可能性がありますが、そうでない場合はお見送りされる場合もあります。

ミッション・ビジョンへの共感

前項で言うところの(A)以外のパターンのようにサービス共感を求めることが難しい、もしくは求めていない場合に出てくるのが当該企業が掲げているミッション・ビジョンへの共感です。これらを強く求めている企業は経営層が何かしらの発信をしているのでそれらに目を通してイメージが湧くかどうかを見ると良いでしょう。

興味をもったきっかけ

サービスに色がなく、ミッション・ビジョンも特に中身が無い企業はあります。そういう企業では「興味を持ったきっかけ」を中心に話すことになります。何かポジティブな要素はあると思いたいです。

志望理由の作り方

これらのことを総合すると、志望理由の作り方としては下記のフローになるでしょう。

  1. 自身のキャリアを整理する

  2. 受けたい企業の分析をする

  3. 1と2の中で共通項を見つける

  4. 言語化する

この際、受ける企業によって志望理由の求めるレベルが違うため、先のA-Eを参照しながら組み立てをしましょう。

面接官向け:あなたは志望理由を答えられますよね?

買い手市場を引きずった面接官の場合、自身が偉いと勘違いしてしまう面接官の方が少なくありません。ごく一握りの採用強者を除き、面接の場は候補者からも企業を選ぶ場となっています。志望理由一つとってみても複数の注意点があります。

採用をうまく進めたいと考えた場合、私が必ず注目するのは企業と候補者のパワーバランスです。私自身、採用に関わって10年になりますが、不人気な業界や採用が強くない企業を歴任して来ました。採用強者で雑に扱っても候補者が向こうからやってくるような企業であれば何をしても問題はありませんが、多くの企業ではそうは行きません。自社が買い手市場に居るのか、売り手市場に居るのかしっかり把握してから採用戦略を練る必要があります。

カジュアル面談で志望理由を聞かない

私の持論なのですが、面接官教育を実施してない、あるいは失敗した場合、面接官は自分の受けた面接を再現します。就職氷河期で圧迫面接を受けてきた面接官は圧迫面接をします。同様に志望理由を聞かれ続けた面接を受けた面接官は、志望理由を必ず聞かないと行けないと思い込んでいます。

カジュアル面談で「志望理由はなんですか?」と聞いてしまう面接官が話題になることが多々ありますが、これはNGです。カジュアル面談はあくまでも企業や事業を知ってもらうための初期接触です。面談と面接の区別がつきにくいのであれば「個別の企業説明」だと捉えていただいて構いません。

街を歩いていてマンション売りのビラ配りの人からビラを貰った際、不動産営業の人に「家をお探しなんですか?」と聞かれる分には自然です。「どういった家をお探しなんですか?」「興味ありますか?」も良いでしょう。しかし「どうしてこのマンションを選ぼうと思ったのですか?」と聞かれたら「何を言ってるんだ?」となりますよね。まだ選んでないんですから。それと同じことがカジュアル面談ではよくあります。

面接官のあなたは志望理由を答えられますか?

私自身気をつけている事柄なのですが、面接官として質問する際に自分が答えられないようなことは質問しないということに気を付けています。

以前も話題にしたのですが、ある企業の役員の方から「10年後にどうなりたいですか?」という質問に対して「時代の流れの速さを考えると10年後に確実にゴール設定することは難しい。せいぜい3年では無いでしょうか」と返したところ渋い顔をされたので「御社の10年後はどうですか?」と逆に質問したところ「うちは方針がよく変わるので来月のことも分かりません」と言われたことがあります。私が対峙した面接の中で最大規模の特大ブーメランでした。

志望理由も同様でして、質問するからには候補者の方に「面接官の皆さんは何を思われて入社し、その結果どうでしたか?」という内容くらいは想定逆質問に入れておくべきです。「逆に聞かれて答えられなかったよ、ははは」というようなことを話す面接官にもよく遭遇するのですが、それは面接官教育が必要です。

最後に:サービス共感の問題

自社サービスにおいてサービス共感を持ってもらえるということは多くの企業に取っては歓迎されることです。しかし一つ大きな問題があります。ヒトは飽きるのです。

よくあるのはライフステージの特定の時点に絞ったサービスの場合、自身のライフステージが変わることで共感しにくくなります。例えば私の場合は男女のマッチングサービスに長く関わりましたが、後半で抱いた感想の一つとしては「ユーミン凄いな」ということです。ユーミンはデビュー50周年なのですが、50年ずっと恋愛について新譜を出し続けるのは驚異的です。マッチングサービスも男女の出会いをサポートしていくわけですが、自身が結婚したり、子育てしたりしてくると段々一人称で考えられなくなっていきます。勢いマーケティング分析にシフトしたりするのですが、入社当初とは違うアプローチになりがちですし、そこで悩む人は一定居られます。

向こう数年間興味を持ち続けられるだけの熱意を抱けるか、という観点が候補者も企業側も双方にとって良い落とし所に思えます。

コンサル志望の方へ

ちょこさんのnoteがお勧めです。コンサルは志望理由にもMECEが求められる感じがありますね。ITエンジニアはせいぜい論理矛盾がなければ良いかなという塩梅です。

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