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オーラス穴熊戦法実践編

研究代表者 nisi
研究協力者 とつげき東北、みーにん

1.はじめに

前回の記事で(オーラス穴熊戦法時、ラス目にまくられる確率)、オーラスに穴熊戦法(アガリ、聴牌流局、放銃がない)を取ったときに、ラス目にまくられる確率を調べました。そこで読者の皆さんが気になるのは、具体的にどういう点棒状況、配牌なら穴熊戦法をとるべきなのかというところだと思います。そこで、今回はいくつかの点棒状況、配牌の種類ごとに自分でアガリを目指すべきか、穴熊戦法を取るべきか、どちらが有利かを概算で調べてみました。

前回の記事は購入必須ではないですが、そちらも併せて読むと理解度がより深まるかもしれません。

2.例題

すべて南4局0本場、自分南家とする。

点棒状況1-1(ラス目と600点差、アガリ時2着可能性なし
南家12600点、西家12000点、北家35400点、東家40000点
点棒状況1-2(ラス目と2600点差、アガリ時2着可能性なし)
南家13800点、西家11200点、北家36000点、東家39000点
点棒状況1-3(ラス目と3600点差、アガリ時2着可能性なし)
南家13800点、西家10200点、北家36000点、東家40000点
点棒状況1-4(ラス目と4600点差、アガリ時2着可能性なし)
南家13800点、西家9200点、北家36000点、東家41000点
点棒状況1-5(ラス目と7600点差、アガリ時2着可能性なし)
南家13800点、西家6200点、北家37000点、東家43000点
点棒状況1-6(ラス目と9600点差、アガリ時2着可能性なし)
南家13800点、西家4200点、北家38000点、東家44000点
点棒状況1-7(ラス目と11600点差、アガリ時2着可能性なし)
南家13800点、西家2200点、北家39000点、東家45000点
点棒状況1-8(ラス目と14600点差、アガリ時2着可能性なし)
南家16800点、西家2200点、北家36000点、東家45000点

点棒状況2-1(ラス目と600点差アガリ時2着可能性3割
南家19300点、西家18700点、北家28500点、東家33500点
点棒状況2-2(ラス目と2600点差、アガリ時2着可能性3割)
南家19800点、西家17200点、北家29000点、東家34000点
点棒状況2-3(ラス目と3600点差、アガリ時2着可能性3割)
南家19800点、西家16200点、北家29000点、東家35000点
点棒状況2-4(ラス目と4600点差、アガリ時2着可能性3割)
南家20300点、西家15700点、北家29000点、東家35000点
点棒状況2-5(ラス目と7600点差、アガリ時2着可能性3割)
南家20300点、西家12700点、北家30000点、東家37000点
点棒状況2-6(ラス目と9600点差、アガリ時2着可能性3割)
南家20800点、西家11200点、北家30500点、東家37500点
点棒状況2-7(ラス目と11600点差、アガリ時2着可能性3割)
南家21300点、西家9700点、北家31000点、東家38000点
点棒状況2-8(ラス目と14600点差、アガリ時2着可能性3割)
南家22300点、西家7700点、北家31000点、東家39000点

配牌1

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配牌2

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配牌3

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ドラは9m。(アガリ時3割程度の確率で満貫ツモになる想定。)

3.普通に手作り時と穴熊戦法時の概算の方法・仮定など

このような計算シートをもとに、普通に手作り時穴熊戦法時の概算をします。

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上段のオーラス開始時持ち点2.例題に示した点棒状況を入力します。

左下にあるのが、オーラスの局結果について、ある事象が起こる確率とその場合の段位pt期待値(1位+90pt、2位+45pt、3位0pt、4位-135pt)が計算されるようになっています。
局結果については「自分アガリ・聴牌流局」「トップ目へ放銃」「2着目へ放銃」「ラス目へ放銃」「その他」の5つの事象に分けました。

まず、普通に手作りした場合のpt期待値から見ていきます。

「自分アガリ・聴牌流局」の確率は右下の「アガリ・聴牌流局率」(赤色)自分で入力する項目です。(仮に今回は20%の確率でアガリや聴牌流局が取れる配牌であると仮定する。)
「自分アガリ・聴牌流局」時のpt期待値「アガリ・聴牌流局時2着率」入力項目)によって計算(45pt×(アガリ・聴牌流局時2着率))されます。

