意欲的な新卒・第二新卒を採用したいけれども、なかなか出会えない件
新卒採用や第二新卒採用において、企業からとても相談が多いのが「意欲的な若手に出会えない」というものです。度々引用する楽天オーネットの新成人アンケート(毎年成人を迎えた男性300人、女性300人合計600人を対象)でも、仕事意識の項目で下記のような変化が起きています。
「最近の若いものは」と言いたいわけではなく、いくつかの背景があると考えています。加えてここのところ非エンジニアの第二新卒採用にも関わっているのですが、社会全体の危機感すら持つに至りました。今回はこの傾向を産み出した背景と、企業ができる対策についてお話ししていきます。
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企業が求める人物像 2023
企業が求める人物像について整理をします。漠然と「意欲的な姿勢」という企業もありますが、分解していくと下記のようなものに分けられます。
何かに打ち込んだエピソード
指示待ち人間ではなく、能動的に取り組む姿勢とそのエピソード
トライ&エラーができる姿勢とエピソード
事業への興味や利他的な姿勢
最後のものについては長くなるので別の回に説明を譲りたいと思います。
意欲的な若手に出会えなくなっている背景
何故意欲がある人材と出会えなくなってしまったのでしょうか。その背景について過去のnoteなども交えつつお話ししていきます。
タイパ重視傾向
2022年流行語大賞にも選ばれたタイパ(タイムパフォーマンス)ですが、あることに取り組んだ時間から得られる見返りが重視される傾向にあります。YouTubeの倍速視聴などが例示されます。
タイパを意識するのは必要なシーンはありますが、正解や結果が明らかなものに対し、即時到達を求める傾向に繋がっていきます。新卒の採用面接でも「2年目に私はどの程度の給与が貰えますか?」と質問されることがあります。本人の実績次第なので「知らんがな」というのが回答ですが、納得が行かずに食い下がるケースも見られるようになりました。
頑張れば頑張るほど評価されるということは彼らにとっては曖昧であり、不評だと感じる層が存在します。こうした傾向が就職氷河期を脱しても尚、自身の捻出した時間に対して定型業務が与えられ、確実にリターンが約束される非正規雇用に応募する新卒が居ることに繋がっていると考えています。
こうした層にとって企業が求める姿勢であるトライ&エラーとの親和性は絶望的に悪いです。タイパが重視され、トライ&エラーが疎まれるからこそ企業からの需要がさらに高まっていると捉えています。
人手不足による妥協の上での受け入れ企業の存在
エンジニアバブル下では採用目標人数必達を目指す企業がそれなりに存在していました。こうした企業は目標達成のために選考を甘くして内定を出すケースが多々見られました。
結果として意欲を見切れないため、入社して間もないジュニア層であってもぶら下がる状態に繋がります。ぶら下がるジュニア層の特徴として、スキルアップや給与アップは望まず、代わりに一切の残業がないことを望みます。「今月は1時間も残業してしまいました」という発言に繋がっていきます。
個性尊重教育と自己責任
1992年に小学校に導入された新学力観に基づいた個性尊重教育も影響しています。
それまでの世代であれば、複数名で何かをする機会が多く、必須のものも少なくなかったわけですが、個人尊重教育では集団行動の機会は減少していきました。以前は部活動に加入必須の学校も見られましたが、現在は部活動を強制しない学校も登場しています。部活動から解放された時間を使って個人活動に打ち込めた場合は眼を見張る成果を出す人が登場することがある一方、ずっとYouTubeや無料漫画を見続ける層を生み出していることに繋がっている節があります。
局部だけ伝わった「世界に一つだけの花」
2003年にリリースされたSMAPのヒットシングルが「世界に一つだけの花」です。小学校の合唱でも歌われる楽曲ですが、個性尊重教育の延長線上にあると捉えています。
元々一人一人が特別な存在なんだよ、というメッセージが過度に出過ぎています。No.1にならなくても良い、という歌詞はその後の事業仕分けでの蓮舫氏の名言、「2位ではダメなんですか?」に続くと考えていますが、No.1を目指すだけの積み上げがないと戸籍上はOnly Oneですが、社会的に当確を表すのは元々の生まれが良かったり、比類のない容姿でもない限りは非常に困難です。考えてみていただきたいのですが、「No.1にならなくてもいい もともと特別なOnly One」というメッセージを歴史的にも日本を代表するトップアイドルが国民に向かって歌い上げるというのは「施し」にも似た非常に上からのメッセージです。
残念ながらこの歌詞の後に続く次のフレーズは多くの国民には届かない結果となってしまいました。もっとも何かに着手しないと何の花を咲かせれば良いかも分からないわけですが。
