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03.02

朝、玄関のドアを開けてマンションから外を眺める。地面が濡れている。おばちゃんが2人傘を刺して話している。あぁ、雨が降っているんだなと思い、傘を取りに戻ってエレベーターを降りていよいよ外に出る。雨は降っていなかった。おそらく止んだんだろう。まぁ、空もなかなか曇ってるし、今更傘を置きに戻るのも面倒だからそのまま持って行くことにした。そこから会社に着くまでまったく雨は降ってくれなかった。取りに帰り損じゃないか。そんなことを思って小さく後悔する。勤務中もずっと雨は降ってくれなかった。雨を待ち侘びていたのかと聞かれるとそうでもない。傘を持ってきてよかった。と優越感に浸りたかったのかもしれない。おそらくそうだ。そしていよいよ帰る準備をはじめた時、すでに退社された社員さんが会社に戻ってきて一言。「雨が降ってきましたよ。」おもわず、こころの中で小さく歓喜する。やっぱり傘持ってきてよかった。そう思った。そして明日会議に使う資料を事前に準備しておこうと思い立ち、すこしだけ帰る時間が遅くなったけど、朝、小さな後悔とともに傘立てにさしたぼくの傘を手に取り、雨が降っているという期待とともにに外に出てみる。雨は、降っていなかった。



どら焼き食べたい

昨日からどら焼きが気になっていた。そんなことだから今日の帰りは絶対にどら焼きを買って帰ろう。そうこころに決めていた。そうと決まれば、じぶんが食べたいどら焼きを決めなくちゃ。というどこからか湧いて出た使命感から”どら焼き”に関する情報収集をぬかりなく行った。そういう謎の使命感に支配されてしまうことがぼくにはよくあるけど、とくに困ったことにはなったことはないのであまり気にしていない。

まずはGoogle先生に聞いてみる。そうすると、いろんな種類のどら焼きがでてくることでてくること。こんなに今はどら焼きにバリエーションがあるのかと少し驚いた。なかには"いちごショートどら焼き"なるものがあった。(気がする。)もう、それは果たしてどら焼きなんだろうか?と強く疑問を覚えた。そして、その数々のラインナップからおそらくこれかなと思うどら焼きに出会えうことができた。それは、"抹茶のどら焼き"だ。抹茶とどら焼き。どちらも日本の"和"の代表ともいえるものだ。日本を背負っているすごい”どら焼き”だ。だからおそらく今日の”どら焼き”はこれで間違いないだろう。いや、待てよ。こころのなかでもう1人のじぶんがささやく。ここはシンプルに完成された"どら焼き"そのままを味わうべきじゃない?いや、全くその通りだ。確かに、シンプルイズベストという言葉があるように、単純な”どら焼き”こそが最も完成されてて、唯一無二の至宝だ。そうやっていつものぼくならもうひとりの自分に流されてシンプルな"どら焼き"を買っていたにちがいない。ただ、今のぼくはいままでのぼくとは違って、胸に抱いた大きな決意があった。それは"変わり種をぜひ食べてみたい"だ。どら焼きのその先を知りたい。味わいたい。シンプルなどら焼きが挑んだ挑戦をこの舌で感じてみたい。そんなことをあたまのなかで考えていたとき、もうすでにぼくは家の近くのローソンの前にいた。



あらゆる誘惑

ローソンに入ったとたんに、おそらく買った”からあげくん”を持ってでていく老夫婦の嬉しそうな笑顔にこころ奪われそうになった。でも、ここは意識を強く持ちなんとかこらえる。危ない。危ない。そしていよいよ目当てだった"うちカフェ"に並ぶどら焼き一行とご対面する。だが、ない。”抹茶どら焼き”がない。ローソンまで来たらあるかと思っていたけど、そんなに甘い(どら焼きだけに。これはうまい。)世界ではないことをひしひしと思い知らされる。そしてまたじぶんに対しても甘かった(これもうまい。)ことを小さく反省する。じゃあ、ど、どうする?北海道産の"バターどら焼き"か?それとも"あんこ&ホイップ どらもっち"か?バターとあんこの相性はすでに”あんバター”で保証されていることはすでに経験済みだから知っている。知っているんだ。じゃあ、あんことホイップはどうだ?もうすでにあんことホイップっていう時点で間違いなくあう。それにどら焼きの生地がもっちもちだ。”もち”表記じゃなくて、”もっち”っていうところも地味にポイント高い。一口ほおばるだけで、もうもっちもちで甘々なんだろうな。そんなことだから、以外にもあっさり今日のどら焼きは”あんこ&ホイップ どらもっち”に決まった。歓喜する気持ちを押し殺し、あくまで平然を装いつつ”どら焼き”を抱えてレジに並ぶ。すでにお会計されている方が一人いた。結構かごいっぱいだからおそらくあと、2、3分はかかるだろうな。そんなことを思いながらふと”肉まん”という言葉が目に入る。ふっくらホカホカで美味しそうだな。ダメだ!ここまできて、さすがに”肉まん”はない!ふとレジ前のお買い得コーナーが目に入る。”バウムクーヘン”だ。あれ、すっごく美味しいんだよな。「お次のお客様どうぞ。」店員さんに呼ばれる。危ない、危ない。そんなことで、ついに念願の”あんこ&ホイップ どらもっち”を手に入れることができた。あらゆる誘惑に勝利できたじぶんを褒めたたえたい。

そうやって、ローソンから小さくスキップして帰った。早く食べたいのだ。

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