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共感のデザインを。デザイナーとしてmorning after cutting my hairで仕事をする想いとは?

私たちmorning after cutting my hair(以下、morning)は、「恋に落ちるくらい好きになった相手とお仕事をする」ことを大切にしています。
その恋を目に見えるデザインに変えるために、誰に、どんな情報を、どんな風に伝えたいのかを徹底的にこだわり、自身にとっても見た人にとっても「共感できるデザイン」を生み出す。morningでもデザインを手がける小浜愛香さんが、仕事をする上で大切にしたい姿勢や、デザインと社会課題について思うこと、社会に対する想いなどをうかがいました。

(執筆:西野日菜 / 編集:中西須瑞化)

小浜 愛香/Aika Kohama
20代前半にアパレル販売からほぼ独学でWebデザイナーへ。制作会社勤務、フリーランス、インハウスデザイナーと形態を変えながら約15年間活動した後、一度デザイナー職を離れ、米国NLP協会認定NLPコーチ資格取得、日本語教師養成講座420時間総合コースを修了。現在はデザイナー養成のメンターや講師をメインにカウンセラー、コーチとしても活動中。
今後はカウンセリングやコーチングを通じて、誰もがありのままの自分に自信を持って活躍できる社会作りのサポートをしながら、対人だけでなく美しい自然やそこにある命を大切にできる活動にも携わっていきたいと思っている。

誰もとりこぼさないデザインへの道筋

ーーmorningに入られてからちょうど1年くらいとお伺いしました。1年振り返ってみていかがですか?

あっという間でしたね。SOLITのWEBサイトを改修したり、Rethink Fashion Programのランディングページをつくったり、odekakeKAYU PACKAGEのリーフレットデザインにも関わらせていただきました。

(これまで携わったデザインの一部)

ーーお仕事のなかで印象的だったことってありますか?

SOLITのWEBサイトは、もともとは違う方が作られていて、それを私が改修することになったんです。SOLITの「誰もとりこぼさない」という理念をサイトの見やすさや操作性でも実現したくて、予算等のハードルと葛藤しています。

あと最近のお仕事で印象に残っているのは、KAYU PACKAGEのキービジュアルですかね。環境に配慮した使い捨ての木製容器を提案されている会社さんなんですが、今回商品をアップデートして木製容器の断面にあったささくれを無くしたということを伝える物を作りたいというご依頼でした。「ささくれがなくなった」ことだけを大々的に伝えると今までの印象が悪くなってしまうかもしれない、でも綺麗になったことはちゃんと伝えたい、と思って試行錯誤しながらデザインしました。

ーーこのデザインに至るまでにたくさん試行錯誤があったんですね。

最初は子どもがこの容器を使ってご飯を食べているところの写真を使ってみたりもしました。ターゲットを置くと分かりやすくはなりますが、他の世代が対象外みたいに思われてしまうこともあります。KAYU PACKAGEさんは世代でユーザーを絞っている訳ではないですし、環境問題は誰もが関係する課題なので、対象が限定されないようにといった配慮を考えた結果、今の抽象的なビジュアルになりました。

ーーターゲットを絞り込むことが大事と聞きますが、社会課題に絡めたPRの文脈ではあてはまらないのでしょうか?

たとえばお子さんをモデルに起用したキービジュアルにすると「子ども向け」「子どもにも安心」のようなイメージに繋がりやすいと思うんですが、今回の場合は裏を返すと「これまではささくれがあった」ことの伝達にもなってしまい、今までの容器は子どもが使うと危なかったのか、と悪いように解釈される可能性もなくはないと思います。
KAYU PACKAGE自体は木製であること・環境負荷が低い使い捨て容器であるということがメインの特徴なので、本来は子ども向け云々はアピールポイントではないですし、そういうイメージを入れることで本来の良い点が見えづらくなってしまうのはもったいないことです。
あとは、容器に料理を入れることも、その料理で地域感が出てしまうという意見が出たりしていました。KAYU PACKAGEさんは日本全国や海外でも展開されていたりするので、今回の場合はあまり限定的なイメージ固定はしない方がいいのかなと考えました。

ーーさまざまな葛藤があったんですね。デザインを話し合うときに意識されていることはあるんでしょうか。

やみくもにたくさんアイデアを出してもドツボにハマってしまうので、お互いの目指すデザインの真意を掴めるようなコミュニケーションをとりたいと思っています。
私は現状、あまりデザインのディレクションには入っていないのですが、お客様との齟齬が出ないようにするためにも直接言語化のお手伝いができるようになったほうが良いのかなと思い始めています。

ーー前職でもデザインをされていたそうですが、前職とmorningとでデザインをするときに違うと感じる点はありますか?

morningで働く10年ほど前からフリーランスをしており、直近3年くらいはアパレル会社のデザイナーをしていました。会社のメンバーが好きでチームとしてはとても楽しかったのですが、子ども服を大量に安く売ることが良しとされている部分には少し疑問に思っていました。
共感できないもののデザインをするのがしんどく感じたので、実はその会社を退職してからは「もうデザインから離れよう」と思っていました。そんなときに、たまたまnoteでmorningの存在を知り、「社会課題に配慮しながらデザインの力が活かせる仕事ならやってみたい」と思い、今に至ります。

自分を取り巻く世界をどう見るか

ーー先ほど、「大量消費に共感できなかった」というお話がありましたが、社会課題やソーシャルグッドのようなテーマには昔から関心があったんですか?

