#019 工学科目の学習に必須のメタ視点--理系各員に捧ぐ
本シリーズは、①勉強頑張ったら選択肢が増える、②理系かつ高成績の方が選択肢は多い、③選択肢が多いと良い会社に入れて幸せになれるというよくあるお話の②まで必死で頑張ったものの、③は半分嘘である。ということに気付いて四苦八苦した僕が、理系が気付かぬうちに罠にハマらないために、考えて損のないだろうトピックを書いていくものである。
前回は、数学を学習する上で知っておくと、精神衛生上大変有用な数学理解法を紹介した。
今回はこれに続いて、工学系科目に関しても触れておきたいと思う。といっても、こちらは数学に比べたら少々厄介だ。
数学と工学は、相互発展する。
数学の世界で、数式を自分で作り、その数式の性質や応用ができたと思ったら、その数式がなんと現実の現象を表していることがある。
工学世界で未知の現象が見つかった。なんとかこの現象を応用したいと考えると、再現性が必須になる。再現性に優れ、意味の取り違いが少ない形式の言語で、この現象を記述する必要がある。そこで、数学としてこの現象を記述する試みが起こる。
端的に言えば、工学を考えた時点で登場人物が2人(工学と数学)になる。だから、工学科目を理解したぜ!というとき、その理解の種類も2つになる。
数式として理解しているのか。現象も伴って理解しているのか。
さあ、工学科目を学習する上で意識すべき視点を見ていこう。
工学科目は実際の現象との合致性が一番重要
この記事で一番重要なポイントだ。
工学科目は、現実の現象と、理論上の数式が一致しているかを確認して、初めて理解したと言っていい。
フックの法則(F=-kx)やオームの法則(V=RI)など、基本的な関係式だが、実際に確認したことがあるだろうか?
こういう関係式は、実際に自分でバネとおもりを買ったり、回路を組んでテスターで測ったりして確認するのが一番いい。大学によっては、1年生の実験科目でこれらの現象を取り扱うことがあるかもしれない。
実際に自分で実験したらわかるが、フックの法則の実験を自分でした場合、バネの伸びとおもりの重さの関係をグラフにしても、1次直線にならない場合が頻発する。つまり、フックの法則が成り立っていないように見える。
実験科目では、この結果がなぜ起こったのかを考察するのが仕事になる。
ただ、本稿では、実際の現象と数式の一致を確認するのが大事、と言ったところなので、この結果は少し困ってしまう。
実は、ここで困ってしまうのが、工学は少し厄介と本稿の冒頭で述べた理由だ。
工学の座学は現実と乖離した理想状態を学ぶ
世の中の現象は、いろんな要素が複雑に絡み合って起こっている。
工学の理論は、その現象を主に引き起こす原因だけ、を取り出して議論したものが基本である。だから現実とずれる。
逆に言えば、工学は世の中の複雑に見える現象の、コアとなる部分だけをうまく取り出す学問とも言える。
だから学ぶ側は、講義で学ぶものは本当のリアルとは違うけど、でも現実を記述している一部なのだという認識をもって学ばないといけない。
試験問題を解くときは、現実の現象をイメージできる必要がある
学生として厄介なのはここで、結局問題を解くときは、その現象を具体的にイメージできないと、なかなか解きにくい。
考えてみればその通りで、何がわからないから求めたいのかという、目的意識を自分が持てなければ、議論を進めることは難しい。
友人関係が拗れたとき、修復したいという目的意識を持って、相手がなんで起こっているのか解明しようと本人に話を聞いたり、事情を知ってそうな友人に話を聞いたりするだろう。
工学の問題も同じような気持ちで取り組む必要がある。現象くんのわからないところはどこなのか?そこを知るには、何を知ればいいのか?
ここで結局戻ってくる。やっぱり工学科目は実際の現象との合致が重要なんだ。
まとめ
科目ごとの特性というのは、講義で学問に向かうとき、あまり意識されないが、前回と今回で話した通り、自分の学習の方向性を決める上で、非常に重要なファクターである。
結局それが何だから、自分はこうするのだ。という目的ないしゴールを定めて、そこに向かって取り組むという姿勢が重要ということだ。
彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず
とは、孫子の言葉だが、これはまさに学習にも通じる。学習すべき相手を知り、また自分自身の現在の理解度、何を学びたいのかなどを知ることが、真の学習には必須といえる。
ではまた次回も、よろしくお願いします。
※トップフォトは、ぱくたそさまを利用しています。
ぱくたそ(www.pakutaso.com)
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