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中間管理職の増やし方はあるのか?/他社にも聞いてみた

ここのところ日本を席巻する中間管理職不足についてお話してきました。今回はどうやったら増えるのか?というお話です。

これまでお話してきたように、「個の尊重」が小学生から重視された世代に対して自然発生的に中間管理職を求めるのは無理があります。これは日本全体のお話なので、外からの調達を期待するのは難しいです。このまま行くとフリーランスを中心にメンバーだらけになる。契約に基づいたタスクのみを実行し、誰もタスク管理や折衝もしない、定着もしない流動的な世界です。即効性があるとすればM&Aによるタレントの吸収くらいでしょう。

ITエンジニア界隈でピープルマネージメントの比重が高いエンジニアリングマネージャー(EM)が集うEngineering Manager Meetupというのがあります。よくOSTを行う会合なのですが、そこで定常的に出るのが「EMを増やすには」というものがあります。ピープルマネージメントが主体となるEMは中間管理職の中でもかなりウェットな部類です。

私も好んでその話題に参加するのですが、どの会社さんも「自然発生的には増えない」という話が多数を占めます。私自身の育成経験や、他社EMへのインタビューも含めたお話をしていきます。

中間管理職を増やす:素養がある人の採用

営業職の新卒採用を見ていると必ず「リーダー経験」を聞きますよね。そして就活生側も「大手サークルの副部長」が量産されたりしています。量産型副部長はどうかと思いますが、何かしらのリーダー経験があると中間管理職の意味付けが理解しやすい傾向にあり、専門職であっても意識的に登用すべきではないかと考えています。

例えば下記の「事業を創る人」の大研究では、「入社10年以内に新規事業案または新商品・サービス案が採用された経験がある人について、リーダーシップ発揮経験について分析を行っています。

・授業におけるリーダーシップ発揮経験で5倍の差
・部活におけるリーダーシップ発揮経験で2倍の差
・ゼミにおけるリーダーシップ発揮経験で約3倍の差
・アルバイトにおけるリーダーシップ発揮経験で約3倍の差

新規事業経験とありますが、この本で言われている内容は下記の2点なので、中間管理職、特に部門長あたりに適用されるもののため引用しました。

・周囲に事業の意義を伝えて理解をしてもらう
・資源を調達して人を動かしていく

つまり中間管理職になる人もまた、新規事業責任者と同様に過去のリーダーシップ経験があったほうがなりやすい傾向にあるのではないかと考えています。

私の場合は中学から生徒会や吹奏楽部部長などで中間管理職として動いていました。特に高校時代の吹奏楽部は先生が急に変わり、万年地区予選銅賞だったチームに「全国大会金賞」という目標を掲げてゴリゴリ動きましたし、特にパート間に派閥があってまとめるのが大変でした。あの経験があったからこそ、中間管理職をやりやすいキャラクターになったという実感はあります。その点で、サークルの量産型副部長より、訳ありグループの方がより泥臭い作業に意味を見出し、意識的に取り組めるとも考えています。

中間管理職を増やす:世間的な生存戦略としての認知

各社、今いるメンバーの中から育てるために足掻かねばなりません。
そうなると社内でメンバーに対するキャリアパス教育をする必要がでてきます。

私がこれまで実施してきたものは正社員とフリーランスの違いを例示しながら、「指名される理由」を説いていくというものでした。何故あなたにタスクを依頼するのか。数年後、新しく実装力の高い新人が来たときにあなたに依頼する理由は何かあるのか。そのときに出てくるのが下記の免震構造型キャリアです。余人に代えがたいキャリアとして長期に渡って価値を出すための取り組みです。

評価と合わせながら正社員や中間管理職の意味付けをしていくという作業は1年ほど掛かりましたが有効でした。

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現職ではEMを担当しているフィリピンの拠点にて、私と現地のマネージャーの2人がそれぞれ自身のキャリアパスとそれぞれの国の生存戦略についてのライトニングトークをしています。先週がちょうど私の順番だったのですが、「スペシャリストとマネージメントの道があると思うのだけどKuma-sanはどう思う?」といった質問がSlackで起きるなどポジティブな反響がありました。前向きに働いている社内の中間管理職に、何を思って働いているのかを皆の前で話させるというのもまた有効でしょう。

中間管理職を増やす:意味づけ、教育、評価による登用

これは組織改善コンサルの方で頂いているお話なのですが、IT専門職(エンジニア、デザイナー、ディレクター)向けのリーダー研修パッケージというものの作成を試みています。

前職では人事部研修チームと連携してのリーダーシップ研修を試行していましたが、ワークショップなどにより立ち止まって社内の身近な問題を考える時間というのもまた意味のあるものだと考えています。

研修で考えるきっかけを持ち、行動計画を立ててみて、更にそれが評価で拾えると理想でしょう。私が組織改善コンサルとして関わっているある企業さんでは、下記のような評価の配分傾斜デザインをしながらフェーズごとの視座向上をトライアルしています。

・新卒・未経験
 企業が求める人物像になるために行動評価を中心に実施
・中堅
 スペシャリストコースの場合は職能の比重を拡大
 マネージメントコースの場合はOKRを用いて組織成果の比重を拡大
・それ以上
 スペシャリストコースの場合は職能の比重を拡大しつつ、教育要素を増やす
 マネージメントコースの場合は全体評価の比重を拡大

中間管理職を増やす:楽しく仕事をする姿を中間管理職が見せる

先にご紹介したEngineering Manager Meetupでも「自社の取り組み事例」として出てくるのが1on1だったり、素養のある人をピックアップしたりというケースを耳にしました。ITエンジニアキャリアの生存戦略の一環として中間管理職を目指すという方向から動機づけを試みて居られる会社さんもありました。

中間管理職を増やす取り組みとして印象深かったのはA社さんのケースです。経営層からして既に「如何にして中間管理職に気持ちよく働いてもらえるか」ということをメッセージとして出して居られました。一般的には経営層から中間管理職へのメッセージは一方向の期待や圧がかかることが多いのですが、持ち上げる姿勢はレアだと感じました。

実際にA社さんは中間管理職層の採用にも成功して居られました。その中の数名の方からお話をお伺いする機会がありましたが一貫して「中間管理職に進む後進を育成するために生き生きとした姿を見せる」というメッセージが出てきたのは興味深いところです。中間管理職はつまらないものではない、楽しいものだと示すことによってなり手を増やし、厚い中間管理職層を構成することで組織をスケールさせようとする姿勢がありました。

本質的には面白そうかどうか、キャリアの墓場に見えないかどうかという雰囲気も含めて見せていかないと、中間管理職は外からも来ず、内からも育たずというところなのでしょう。

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