環境系とか自然、動物には昔から関心があります。あとは日本語教師の資格を取った時に外国人留学生の方と結構交流していたので、在日外国人の方々が生活する上での難しさも最近は意識するようになりました。
私の周りって、社会課題とかに関心を持っていない人ばかりだったんです。私の派手な見た目もあって、牛乳パックをスーパーにリサイクルに持っていっただけで意外って言われたりとかして、あまり共感しあえる人はいませんでした。環境問題とかの話をすると「偽善でしょ?」って言われたりして、あまり表立って言えたことはなかったです。
でも、子供の頃から動物の殺処分がすごい嫌だなぁとか思っていましたね。何かきっかけがあったわけではないんですけど、意識としてはずっとあったのかもしれません。

ーー在日外国人の方との交流の上で気づいた社会課題としては、たとえばどんなものがありましたか?

求人サイトには「外国人OK」と書かれていてもサイトでやさしい日本語が使われていなくて、働きたいけどなかなか応募できない、というケースも結構あるみたいです。
あとは、外国人の親をもつ子どもが日本語が話せなくて学校に馴染めなくて孤立してしまうとか、兄弟の面倒を見るために学校に行けないとか、そういう問題も目に見えないだけでたくさんあるのをどうにか解決できないかと考えたりしていました。

ーーそういった意識をデザイナーという職業に活かしたいという気持ちはいつから抱いたんでしょうか。

そもそもwebの世界は、ティム・バーナーズ=リーが掲げた「いつでもどこでも誰でも平等に情報にアクセスできる」という理念を基に作られているんです。私はこの理念に共感してwebのお仕事をしています。
そうしたこともあり、webのアクセシビリティと言って、視覚障害者の方でも音声読み上げ機能によって正しい情報にアクセスできたり、ルビをふることで子どもも読みやすいページにできたり、外国人の方々にも分かりやすいやさしい日本語で書いたり、というところも意識したいという気持ちはずっとあります。

自分を受け入れて、他者と共生する

ーー愛香さんがデザインのお仕事をはじめたきっかけは何だったんですか?

20歳ぐらいのときにアパレルの仕事をしていたのですが、当時の店長の勧めで手に職をつけようと思い、職業訓練学校を探していたとき偶然WEBデザインの定員が空いていたので飛び込んだのが最初です。
卒業してからは制作会社に入れてもらって実務経験を積んでいました。5年くらい経ってから妊娠をきっかけに辞めて、また復帰したんですけど、結構ハードな仕事だったので子育てとの両立が難しくて、フリーランスになるしかないと思いました。

ーーお子さんを育てるようになってから、社会の見方が変わったりもされましたか?

最近、娘に言われてドキッとしたことがありました。二人で映画を見ているときに、パパが実は女性だったことを知った娘が、はじめは拒絶していたけど少しずつ受け止めていくという家族愛を描いた作品の予告が流れたんです。
私は、その映画面白そうだなぁと思っていたんですが、娘に「そんなの受け容れて当たり前でしょ。なんでそんなことを大々的に感動的なストーリーにして映画にするの?」と言われて、世代が変わっているのを実感しました。ジェンダー問題を配慮するとか、課題として取り上げること自体が差別じゃないの?って。
でも、実際にLGBTの方が職場でカミングアウトできなくて苦しんでいたりするのも事実としてあるんですよね。

ーー世代によって当たり前が変わってきているのかもしれませんね。愛香さんは娘さんの声をどのように感じておられますか?

自分は自分のままで良いんだって受け止めることができたら全部解決するんじゃないかなと私は思っています。自分に対して「これで良いんだ」と思えたら、他者の多様性や自分と違うところも認められるようになるのかなって。
そうなるためには、今まで縛られていた「こうじゃないといけない」という思い込みだったり、「これが普通だ」という認識から解放される必要があると思うんですよね。そういう社会がもっと広がればいいなと思って、最近はコーチングやカウンセリングの資格を取得したりもしています。一人一人が自分を受け容れることができるようになれば、その人の家族もハッピーになって、一緒に働く人たちも会社の中もハッピーになっていく。それが少しずつ広がって地域、社会、世界をつくっていくような流れが理想ですね。

morningはまるで森。これからも木々がひしめき合う場所で

ーー今後チャレンジしたいことってありますか?

現在、デザインと並行してカウンセリングのお仕事もしていて、人の話を聞く経験をデザインのディレクションやお客様の言語化のお手伝いにも活かしてみたいと思っています。
もっと大きなことで言えば、そもそも小学校でみんなが同じ教育を受けることにも少し疑問を持っているんです。めちゃくちゃ理想を言うと、近所に住むおばあちゃんとかで編み物が上手な人、ピアノが上手な人みたいな先生がたくさん集まって、子どもが知りたいことを気軽に教えてもらえるような学校が出来たら良いなぁって思っています。そういう助成金とかって全然出されていないし、なかなか現実問題は難しいですけどね。

ーー素敵ですね。morningにいるとこういう話をみんなでできるし、聴けるのが楽しいですね。

「私一人がこんなこと考えていても意味がない」とか思いがちなんですけど、morningの中にいるとチームのみんなで何かできそうで、みんながいろんなことを考えているのが知れて楽しいです。
私は今、都会のど真ん中に住んでいるんですけど、morningの人たちと話すと都会の忙しさを忘れて自分の考えに立ち戻れる感じがします。

ーー最後に、小浜さんにとって、morningを一言で表すと何になりますか?

「森」ですね。木は土の中の菌を通じて会話しているんです。土中細菌を通じて、木々は周りの環境とかをシェアし合っていて。morningのみんなも遠くにいるけどチャットアプリとかでお互いの様子を窺って見ているだけで、なんか近くにいる雰囲気がするのが「森」っぽいかなと思いました。

執筆:西野日菜
編集:中西須瑞化

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Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。