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【役員インタビュー】アジア市場へ進出する企業のパートナーに/上席執行役員 小池直

「インターネットリサーチ企業」として2000年に創業したマクロミル。現在は「総合マーケティング支援企業」への変革を目指して新規事業を立ち上げながらチャレンジを続けています。
時代変化が激しい中、マクロミルの経営を担う役員たちは、どのような戦略、取り組みによって進化していこうと考えているのか。この役員インタビュー企画では、多様なバックグラウンドをもつ役員陣一人ひとりにインタビューを行い、それらを明らかにしていきます。

第2回は、上席執行役員でグローバルリサーチ本部長を務める小池直(こいけ・なお)にインタビュー。マクロミルの中期経営計画では、「総合マーケティング支援企業」への事業モデルの変革とともに、業界において「グローバル TOP10、及び、日本及びアジア No.1」を目指す方針を掲げています。グローバルリサーチ本部を率いる立場として、どのようにこれらを目指しているのか、広報の度會がお話を伺ってきました。

―最初に、小池さんのご経歴を教えてください。

私は、北海道大学大学院 農学研究科出身で、2005年にマクロミルへ新卒で入社しました。メーカー様の営業担当からスタートし、その後、営業部門やデータベース事業部門の本部長、運用部門の本部長を務めました。現在はマクロミルの上席執行役員でありグローバルリサーチ本部長として、海外リサーチ事業の責任者を務めるとともに、マクロミルグループの東南アジアを拠点にリサーチ事業を展開するマクロミル・サウスイーストアジア、及び、消費者の購買動向や各種意識調査のデータ収集・管理をするエムキューブの代表取締役社長を務めています。

また、マクロミルに根付き、継承していきたいカルチャーや活動を活性化する複数のプロジェクト委員長を務めています。社員がお互いを称え合う機会を提供する「称えてミル」や、ナレッジを共有したり吸収したりするためのイベント「わたしのしごと」などです。マクロミルの仙台オフィスを中心に取り組む、リサーチを活用した地域社会貢献活動も推進しています。

消費者インサイトを踏まえた提案が行えるパートナーに

―中期経営計画で掲げる「総合マーケティング支援企業」という言葉を、小池さんはどのように解釈されていますか。

既存のリサーチ領域での企業支援に留まらず、マーケティング全域に広げていく、というのがコアなメッセージであり、事業を変革していく中で様々な可能性があることを「総合」という言葉で表現していると捉えています。

マクロミルグループ全体で、リサーチ領域を超えてマーケティング全領域を支援できるような変革を進めていくことで、総合的に良い価値提供ができる会社へとつながっていくと考えています。

グローバルリサーチ事業においても、リサーチ領域に留まっていてはクライアントの期待に応えるレベルには届きません。調査をして結果を伝えるだけではなく、結果を踏まえてどうすべきか、というところまで支援して欲しいというニーズが高まっています。海外で実施する調査の場合は、さらに各国の文化や歴史の背景、生活者価値観などといった私たちが持つ知見を踏まえて、調査で収集したデータや情報を「消費者インサイト」に価値変換していくことが非常に重要です。その導きだしたインサイトから「その市場でどう進んで行くべきかアドバイスが欲しい」といったニーズが増えています。こうしたニーズに応えていくことが、「総合マーケティング支援企業」へとつながっていくと思います。

また、「総合マーケティング支援企業」というメッセージングは、自分たちの可能性を広げていく機会につながっていると思っています。マクロミルのコーポレートロゴのシンボル(図1)に込められた想いのように、様々な部門が四方に矢印を向けて前進し成長する。私たちの場合はグローバルリサーチ領域において体現すること、それが今後やっていくべきことです。

(図1)マクロミルのコーポレートロゴについて

―実際に体現されている事例はありますか?

例えば、中国において、ある企業と一緒に、テストマーケティング(試験販売)ができる仕組みを構築しています。中国でリサーチを行うだけでなく、実際に中国の生活者にクライアントの商材を利用してもらい、反応を確認できるといったものです。

こうした取り組みは、今後も展開したいと考えています。エコシステムを築いて、様々な企業のケイパビリティをつなぎ合わせた体制づくりも視野に入れながら、リサーチのその先の領域へと、マーケティング支援の幅を広げていく予定です。

 アジアの潜在的市場を開拓していきたい

―グローバルリサーチ領域における、マクロミルの強みは何でしょうか。

国内でネットリサーチ事業を拡大してきたこと自体が一番の強みだと思っています。システム、調査運用のナレッジやスキル、営業ノウハウといった“日本モデル”がアジア地域でどこまで通用するのか、今チャレンジしているところです。

日本で現在、定量調査を行う場合、スマートフォンやパソコンから回答するネットリサーチの手法が主流です。しかし、マクロミルが創業した2000年以前は、対面調査の手法がスタンダードで、多くの人手と時間が掛かっていました。私が入社した2005年当時、営業先の方から「ネットリサーチのデータを信じるなら、“占い”をした方が良い」と言われたこともあるくらい、信用されていなかったのです。その後、マクロミルがリーディングカンパニーとして日本で普及させていったことで、今となってはネットリサーチが当たり前の世の中になっています。

一方、中国やインドネシア、ベトナム、タイといったアジア地域での定量調査は、現在でもオフライン調査が主流です。その中でも少しずつネットリサーチが広がってきていますが、「ネットリサーチのデータは信用できない」といった不信感を抱く企業もいる一方で、新興系の調査会社が誕生するなど、過去の日本と同じような状況が今起きています。さらには、新型コロナも追い風となり、対面コミュニケーションが不要なネットリサーチのシェアが拡大しています。

