うつ病と学習性無力感~逃げられるのに逃げない心理~
今回は、セリグマンによる「学習性無力感」について少しだけ書いてみます。
先ず、犬を柵の中に入れます。
その柵の床は、電撃が発生する仕組みになっています。
電撃を入れたら犬は当然痛がります。
なので犬は、電撃が発生したら、予め学習しておいた逃避行動、若しくは回避行動を行い、柵を飛び越え電撃から逃げます。
これが通常の流れです。
他方、同様に電撃が発生する柵の中に別の犬を入れます。
しかし相違点は、この犬は逃避行動、若しくは回避行動ができないようにするという点です。
つまり、電撃が発生しても逃げられないようにするのです。
逃避も回避もできないようにします。
その状態で、電撃を発生させることを繰り返します。
そしてそのようにした犬を、今度は、容易に逃避や回避が可能な状態の柵に入れてみます。
その状況で電撃を発生させます。
そうすると、その犬は、逃避も回避もせずに、電撃を受け続けるのです。
容易に逃避、若しくは回避が可能な状況にあるにもかかわらず、横たわってただ電撃を受け続けます。
このように、逃避も回避もできない状況を経験し続けた犬は、容易に逃避や回避ができる状況になっても、それを行わず、何もできずにただ電撃を受け続けるのです。
これを、セリグマンは「学習性無力感」と呼びました。
学習性無力感という理論は、うつ病のシステムに通じるものとして、盛んに研究されました。
うつ病の患者も、何らかの逃げられない、または、成功できないという体験を学習してしまったが故に、解決可能な状況になっても、学習性無力感の状態に陥っており、その状況から逃避も回避もしなくなる、と考えることができます。
このような学習性無力感から脱出するためには、逃避行動や回避行動が可能であるということを新たに学習する必要があります。
認知の再体系化が必要になってきます。
そのような新たな学習を促すために、認知行動療法は効果的だと考えられます。
実際、認知行動療法は、うつ病の改善に対して効果的であることが確認されています。
ということで、ザッとまとめてみました。
うつ病は、薬物療法と認知行動療法の併用で大きく改善されることが確認されていますので、抑うつ状態になってしまい困っておられる方は、認知行動療法を試されることをお勧めします。
それでは一旦この辺で!