【小説】ワークワークアンバランス 群像新人文学賞一次落ち作品
耳に届くものをただ音として聞いている。机の脚が床を擦り、空気が震える。勢いよく教室の引き戸が開け放たれ、ストッパーにこれでもかと打ち付けられたドアが低く鳴る。突発的な衝撃に心拍数が上がる。半自動のドアが閉まらない。やれやれ、ドアレールから外れたらしい。ドアが開け放たれたことによって、今まで遮音されていた音が直通で届く。話し声、笑い声、泣き声。ボールが弾む音。「ベロベロベー」「コラ!」廊下を走る上靴の高鳴り。水道の水が流れる音。窓の外からは微かに人気のアニメソングが聞こえてくる。体育で流しているのだろう。飽和している、音に。うるさい。そんな場所。
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