3年に及ぶコロナ禍起因の活動制限
2020年2月から始まったコロナ禍により、全ての活動に制限がかかりました。特に学校組織はオンラインへと移行したため、部活・サークル、アルバイト、留学、授業におけるグループワークに制限が起きました。その結果、これらの活動に巻き込まれることによって何かしらの思考のキッカケが得られたであろう人も、チャンスを暗黙に奪われた格好になりました。そのため、自主的かつ能動的に何かに取り組んだ人との差が大きくなってしまいました。
現在就活がうまく行かない方であっても、授業やゼミ、アルバイトなどに今からでも取り組み、何かしらのエピソードを作っていただきたいところです。
何となくかっこいい仕事は給料安い
2008年の麻生太郎総理(当時)が「何となくかっこいい仕事は給料安いよ」という言葉を残しています。第二新卒採用のために1000人近くのプロフィールを見ていると、この言葉のリアリティをヒシヒシと感じます。具体的な業種への言及は避けますが、子供が憧れやすいキラキラした世界、世間的な注目を浴びやすい華やかな業界、綺麗な職場・・・例えこれらの職場で店長を任されたとしても200万円代の年収という方が大勢居られます。職業イメージとは裏腹に生活も厳しいほどの待遇である企業は古い新しいを問わず存在しています。一種のやりがい搾取と言えます。実家暮らしなどでない限りは物価高の今では厳しいのではないでしょうか。
企業はどうすると採用に繋がるか
従来から続く採用経路を踏襲し続けた場合、冒頭に挙げた企業が期待する若手像を叶えることは難しくなってきています。どのようにすれば接触や採用に繋がるかということについてピックアップしていきます。
コンテスト、イベント登壇者
2015年以降、学生さんをターゲットとしたコンテストなどが複数存在しています。9/23に決勝があった技育展では予選で審査員をお受けしたためご招待を頂きましたが、意欲的な発表ばかりでした。
何度かこうしたコンテストは拝見してきましたが、以前は技術的な挑戦に振り切った傾向にありましたが、この会では実際にサービスインやマネタイズをされていたり、起業に向けて動かれているケースも見られました。技術力に加えてビジネス志向もあるとなるとかなりのレア人材ですが、普通の採用経路では出会いにくいことに違いはありません。こうしたイベントにて意欲的な学生さんとの接触を図っていくというのも一つの手段でしょう。
インターン設計をがっちりやって新卒採用
インターンには大きくイベント型や実務体験型に分類されます。特にイベント型は企業によって差が生まれやすいところです。私の古巣であるレバレジーズでも総合職のインターンに定評がありますが、しっかりとした感情設計をして取り組んでいます。インターンに打ち込み、能動的な姿勢が求められ、ビジネス思考の片鱗を求めるスタイルとなっています。就活生へのブランディングも含めて必要なために一朝一夕には実現できませんが、だからこそできる意欲的な新卒採用に繋がっているなと外から見て改めて確信しています。
博士採用
学士しか採用しておらず、年齢を厳しく見ている企業には全く向いていませんが、冒頭に挙げた4要件を満たのがしやすい博士人材です。特に物事への打ち込みとトライ&エラーは研究生活そのものなので非常にお勧めできます。「事業への興味や利他的な姿勢」という条件について博士はビジネスからは遠いものの、利己的な人材はそもそも博士課程を選ばないので、企業からしっかりとインプットをすれば大いに戦力になるでしょう。
エンジニア職との相性は良くないものの、みなし残業は一つのメッセージ
専門職であるエンジニア職の場合、残念ながらできない人がどれだけ時間をかけてもできない業務は存在します。一方で特に営業職では、しっかりとしたビジネスモデルの上で若い人たちが意欲的に業務を遂行することでリニアに売り上げが上がる業界もあります。
ここのところのIT界隈の不況では、こうした方針をとった企業の方が不況に強いのではないかと考えるに至りました。例えば投資を受けているシード期スタートアップなどは本来ガムシャラに働き、黒字化を目指すべきなのですが、ここ数年はワークライフバランスやノー残業の概念が持ち込まれており、正直理解しかねるところがあります。
他方、Xなどで話題にするとあらゆる方向から火炎瓶が飛んでくるのが「みなし残業」です。みなし残業は必ずしもその時間まで残業する必要があるというものではないので、見るべきは平均残業時間です。ただみなし残業があることで、「極力働きたくない人」が寄りつきにくいという事実はあるかと思います。スタートアップや自社サービスが2022年1月から不況突入しています。不況でも元気な企業の条件を見ていくと、どういうマインドの従業員を集められているかにる依存しているのではないかと考えており、調査を進めています。
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