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SSまとめ

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過去に描いた作品をまとめました。 すぐに読める作品ばかりです。 もし少しお時間があって、少しでも興味を持ってくださったらタップして見てください。
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#小説

【SS】大掃除

【SS】大掃除

掃除の基本は、始めることだ。
誰しも掃除はやりたくないもので、進んでやろうとする人なんてほとんどいない。
だからとりあえず散らばったものを手に取って、戻す。

入れる場所を決めて、戻す。
決まった場所がなければ、作る。
箱を用意して、ラベリングして、新しい場所の完成。

ただ、どこにしまえばいいのかわからないものも出てくる。
もう多分使わないもの、でも捨ててしまうには惜しいと思ってしまうもの。

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【SS】封じ込めた香り

【SS】封じ込めた香り

 包丁を軽快にならす音がキッチンに響かせ、わけもなくキャベツのみじん切りをする。二人暮らしとはいえ、一玉買ってどうしようと言うのか。消費できるのか。最初は不揃いで下手くそだったみじん切りも、半玉を超えたあたりから、綺麗な細い線たちが生まれていく。
 ザクザクと刻んでいく音を聞いていると、不思議と心が落ち着いてくるのだ。佑介がみたらきっと「何週間分あるの?」と聞いてくる気がする。
 まあ、全てのおか

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【SS】あたりまえの音

【SS】あたりまえの音

 何気ないことだった。

 いつも物静かな彼に対して「もっと喋ってよ。私ばっか喋ってるじゃん」といってしまった。

 彼の好きなところがどこかと聞かれたら、「クールなところ」と答えたに違いないのに。自分の天邪鬼さに嫌気が差す。けど、大事なことを喋ってくれないのは確かにそうなのだ。そして、文句をいうのも大体私。別に、浮気をされているわけでも、無下にされているわけでもない。私の文句に対して言い返してこ

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【SS】酔っ払いピアノ

【SS】酔っ払いピアノ

都会の寂れたバーには開店当時からピアノが置いてあった。
昔は、夢を追うピアニストたちがたくさん演奏をしていたが、今では誰も弾くことがなくなり、調律もされていない。
そんな中、バーの店主が倒れ、店を閉めることになった。調律のされていない古いピアノなんて、誰も引き取ろうとは思わない。このまま処分されてしまうのだろう。みんながそう思った。
店が取り壊される前夜、誰もいない店に一人の男がゆらゆらと入ってき

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【SS】ナゼを飼う

【SS】ナゼを飼う

 一ヶ月前、突如としてうちにナゼがやってきた。何を言っているかわからないかもしれないが、ナゼがやってきたのだ。

 白くて丸い下膨れの顔に豆粒のような瞳、体には小さな手足がついていて見た目は可愛らしい。しかし、その愛くるしい見た目に反してこの生き物は、とても残酷だ。
 何かにつけて、私に「なぜ?」と聞いてくる。「なぜ?」に答えて、その小さな白い体が発光すれば、ナゼが納得をした証。
 けれど、ナゼが

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