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藤沢周平の時代小説

この春先にFBで「7日間ブックカバーチャレンジ」というのが流行りましたが、私もバトンを受けました。
私が一番に挙げたのは、藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」でした。

時代小説は好きなジャンルですが、その中でも藤沢周平文学が好きです。
これは藤沢周平文学の中で一番好きな作品で、何度も読み返しただけでなく出張時にはいつも鞄の中に入れていました。いまはキンドルにダウンロードしています。飛行機の中、ホテルで就寝前に読むと高ぶった気持ちが静まります。

この本の魅力は、1つ1つのエピソードを縦糸で通したストーリー展開と、円熟した文章表現にあります。

ーーー残日録・・・。

この作品は、藩主の用人の職を退き隠居した武士の寂寥感漂う晩年を描いたのではなく、主人公の清左衛門は「残日録」の意味を「日残リテ昏ルル二未ダ遠シ」と語ります。
時に藩のために厄介なもめ事を解決し、時に農家の娘を助けたり、それも水戸黄門のような印籠をかざすこともなく。
藩の要職を勤め上げ、次なる生活に向かう姿は、人生100年時代の私たちに重なるようです。

文章は、ひらがなの使い方、句読点の位置など、一文一文が丁寧に推敲され、味わい深い表現になっています。
例えば、作中の次の一文(エピソード:梅雨ぐもり)。私が一番好きな箇所です。

そのとき頭の中に何か気がかりなものがうかびかけたのを感じたが、それはうかび上がるかにみえて途中で消えてしまった

誰しも経験したことがあることを、このように巧みに、そして柔らかく表現し、エピソード全体の雰囲気を引き立てています。

藤沢周平の故郷、架空の海坂藩のモデルの山形県鶴岡市をずっと訪ねたいと思っています。本を片手に市内を散策してみたいものです。

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