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もう財布はいらない?スマホ決済率2年で2倍。キャッシュレス決済利用動向

経済産業省はキャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指しています(※)。キャッシュレス決済が浸透する中、マクロミルのMHS(個人支出調査サービス)を使って2019年11月から2021年11月までの2年間において、その利用状況を性年代別・業態別・支払金額の規模の視点から比較調査をしました。調査結果から読み取れる傾向や課題点をデータアナリストである笠原聖大が解説します。
※経済産業省「キャッシュレスの現状及び意義2020年1月」より引用

1.決済手段別の利用回数シェア率、スマホ決済が2倍に!

初めに決済手段別の利用回数シェア率のトレンドを見ていきます。
現金による決済は、2019年11月時点では48%を占めていましたが、2021年11月時点では38%まで減少しています。一方でスマホ決済は、同期間において8%から2倍の16%へ増加しており、現金による決済からスマホ決済へと利用変更している人が急激に増加しています。


決済手段別の利用回数シェア率

2.決済回数は、全ての性別・年代で現金決済が減少、スマホ決済が増加。クレジットカード決済は20代男性のみ減少。

つづいて、性年代別に決済利用回数シェア率を見ていきます。
全性年代では現金による決済が減少し、スマホ決済が4%程増加しています。また、クレジットカード決済では20代男性を除き全性年代において増加しています。特筆すべきは、男性20代以下だけはクレジットカードの利用シェア率が1.3%減少している点で、その要因として、財布を持たずスマホだけをもって外出する人が増えてきたことが考えられます。

性年代別の決済手段回数シェア率のまとめ

3.業態別で見るとコンビニでスマホ決済の需要が高まる

では、実際にどのような場所でスマホ決済が利用されているのでしょうか。業態別の利用の変化について、決済回数の登録が多かった上位5業態(スーパー、コンビニ、飲食店、ドラッグストア、自動販売機)に着目し、決済手段別の利用の変化を見ていきます。
5つのすべての業態において、スマホ決済の利用が拡大しています。スマホ決済は、特にコンビニで35.0%と他の業種と比較すると高く、さらにその変化率も高い傾向です。コンビニ以外の業態ではスマホ決済は一定数はあるものの、まだ成長段階と言えそうです。現金による決済シェア率は、コンビニ以外の業態で高く、自動販売機では77%、飲食店でも約半数は現金が占めています。
さらに、スーパーマーケットでの決済手段の回数シェア率に着目すると、スマホ決済は2.4%微増しているものの10%にも及んでおらず、スーパーマーケットでのスマホ決済手段は発展途上の段階にあるようです。

業態別の決済手段回数シェア率のまとめ

4.スマホ決済は少額決済ほど利用回数が高い

つづいて支払い金額の規模別で、決済手段の利用回数シェア率を見ていきます。
スマホ決済は、1千円未満で19.3%、1万円以上では2.0%と少額決済ほど利用回数率が大きいことがわかります。一方クレジットカードでは、5千円~1万円未満において41.8%と利用率が一番高い結果です。

支払金額別の決済手段回数シェア率のまとめ

スマホ決済は少額決済ほど利用回数が高くなっていますが、その要因はどのようなものが挙げられるでしょうか。
1つ目は、意識面において、高額をスマホ決済のアプリにチャージすることへの利用者の抵抗感や不安が考えられます。2つ目は、決済システム面において、クレジットカードのように後払いや分割払いができないために少額決済時に選択されていることが考えられます。スマホ決済のさらなる拡大には、スマホ決済利用者の意識面と決済システム面の要因を解決することが必要となりそうです。

5.まとめ

今回の調査のまとめから、今後のキャッシュレス決済の利用拡大について考察します。

  • キャッシュレス決済手段別の利用回数シェア率は、スマホ決済が前年の2倍に成長

  • 性年代別で比較すると、全体的に現金による決済が減少し、スマホ決済が増加している傾向。特に20代男性はクレジットカード決済利用回数シェア率が他性年代よりも低い

  • 業態と支払い金額の規模を比較すると、コンビニで且つ少額決済時にスマホ決済の利用シェア率が高い。スーパー・ドラッグストア・飲食店等もスマホ決済の成長が見込める

  • 少額決済時にスマホ決済の需要が高い理由として、高額をスマホ決済のアプリにチャージすることへの利用者の抵抗感や不安という意識面と、クレジットカードのような後払いや分割払いができない決済システム面が要因として考えられる

以上の結果から、スマホ決済は利用場面や利用シーンにより成長余地がまだまだ残されていると考えられ、今後のキャッシュレス決済の拡大成長の鍵となりそうです。利用実態をさらに深堀りすることで、消費者の便利な生活へと還元されるようなビジネスチャンスに繋がります。マクロミルでは今回の調査をはじめ、ニーズの変化を先取りし「的確な消費者インサイト」を提供することでクライアントの総合マーケティング支援を行ってまいります。

■分析仕様
データソース:MHS(個人支出パネルデータ)
分析対象者:15歳~59歳(※50代の緩和として一部60代以上を含む)
※平成22年国勢調査/平成26年人口推計をもとにウェイトバック処理
分析期間:2019年11月~2021年11月
分析対象カテゴリ:全カテゴリ
分析エリア:全国
分析業態:全業態

・・・【付録】皆様のご参考情報としてご活用ください・・・

個人支出調査サービス「MHS」
MHS(Macromill Holistic Spending Panel Survey)は、家計簿アプリを活用し、個人の商品・サービス購買を取得対象としたデータです

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