ケミカルリサイクルの可能性と課題とは?廃棄物から資源を再生する技術〈サステナ学習帳#96〉
ケミカルリサイクルは、プラスチックやその他の廃棄物を化学的に分解し、原料として再利用する技術である。従来のマテリアルリサイクルが物理的な再利用に焦点を当てているのに対し、ケミカルリサイクルは分子レベルでの再生を可能にする。この技術は、品質が低下しにくいという利点があり、特に複雑な廃棄物に適用できる点で注目されている。循環型経済の実現に向けた重要なステップとして、今後の展開が期待されており、本日はケミカルリサイクルについて確認したい。
【ケミカルリサイクルのメリット】
ケミカルリサイクルの最大の魅力は、使用済みプラスチックを元の原料に戻せる点だ。これにより、新たな石油資源を使用せずにプラスチック製品を生産できる。特に、従来のリサイクルが難しかった混合プラスチックや汚染された廃棄物も再利用できる可能性がある。また、処理後の素材は品質が保たれるため、高度な製品にも利用可能だ。これにより、リサイクルの価値が大幅に向上する。
【具体例:国内外の取り組み】
1. 日本の事例
JGCホールディングス
使用済みのポリエステル製品を原料となるモノマーに化学分解し、再びポリエステルとして再生する技術を開発している。このプロセスは、汚れた製品や異なる素材との混合にも対応できる。
カネカ
生分解性プラスチックを活用し、廃棄物を化学的に分解して肥料やバイオ原料として再利用するシステムを研究している。この取り組みは、農業分野への応用を目指している。
2. 海外の事例
BASF(ドイツ)
「ChemCycling」プロジェクトでは、使用済みプラスチックを熱分解し、ナフサ(石油化学製品の原料)に変換する。このナフサは、新しいプラスチック製品の原料として利用されている。
Eastman Chemical(アメリカ)
廃棄物プラスチックを分解し、高品質な原材料であるポリエステル原料や特殊化学品を再生している。これにより、衣料品や包装材など幅広い製品に再利用される。
【ケミカルリサイクルの課題】
ケミカルリサイクルは期待される一方で、高コスト構造が普及の妨げとなっている。また、化学分解プロセスはエネルギー消費が多いため、環境負荷を完全に排除することは難しい。さらに、廃棄物の分別が不十分だとリサイクル効率が低下する問題もある。これらの課題を克服するためには、技術革新だけでなく、収集インフラや政策支援の整備が必要だ。
【まとめ】
ケミカルリサイクルは、廃棄物削減と資源循環を実現するための革新的な技術だ。これまで再利用が難しかった廃棄物を新たな原料として再生できる可能性は、環境負荷の低減に大きく寄与する。技術的な課題はあるものの、国内外の事例が示す通り、その可能性は広がっている。持続可能な社会を目指す上で、ケミカルリサイクルは重要な役割を果たす技術である。