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北欧のTVドラマにハマった理由

つい先日、デンマークとスウェーデンの合作のTVドラマ「THE BRIDGE/ブリッジ」を見つけて鑑賞。2カ国の刑事たちが、難解な事件を解決していく。ハラハラドキドキ、そして北欧というちょっと見慣れない景色の中でストーリーが展開していく。慣れない言語に知らない風景。それだけでもとても観る価値はあると思うんだけど、私は別の意味でショックをうけて、ハマってしまった。

それは2話か3話くらい見て気づいた。

女性が男性と完全に対等、なのだ。

これだけいうと、なんだそんなことか、と思われそうだけど、何がすごいって、それが「当たり前」だからだ。

会社のトップや役員のような人たちはみんな女性。刑事たちが難解な事件を解決するために大量の資料を広げて考えるというシーンの中に、「あれ、女性しかいない!」みたいなこともしょっちゅう。男性が「僕が洗い物しておくから」というくだりがあったり、仕事から帰ったら「お帰りなさい」と出迎えるのは夫だったり。「僕、今日は子供の発表会に行くので先に帰るね」と仕事場からそそくさ帰っていく刑事。自己肯定力がかなり高めの、無敵な会社の社長は女性。君は女性だから、的な展開も一切なし。

そういうシーンを入れることで多様性やら男女平等を強調しているわけでもなんでもない。これが彼らのごくごくフツーの日常なんだと観ていて気づかされた。

このドラマのそもそものメインテーマはそんなところじゃないんだけど、私としては難解な事件よりもそっちの方が新鮮すぎて毎回感心していた。

データでは北欧の男女平等が進んでいるというのはよく見るし、いろんな話も聞いている。でもこうしてドラマを通してその社会の現実を見ると、その数字がリアルに可視化されて(いい意味で)ショッキングで感動的だった。もはやいちいちコメントする必要もないくらい、これが彼らにとっては当たり前の景色なんだということに改めて気づかされたのだ。ちなみにこのドラマ、最初に放映されたのはもう10年前。

というわけで、フランスなんてまだまだ遅れているんだと思った。職場での男女の不平等や賃金格差。いまだに女性の大統領も出ていない。これからの若い世代の人たちの意識が変わってきて、近い将来、女性の大統領が生まれればいいね、という話をする程度。フランスでは女性が活躍とかいうけれど、まだまだなのだ。それよりやっぱり、それが当たり前でむしろ声を上げることすらしなくてもいいくらいにフツーになっている社会はすごい羨ましい。そうなると多様性とか男女の雇用の平等とかそんな言葉も消え去るんだろうか。

別に女性がみんな仕事をして高給取りになることを目指すべきだと言ってるわけでは全然ない。というよりも、みんなが同じだけ選択肢を持てる社会が理想だと思うということ。そのためにはやっぱり、フランスも日本も、女性の地位というのはもっともっと向上するべきだと思う。でも日本でダイバーシティーとか女性の平等を訴えるというのはどこか肩身の狭い思いをすることではないだろうか。なんだかうるさいおばちゃんになってしまったような。「まあ、そんなことを言う(めんどくさい)人もいるけど、とりあえずそれは横に置いておいて」とスルーされる。人がせっかくいい思いをしているのにわざとそう言う話題を出してこじらせて、雰囲気ぶち壊す、性格悪いやつら。みたいに見られてしまわないだろうか。

この前、日本で子供の音楽教室を探さなきゃと思ってネットで検索をしていたら、「お母さんと一緒に学ぶことで」とか「お母さんが自宅でも協力してあげることで」というような言葉が並んでて驚愕。いや、日本はそうなんだよ、これがスタンダードだから、と言われればそうなんだろうけど。そしてこういうことに対して疑問を呈すると多分、めんどくさいやつと思われてしまう。「そこは(主題じゃないし)目をつぶってもいいんじゃないの、細かいこと言うなよー」と。でもそれを自然と変だ!と感じる人がマジョリティになるのを目指すべきなんだな、とこのドラマを見ながら思った。もちろんそのためには社会システム自体を変えることも重要なんだけれども、変だと感じることと社会の変革は繋がっている。

やっぱりまだフランスは遅れているんだとも思うけど、でも若い世代には希望が持てるとフランスのフェミニスト作家のヴィルジニー ・デパントが言っていた。そしてそれはどういうところからわかるかと言うと、おかしいと「自然と感じる」人たちが増えていること。細かいところでも、とにかくおかしいと思ったらとことん正していく、そしてそれが社会のスタンダードになっていく。わざと雰囲気ぶち壊すようなおばちゃんたちではなくて、自然とおかしいよね、と発言できる若い男女がすごくすごく増えることで、ようやく社会全体が変わっていくんだろうなー。

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