独立のための③:農業のかたちを決める~作物編~
今回で「農業のかたちを決める」のラストとなります。
私の中でここはかなり重要なので少し長くなります。
誰もが最初に考えるであろう何をつくるかを私が最後にした理由は、特定の野菜に思い入れがないからです。
思い入れがないと言ってしまうとなんだかやる気がないように聞こえてしまいますがそうではありません。
私は逆に作物への思い入れが農業という商売の障壁なのではないかと思っています。例えば世の中には「トマトが好きだからトマトを栽培します!」という理由で農業の世界に入ってくる方々もいると思います。
この「OOが好きだからそれを栽培する」という選び方に関して、その方々を否定するわけではないのですが私は少し疑問を感じています。
「その野菜は誰に向けた商品なの?」
野菜は商品です。
普通、ビジネスで商品を考える際には需要に対して供給が追い付いていないモノを商品として販売するのであり、販売するモノを決め打ちしてから需要を調べるということはあまり考えられません。
つまりは、売れるモノを商品にするのです。
ですが、農業の世界にはいまだに「良いものを作っていれば必ず売れる」や「うちの野菜は美味しいはずなのに売れていない」と考えている人がいるようです。
しかし、それは商品を売るという点においてずれた感覚だと思います。
私が考える売れる野菜は需要が高い野菜です。
当たり前のことを言っているかと思いますが、不思議と農業は他産業と違い特別で良い野菜が売れると思っている人もいるようです。
ですので、私は最初からこの野菜と決めるのではなく栽培地域の特性、目指す規模などに合わせつつその時代にマッチした作物を選びたいと考えています。
それを踏まえたうえで私が作物を選ぶ基準は以下の点です。
・流通量が多い
・作業工数(手間)が少ない
・栽培方法が確立している
以上になります。
この基準の軸となっているのは大量生産につなげられるかです。
中でも重要なのが最初の「流通量が多い」です。
流通量が多いということはすなわち需要が大きく野菜を大量に出荷しても売りあぶれることがないことを示しています。
大量出荷となると市場や量販店、加工業者が販売先のメインとなりますが流通量の少ない野菜つまり需要の低い野菜にしてしまうと販売先での販売量は多くないのですぐに売りあぶれてしまい出荷の規制がかけられてしまいます。というよりそもそもたくさんは受け付けてくれません。
しかし、流通量の多い野菜を選ぶことによって市場や量販店、加工業者の受け入れ量が格段に増え作った分すべて販売することができるようになります。
とはいえ、この流通量が多いというのにも欠点があります。
それは単価が低いこと。
野菜に限らず、供給量の多い商品は値段が下がる傾向にあります。そのため流通量が多い野菜は値段が低価格になりがちです。
しかしながら私個人ではそのことに関しては太刀打ちすることはできません。ではその低価格に対してどう対応するのか。
それは生産原価を減らすことです。
生産原価を減らすことで利益の幅を広げるのです。
農作物の売上に対する生産原価の割合は私の会社での経験上おおよそ
肥料代5%、農薬代3%、苗代3%、袋代5%、労務費40%です。
生産原価を減らすためにはどれを減らせばよいか一目瞭然ですね。
それはそう。労務費です。
この人件費を減らすためには作業工数をシンプルにかつ効率的、しかもアルバイトでも作業可能なようにすることです。
アルバイトというのは雇い主にとっては非常に有効で正規雇用よりも雇う側の負担が少なく、必要な時間に必要な作業だけやってくれます。ですのでアルバイトを雇うというのは労務費を抑えるという点においてとても大きな効果があります。
したがって、アルバイトに任すことのできるシンプルな作業はアルバイトに回し、複雑で熟練度の求められる作業は自分(将来的には社員)で行う。そしてこの作業分担の割合をアルバイトに多く振ることができれば安価で大量の野菜を栽培することが可能となるわけです。
それを実現するためには「作業工数が少ない」野菜を選ぶことが重要かと思います。
最初の作業工数が多く複雑なものほど効率化の効果が高いじゃないかという意見もありそうですが、今回は新規事業立ち上げですので高難易度の所には踏み込まずに、それはもともとの事業がうまくいっていてお金に余裕がある方々に譲りましょう。いきなりやることではありません。
そして最後に「栽培方法が確立している」野菜です。
これは単純に生産量の増減リスクに対応するためです。「需要があって、栽培工程の少ない野菜だが、栽培方法が確立していない野菜」はあまりよくないと思っています。
なぜなら、栽培の前例が少なく情報が集めにくいからです。
その代表格が一時前のパクチーです。パクチーは播種から収穫までさほど手間はかかりません。需要も高く(最近はそうでもないが)生産分はほぼすべて出荷することができていました。
しかし、パクチーは日本での栽培事例が少なく発生する病気は日本ではほぼ初観測、病気が出ても適用のある農薬はほとんどない。そのような状況ですので一度病害虫が発生したらあとは眺めるだけの状態になります。
しかし栽培方法が確立されている野菜の場合、大概のトラブルは事前に誰かが経験をしてその解決策まで練られています。
このような野菜には生産量のブレがなく安定して栽培することが可能です。
そしてこれらを踏まえた私の結論は
ネギ
です。ネギは流通量が非常に多く、作業が単純であり、栽培方法が確立しています。
しかも、白菜やキャベツと比べ市場での価格変動が小さく値崩れの危険性も少ないです。さらに群馬はネギ栽培の盛んな地域で地域性としても申し分ありません。
今回の「農業のかたちを決める」の私の結論は
・どこでやりたいのか→群馬県
・どのようにやりたいのか→大規模で少品目
・なにをやりたいのか→ネギ
つまり私の描く農業のかたちは
「群馬でネギを主軸とした大規模農業」
ということになります。
ここまできてようやく営農計画を立てていくことができます。
次からは営農計画を立てていきましょう。
農業のかたちは10人いれば10人が違うものとなります。ですので誰かの真似をすれば完璧ということではありません。
それぞれが自分の取り巻く環境、目標、人生設計に合わせプランニングすることが大切かと思います。
それではまた次回お会いしましょう。
さようなら。
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