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火照る身体にレイ・チャールズ
日本文化、特にむかしの日本文学が大好きだという少々変わったスペイン人に出会った。夏目漱石、森鴎外の名を嬉しそうに口にする。芥川龍之介や太宰治をどう思う?と聞くと、芥川はいいが、太宰よりは樋口一葉が好きだとの返答だった。さらに彼は俳句が好きだという。オリジナルの俳句も披露してくれた。わたしは俳句をよく知らない。が、スペインで日本語を学び、日本文学を学び、現在さらなる研究のために日本に暮らしているスペイン人が作ったその句にわたしは自然に心動かされた。
変な日だ。
ひるまはずっと眠かった。あれこれと考えるが、考えはまとまらず、ただ眠い。なら寝ましょうとベッドに横になるが、いざ眠ろうとすると妙に身体が火照る。熱い。まるで恋をしていたころのように身体がどうしようもなく火照るのだ。更年期?いや更年期などもう越えている。
連想ゲームのように古い恋を頭に並べた。記憶はタロットのカードに似ている。場面を構成する色やかたちのひとつひとつが意味を含む。
「好き」をあらわすのは何色か?
「嫌い」を示すのはどんなかたちか?
「好意」が「嫌悪」に変わる残酷な瞬間、どんな匂いがするだろう?
男の「視線」が身体をはうとき、女の身体は意志と反して勝手に「反応」する。刹那にはどんな背景が似合う?
群れなす黒い椰子の樹。
教会。
つながれた牛。
誰を想って生きてきたか。誰を慕って生きてきたか。
忘れてしまった。あるいは捨てた。
そうではなくて心のどこかで昔を辿っているのか。
砂漠を移動するキャラバンのようにぐらぐらと心は揺れるが、ふと一息つけば想いは指と指のあいだをすりぬけて、どこかへと崩れ去る。
恋はいっときのアバンチュール、けれどその後の人生を彩る。
暗闇には音楽が似合う。
Georgia On My Mind
中盤の歌詞を少しだけ書く。
Other arms reach out to me
Other eyes smile tenderly
Still in peaceful dreams I see
The road leads back to you
I said Georgia
Oh Georgia, no peace I find
Just an old sweet song
Keeps Georgia on my mind (Georgia on my mind)
ほかの腕がわたしに届き
ほかの瞳がわたしに優しく微笑む。
けれど、わたしはまだ心穏やかな夢の中。
道があなたへとわたしを引き戻す。
ジョージア。
ジョージア、わたしはまだやすらぎを見つけてはいない。
懐かしの甘い歌だけが、
わたしの心にふるさとをもたらす。
例によっててきとうに訳した。
むかし。レイ・チャールズのこの歌を艶っぽく歌ってくれた女性の先輩がいた。白い顔と巻いた髪。うすい腰。ずいぶん憧れた。
きみは何に憧れる?
きみは何が欲しい?
あいかわらず身体が火照っている。
冷たいビールを一気に飲んでみた。
Eskerrik asko
Gabon
ありがとう
おやすみなさい
おぼえたてのバスク語で今夜は閉じる。
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