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旅の話し

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旅のエッセイを載せます。
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2020年1月の記事一覧

夕暮れ時

夕暮れ時

仕事帰り、旅人、お坊さん、どの街にも人の数だけの物語が渦巻いている。
まるで電柱にかかる無数の電線のように。
ポツンと浮かんだ太陽は、音もなく優しくこの混沌とした世界を包んでいた。

写真を撮る

写真を撮る

写真とは、記録的側面もあるし芸術的側面も持ち合わせている。
その一瞬を切り取ることもできるし、何か被写体を設けて演出をすることもある。

僕は写真を旅先で心動かされた瞬間にしかやらない。
目新しい世界をどう自分が捉えているか、客観的に見れる。
思いがけずふらふらとたどり着いた、名もしれぬ街で一枚のシャッターを切る。
それだけなのにその時の僕の姿や被写体との距離感が写り込んでしまうのだから、不思議

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野生の感覚

川から上がり、冷えた身体を温泉で温めた。

外に出ると日は傾き、柔らかな空気が藤里の町全体に漂っていた。

なんだかその時、熊に出会うんじゃないかと言う感覚に襲われ、一番前を走る車の助手席に座った。藤田(地元ガイド)さんの運転する車は軽快に、気持ちいい風を切った。どこまでも穏やかな午後だった。

きっとこの心地いい空気は、気候的な過ごしやすさだけではない。
白神の森の豊かさ、流れる水の凛々しさが

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「二十億光年の孤独」と共に

「二十億光年の孤独」と共に

 谷川俊太郎が、今のぼくと同じくらいの時に書いた「二十億光年の孤独」という本とともに
ニュージーランドを旅した。   

長旅の中で本当に孤独になったら、この本を開き星でも眺めようと思って持って行った。それには英訳も付いていて、コミュニケーションツールにもなるかも、という些細な下心と一緒に。

日本を発った飛行機は、夜の太平洋を渡り、星々の輝きは、これから未知の島へと向かう
ぼくをより一層孤りにさ

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