各市場の顧客ニーズを把握した上で、日本での経験を活かした「アジアモデルのネットリサーチ」という、自分たちのビジネスモデル、バリューチェーンをどう構築していくのか、今まさにプランを組み立てています。今は主流ではないネットリサーチが信用できなくても、中長期では、より多くデータを素早く、高品質に取りたいと変化していくはずです。マクロミルが日本で普及させた手法を、アジア地域でどう適応させ、広げていけるのかがポイントになると思います。

―地域に適応させるとは、例えばどのようなことでしょうか。

例えば、東南アジアの多くの生活者の日用品の買い物は、以前はパパママストア(夫婦のみなどで経営する小規模な小売店)が主流でした。しかし、最近では大手ドラッグストアが続々と登場し、パパママストアからの置き換えが進んでいます。これもかつての日本と同じで、いずれ本格化し、マーケティングの機能を備え、マーケティングリサーチを活用していこうという流れがこの先起きていくと思います。マクロミルは日本市場において、これらが顕在化する前に、潜在的な市場を開拓してきましたが、東南アジアでも同じような存在になっていきたいですね

自社パネルは強み。アジアでのパネル構築と企業開拓をバランス良く推進

―マクロミル独自の強みは他にあるでしょうか。

自社で構築した消費者パネル(マクロミルモニタ)を保有していることです。日本の他に、マクロミルグループのエムブレインも韓国で消費者パネルを保有し、リサーチを実施できていることが強みになり成長を続けています。パネルを軸にした事業展開がグローバルでもポイントになっていくと思います。

―時代変化が速い東南アジアにおいて、消費者パネル開拓と現地企業の新規開拓を同時に拡大していくのでしょうか。

まさにそこが大きなテーマですね。
マクロミルモニタの皆さんは、アンケートを回答し、謝礼を受け取り、アンケート活動を継続してくださいます。しかし、アジア地域での消費者パネルの構築が進行し過ぎて、たくさんのモニターさんがいたとしても、クライアントの新規開拓が進まないと、回答いただくアンケートをモニターさんに届けることができません。パネル開拓と現地の企業開拓の両方をバランス良く進めていくことが重要です。これを踏まえ、現地企業との連携によるパネルネットワークも作り、必要に応じて他社のモニターさんに協力をいただきながら、自社でネットリサーチを完結できる仕組みを作っています。

とは言っても、やはり自社の消費者パネルデータの方が、個人情報の観点からもご提供いただけるデータの種類が多いため、マーケティングデータとしては価値が高いです。依頼し、許諾をいただければ、WebアクセスログやECサイトの購買ログデータなど様々なデータをご提供いただけます。今は、アンケートによる意識データを取るフェーズですが、将来的には自社パネルでまかなうことも視野に入れ、自社パネルの構築開始タイミングを見計らっているところです。

「東南アジアでのネットリサーチの波の到来を確信し、
パネルの強みを活かしていきたい」と意気込みを語る。

Act Now, Act Togetherの精神であらゆる壁を突破し、強固な組織へ

―今後の展望をお聞かせください。

社会全体で見ると、日本の人口が減少傾向のため、海外に進出しようという企業が増加しています。今後の人口増加や経済発展で注目すべき地域となれば、やはりアジアです。マクロミルのクライアント向けに行った調査では、今後、海外市場に進出を予定しており海外調査を実施したいという意向の増加が把握できています。つまり、アジア市場でのリサーチ需要が高まっていくということなので、私たちには追い風です。

グローバルリサーチのチームが、本部格になって4年が経ちましたが、当初20名くらいの小さな組織が今では100人に達する規模の組織になりました。『Be Your Marketing Brain』という本部ビジョンを掲げ、それに共感してくれる仲間を増やしながら、当初は提供できなかったサービスや知識やナレッジといった価値を提供できるようになりました。
先日、あるクライアントから、「マクロミルさん、3年前と比べてグローバル領域で本当に頼もしくなりましたね。色々な相談ができるようになりました。」と仰っていただけたことが非常に嬉しかったです。そんな第三者の評価を得られ、実績も積み重ねられていることから、海外リサーチ領域でも「総合マーケティング支援企業」へとパーセプションチェンジへの足掛かりができてきていると実感しました。グローバルリサーチチームのメンバーには、マクロミルの海外調査サービスを利用されていない企業に対して、私たちの強みやナレッジを伝え、パートナーとしての役目をしっかりと担っていこうと話しています。

まだ、マクロミルが進出してない国もありますし、進出している国においてシェアが低いということはシェアが取れる可能性があるということ。マクロミルという会社は、自分たちの勝ち筋を作って成長してきました。様々なことを改善し、困難や課題を人の力で突破もしながら、それを属人化せずに仕組化してきたからこそ、事業を拡大できました。マクロミルが掲げるValuesの1つ、『Act Now, Act Together』(図2)に込められたチームワークとコラボレーションの精神で、ノウハウやナレッジを惜しみなくシェアするカルチャーがあるからこそ、仕組化しやすい環境にあります。それを日本の国境を越えて、マクロミルグループの中国や韓国、東南アジアのメンバーや、台湾のパートナー企業の皆さんとどのように仕組みを作っていけるのかが、これから目指すことです。

(図2)Macromill Group Mission Vision Values

2020年、マクロミルの創立20周年の際に掲げた「Borderless(ボーダレス)」というスローガンの通りあらゆる壁を突破していきます。グローバルリサーチ本部としては、国境を越えて、さらに強いネットワークを作り、強い組織に成長します。それによって、クライアントに対し高い価値提供ができると考えています。

―小池さん、本日はありがとうございました。

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マクロミル 役員インタビュー企画


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