マガジンのカバー画像

子連れ海外旅行譚

6
これまでに親子で訪れた海外旅行の追憶
運営しているクリエイター

記事一覧

フランス移動中のお約束

フランス移動中のお約束

大混雑のパリ・リヨン駅を
スーツケースを抱えて疾走する

花のパリ、どころじゃない
次の列車に乗らないと
飛行機に間に合わない



発端はエールフランスのストライキ

滞在中のマルセイユから
パリへの国内線が飛ばず
それでいて
パリから東京は予定通りに飛ぶという

慌ててTGVでパリへ向かうが
これも定刻通りにいかないのが
フランスのお約束

TGVはうんざりするほどゆっくりと
終点のホームに

もっとみる
海の都の表玄関から

海の都の表玄関から

「ヴェネツィアという街は
空からでも、陸からでもなく
海から入ったときに
一番美しく見えるように設計されている」

塩野七生の「海の都の物語」で読んだ
そんな意味合いの一文が
長いあいだずっと胸に残っていた

4度目のヴェネツィア滞在で
やっとめぐってきた
海の玄関口から出入りするチャンス

地中海クルーズには
いくつもの航路があるが
ヴェネツィアから出港するルートは
かつての海の覇者の時代を追体

もっとみる
南国の午睡

南国の午睡

3月、年度末の仕事を納め
春休みに入った息子と一緒に
晴れやかな気持ちで旅路につく

この時期はたいてい
夫の休みが取れず
母子ふたりきりの旅になる

怒涛の年度末を終え
わたしも疲れ切っていて
行き先はリゾート地になりがちだ

観光はほとんどせず
自然あふれるホテルに籠もり
プールサイドでカクテル片手に
ゆったりと読書して過ごす…

しかし、そんな理想のホテルステイは
遊びたいさかりの男児によっ

もっとみる
美しく青きビーチ、ひとりじめの朝

美しく青きビーチ、ひとりじめの朝

真夏のイタリア
風光明媚な地中海の村で
時差ボケのせいで早くに目が覚め
退屈をもてあました息子と
ビーチを散歩する

まだ、デッキチェアが埋まる前の
ひそやかな朝

パッチワークみたいな
色とりどりに置かれたチェアには
ひとりの人影もなく

昼間の喧騒は嘘のように
波の音が静けさを引き立て
涼やかな風がわたしと息子の頬をなでる

あと1時間もすれば
地中海の強烈な日差しが顔を見せ
この美しいビーチ

もっとみる
ダニエリのマルコ君

ダニエリのマルコ君

夏の太陽がきらめくヴェネツィアの大運河、
カナル・グランデから
細い水路を一本曲がったところでボートを降り、
裏口のようにひっそりとした扉を一歩入ると、
そこには甘い溜息の出るような世界が広がっていた。

吹き抜けのアーチに、重厚な大理石の階段。
長く夢に見た、ホテル・ダニエリのロビーである。

わたしの旅の楽しみのひとつは、滞在する宿だ。
とりわけ歴史情緒あるホテルが好きで、
もとは貴族の館

もっとみる
ひとり旅と子連れ旅、そしてその先の旅のかたち

ひとり旅と子連れ旅、そしてその先の旅のかたち

好奇心の赴くままに、
好きなことを好きなときに好きなだけ、
わたしはいつだって自由なのだ!と豪語して、
とことん自分のペースで歩ける旅が好きだった。

学生時代はよく、ひとりで海外に行った。
専攻の関係もあって
ヨーロッパの美術館や博物館、
遺跡や建築をめぐり、
オペラやコンサートにかぶれて、
芸術家や文化人の足跡をたどるあまり、
花の都パリで一日墓地めぐりをしたこともあった。

ブランドもの

もっとみる