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03.28

旅立つ"上司"へ

上司がこの4月に異動する。
隣の市にあるグループ会社への出向になるため、ぼくのいる会社へ戻ってくるのはおそらく2.3年後になるだろうとのことだ。
来月から親しい上司が近くにいなくなる。
どら焼きはじめ、他愛もないぼくの相談に乗ってくれたあの上司はこの会社からいなくなる。

転職で入ってきたぼくに対して一から仕事を教えてくれた"上司"。
いつも仕事で立ち止まることがあるたびに的確なアドバイスをくれた"上司"。
他愛もない相談をしてこれも迷惑をかけてしまったであろう"上司"。

ここまで書いてはじめて、ぼくがいかに上司に対して迷惑をかけてきたのかをひしひしと思い知る。

はたしてぼくは"上司"にとってどんな人にうつっていたのか。
はたしてぼくは"上司"のなにか小さな支えになることができていたのか。

そんなことを考えたとき、
「迷惑をかけるだけかけてなにもせず見送るのはダメだよな」
そう思った。

そしていてもたってもいられず、会社から退勤するやいなや上司に贈るプレゼントを買いに東急ハンズへやってきていた。
ここで上司に贈るプレゼントを買う。
それもぼくにしか贈れないプレゼントをだ。

実はもうすでに贈るプレゼントというはぼくのなかではもう決めていた。
それは"クルトガのシャープペンシル"だ。

上司が筆記用具に特に思い入れがあるというわけでは決してない。
ではなぜ、"クルトガのシャープペンシル"なのか。
それはぼくに上司の異動が知らされる前に、ぼくが上司へ

「クルトガのシャープペンシル買ったんですけど、すっごく使いやすいですよ。おすすめです。」

と自慢したからだ。
なぜ自慢してしまったのかは覚えていない。
そのときの反応は、

「お、おう。」

だったことは覚えている。

そのあと、
「どうしてみどりのクルトガにしたの?」
と聞かれ、
「みどりが好きだからです。」
とドヤ顔で返したことも小声で報告しておきたい。

ぼくにしか贈れないもの。
値段に変えられないぼくにしか贈れないようなもの、考えつかないものを考えたときにぼくのあたまに出てきたのがまずこの"クルトガのシャープペンシル"だったのだ。
決しておそろいの筆記用具をすすめたかったから選んだというわけではない。
というのもシャープペンシルは仕事でも日常でも使う場面はたくさんある。
だから、ぼくはこの"クルトガのシャープペンシル"にこれから新天地で頑張る上司の支えになってほしいという考えというか願望にいたったとき、すごく贈るプレゼントとしてはピッタリだと思ったのだ。

値段なんか関係ない。
いままでの他愛もない会話をヒントにぼくが考え抜いたぼくだけが贈ることができるプレゼント。

"クルトガのシャープペンシル"

はたして受け取った上司はどう思うだろうか。
喜んでくれるだろうか。

気になって夜も眠れないと思ったけれど、しっかりぐっすり睡眠はとれる気がする。

というのもまた明日上司に会い、いつものように話すことができるからだ。
4月の異動までまだ3日ある。
どんなことを話そうか。
どんなことを教えてもらおうか。
そんなことを考えると不思議と明日が待ち遠しくなる。

すると、そうやってまた明日が楽しみになる。
しんみりなりかけていたぼくにとってはいまはこんな感じでいいと思える。
また明日を迎えることができる。
また明日上司と会える。

すごく単純。
でも、それだけでいい。

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