「トップ目へ放銃」確率は後述する表7-1オーラスラス目子上がり方(親トップ目・ラス目との点差1000点未満)の値をベースに「アガリ・聴牌流局率」の入力値によって調節されます。
「トップ目へ放銃」時のpt期待値は右の「トップ目へ放銃時ラス率」(-135pt×(トップ目へ放銃時ラス率))から計算します。「トップ目へ放銃時ラス率」は表7-2オーラストップ目親時トップ目ロン和了時打点分布から算出します。

「2着目へ放銃」については「トップ目へ放銃」とほぼ同じです。「2着目へ放銃時ラス率」に使うのは表7-3オーラストップ目親時2着目ロン和了時打点分布です。

「ラス目へ放銃」の確率・pt期待値は「トップ目へ放銃」のときと同じ算出方法です。「ラス目へ放銃時ラス率」については、表7-4オーラスラス目子上がり時逆転率をベースにします。ただ、このパラメータは脇からの出アガリ・ツモアガリ・3着目からの直撃についてすべて込みのデータになっているので、そのまま直撃で縮まるラス目との点差に当てはめることはできません。今回は新しく牌譜解析するのを手抜きして既存の表7-4を使いますが、当てはめる点差は、直撃で縮まる点差と被ツモで縮まる点差がだいたい1.5倍くらい違うとてきとうに決めて、(ラス目との点差)×3分の2程度の値にしておきました。例えば、点棒状況1-3(ラス目と3600点差)は3600点×3分の2=2400点ということで「~3000点」の逆転率95.2%を適用します。このへんはかなりどんぶり勘定です。

「その他」は自分がアガリ・聴牌流局・放銃以外の結果になった場合で、ここに前回牌譜解析で出した、穴熊戦法時ラス落ち率を使います。「その他」のpt期待値=穴熊戦法時pt期待値黄緑色で塗っている)は「その他時ラス率」(-135pt×(その他時ラス率))から計算します。

以上で、普通に手作りしたときの「自分アガリ・聴牌流局」「トップ目へ放銃」「2着目へ放銃」「ラス目へ放銃」「その他」までの各確率と条件付pt期待値が出たので、後は条件付期待値の公式(それぞれの事象ごとに(確率)×(条件付pt期待値)して足し合わせる)に当てはめて全体のpt期待値を計算したのがオレンジ色で塗ったマス目です。

これで、普通に手作りしたとき(オレンジ)穴熊戦法したとき(黄緑)pt期待値を比較することで、どちらを選んだ方がよいかがわかるわけです。

点棒状況1-1(ラス目と600点差、アガリ時2着可能性なし)で、仮に「アガリ・聴牌流局率」が20.0%程度見込める配牌なら、普通に手作りしたときが-48.8pt、穴熊戦法したときが-41.7ptになるので、安牌をため込んで穴熊戦法する方が有利という判断ができます。ラス目にアガられたらまくられるので、自力で決めに行きたくなりますが、ラス目への放銃だけでなく、脇への放銃でもアウトの状況なので、トップ目か2着目にアガってもらうのに賭けてひたすら降りるのがベストということで、なかなか衝撃的な結論です。

点棒状況(「オーラス開始時持ち点」と「アガリ・聴牌流局時2着率」)を固定して「アガリ・聴牌流局率」のみを動かすと、穴熊戦法のpt期待値は一定なのに対し、「アガリ・聴牌流局率」が大きくなるにしたがって、普通に手作りしたときのpt期待値も大きくなるので、「アガリ・聴牌流局率」がある段階で、普通に手作りしたときと穴熊戦法時のpt期待値が等しくなる点が存在します。イメージはこんな感じです。

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点棒状況ごとに、この分岐点となる「アガリ・聴牌流局率」を探すのが今回のメインテーマです。

4.2着可能性がない場合の穴熊戦法を取るための配牌アガリ・聴牌流局率分岐点

まずは点棒状況1-1~点棒状況1-8で、2着までが遠くてアガっても2着になる可能性がゼロの場合の配牌アガリ・聴牌流局率分岐点(以下、単に「分岐点」と書いた時は配牌アガリ・聴牌流局率分岐点のことを指すものとする。)を調べたのが下表のとおりです。

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