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「かげで休みをてらす店」- 喫茶こかげに込めた想い

このあいだ、1日限りの屋外喫茶店をやった。

喫茶「こかげ」。


小杉湯となり
という会員制シェアスペースの中庭を使わせてもらって、同じく小杉湯となりで出会った絵描きの塩谷ちゃんと、自分は珈琲、彼女はお茶をそれぞれだした。


デザインが本業のぼくと、絵が本業の塩谷ちゃん。

それらが活きるといいねと言って、「こかげでどう過ごしたいか」を擬音とイラストから選ぶ仕掛けをつくったり。


文字通り、こかげがここちよい中庭で、珈琲とお茶を楽しめる場所になった。店番をしていて、

「美味しい」
「心地いい」

と言ってくれたり、各々が会話に花を咲かせていたり、自分で言うのもなんだけれど、とっても素敵な空間になった。

2週間くらい経って、なんとなく感情が整理できてきた部分もあるので、喫茶「こかげ」に込めた想いを、ちょっとつらつらと書かせてもらおうかなと思う。


光のはなし、陰のはなし

最近、光を眩しく感じることが多い。
というのは、別に日光が眩しいという話ではなくて、いわゆる人間の陽の部分、例えば成功体験とか、私はこんなことができます!こうであるべき!とか、最近のぼくはそういったものに目がくらんでしまいがちだ。

まあそれは一種の妬み、僻みともとれて、つくづくダセえぞ〜…と自分に言い聞かせたりもするのだけれど、日に日に耐性はなくなっていくばかり。

ものは捉えようなので、ぼくの中にもきっとそういう陽の部分はあるのだろうし、そもそも人から見たらキラッキラしすぎててそれこそ「眩しい!」と思われているかもしれない(書いていて「無さそうだな〜〜」と思っていたらなんか凹んできた)。

とにかく、そういったキラキラした(しすぎた)光を前にすると目がくらんでしまう。

ただ、ものの光(これは物理的な方)を見ているとわかるけれど、光には必ず陰が落ちている。

人のこころもそうなのかもしれない。

キラキラしたあの人は、ひと目を浴びないところではどうなのだろう、なにをしているのだろう。被害妄想のようであれだけれど、どんなことを考えて、なにに喜び、なにに悲しみ、なにに怒るのだろう。

人の
光と陰。
表と裏。
パブリックとプライベート。


もしそういった対極関係が人のこころにも常にあるのだとしたら、陰を探すことで、その人の光を見つけたすことができるかもしれないし、誰かの陰が誰かの光になり得るかもしれない。

なんとなくそんなことを考えていた矢先、塩谷ちゃんに「お茶を出すイベントがやりたいのだけれど、一緒にどう?」と誘われた。

二つ返事で快諾して、「かげで休みをてらす店」をやる準備をはじめていった。

陰からうまれた2冊の本

「かげで休みをてらす店」がそうである理由のひとつに、店主ふたりが自費でつくった2冊の本がある。

ひとつめは、ぼくが写真と文と絵とデザイン、編集をひとりで担当してつくった雑誌「ひとりごと」。

「ひとりよがりなひとりごと」をコンセプトに、ちょっと声を大にして言いづらいようなことを丁寧に編集して、本という「個室」で話す雑誌。
第0号として「流されることってみんなが言うほど、わるいことなのかなあ」というテーマでエッセイや散文、詩、漫画をまとめた。

ふたつめは、塩谷ちゃんが体調を崩してしまっていたときに使命感に駆られてひたすらに書き留めていた「4コマ漫画」を編集し、描き下ろしを加えたZINE「あ、これだめなやつだ」。


いうなればこの2冊は、ふたりの陰からうまれた本。

これを、売りたい。
できれば、顔が見える状態で、手渡しで。

もしかしたら、ぼくらの陰からうまれた本が誰かに渡って、誰かの光に、回り回って励ましたり…?

喫茶「こかげ」は、陰からうまれた2冊の本を売るための、というより「かげで休みを照らす」ための言い訳のようなものだったのかもしれない。


ぼくらにとっての「珈琲とお茶」

冒頭に述べたように、ぼくらの本業はデザイナーと絵描きだ。

だから、もちろん「好きこそものの上手なれ」で、お互いにちゃんと深めて、人に振る舞えるレベルのものになってきたけれど、言ってしまえば、珈琲とお茶は「趣味」である。

でもそれが良かった気がする。

日曜大工ならぬ「日曜喫茶」。
本業が光とするならば、日曜喫茶は陰の顔。

肩肘張らずにできたというのはもちろんだけれど、なにより、本業でない部分の「顔」で、人と会話して、受け入れてもらえた感覚があった。

ぼくはなんだかそれにすごく救われた。
もしかしたら店主であるぼくら自身が、かげで休みをてらされていたのかもなあ。


またいつか、かげで休みをてらしに行きます!

世間の状況も状況なので、なかなかすぐに「よし2回目やるぞー!」となれない部分もありますが、また必ず、どこかで、できたらいいなと思っています。

その時はぜひ、またいらしてくださいな。

そして塩谷ちゃん!一緒にやってくれて本当にありがとう。

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