環境も人も大切にしたい時、梱包・パッケージはどう選べばいいの?
2023年3月16日。東京都港区のSHIBAURA HOUSEで、カユーパッケージ株式会社主催、弊社による企画・運営のもと「環境も人も大切にしたい時、梱包・パッケージはどう選べばいいの?」と題したイベントを開催しました。
私たちmorning after cutting my hairとしては、これまでもPRやブランディングに携わってきたKAYU PACKAGEについて伝える、コロナ禍収束後初のオフラインイベントの企画となりました。
商品を傷つけず、大切な人に届いてほしい。
そんな想いから美しく丁寧な梱包を心がける日本特有の文化は、受け取った人への配慮という魅力がある一方で、過剰包装やプラスチック包装の廃棄における環境問題など向き合うべき課題があることも事実です。
そこで、ごみの中でも梱包・パッケージのこれからについて焦点を絞り、作り手として、また消費者として、一緒に悩み、考えることを目的に本イベントを開催しました。
この記事では、本イベントに参加して学んだことや感じたことをご紹介します。梱包・パッケージの選択における今後のアクションに役立ててみてください!
登壇者紹介
本イベントでは、小売・パッケージの製造や廃棄の仕事に携わる3名の代表者が登壇しました。
処理を担う立場から見た、日本の容器包装の現状
まずは、廃棄物処理会社に勤め日本のごみ問題に最前線で向き合う寺井さんより、日本の容器包装の現状について共有がありました。
日本のごみ処理の容積比率は、容器包装由来のプラスチックが46%も占めているのだそうです。また、日本のペットボトルのリサイクル率においては、法律で定められていないにも関わらず、自主的に洗い分別する仕組みができているため、約97%と世界的に高い水準を保っています。
一方で、その他のプラスチックはマテリアルに戻す割合が40%程度と低い水準に。この原因として、リサイクルの条件にきれいに洗われている・素材の種類ごとに分類されている・同じ種類がまとまっているの3つがあるにも関わらず、洗い方や分別の仕方が分かりやすく消費者に示されていないという課題が挙げられるのだそう。
ペットボトルにおいては当たり前に分別しているけれど、その他のプラスチックはリサイクルのために何をする必要があって、何が問題なのかを知らないことが多い。それが、ごみの処理に関する問題の根幹を担うのだと感じました。
梱包・パッケージのごみ問題に立ち向かう2社
次に「作り手」の視点から梱包・パッケージについてどんな悩みを抱えていて、どんな解決策を実行しているか、また何を大切にしているかについて共有がありました。
事例➀:素敵な体験も、環境への配慮も、どちらも大切にしたい...(SOLIT株式会社 田中)
梱包・パッケージの方法に関しての悩みの事例として、弊社代表でもあり、インクルーシブファッションブランド「SOLIT!」も運営する田中より共有がありました。
多様な人も地球環境も誰もどれも取り残さないことを目指すSOLITでは、特別なデザインはしないシンプルな段ボールに、メッセージが書かれたテープを貼るだけの梱包をしています。また、中の商品を包む布は残布を使用し、環境への負荷を最小限におさえているのだそう。
一方で、こんな悩みも...
環境への配慮も大切にしたいけれど、商品を買ってくれた人の素敵な体験も大切にしたい。このジレンマの中で、1つの正解を見つけることはとても難しいことなのです。
事例➁:木材パッケージを1つの選択肢として捉えてほしい(カユーパッケージ株式会社 王克文さん)
プラスチックの容器包装によるごみ問題に対する1つの解決策として、カユーパッケージ株式会社の商品である木材を使ったお弁当容器のKAYU PACKAGEについての共有がありました。
KAYU PACKAGEの木材容器は、日本の伝統的な木製容器に対するリスペクトから開発されています。プラスチックのごみ問題も、日本の文化を活用することで解決のヒントを見つけられるかもしれない。そんな想いで「現代にアップデートした木製容器」を作っていると、まずはプロダクトの紹介をしていただきました。
王さんは、決して無理に自社の商品を勧めるのではなく、あくまでも環境に配慮された「1つの選択肢」として提案することを大切にされていました。
KAYU PACKAGEの容器は、細部まで純度が高く廃棄しやすい自然素材という部分を考慮して開発されています。プラスチックと木材のような異素材を混ぜるということが一番廃棄処理がしづらいことを知っている王さんだからこそ、耐水性や耐油性保持のために内側をプラスチックでコーティングするという手段は絶対に取りたくなかったのだそう。その結果、お弁当容器として使いやすくするための工夫として、耐水性や耐油性があるグラシン紙で内側をコーティングするという方法を取り入れたのだということを、実際の商品を使って説明してくださいました。
立場が違うからこそ気が付く、「知らなかった」
登壇者の事例共有後、参加してくださった方々を交えて議論を行いました。
作り手は梱包・パッケージを作る段階のみに着目するのではなく、その先の「誰の手にわたって誰が処理するのか」にも着目することが大切なのかもしれません。
他にもこんな話題が挙げられました。
これらの話し合いを通して、いたるところで参加者や登壇者の「知らなかった」「そうなんだ」という声が飛び交っていたことが印象的でした。それぞれ立場の違う者同士が話し合って知らなかったことに気が付いた時、問題に対してするべきことが少しずつ見えてくるのかもしれません。
梱包・パッケージはどう選べば良いのか?
最後に、寺井さんと王さんから本イベントのテーマとなる「梱包・パッケージはどう選べばよいのか」についてまとめの言葉をいただきました。
作り手は、消費者が人や環境に配慮した選択ができるように選択肢を増やす。買い手は、自分たちの妥協できる部分や知らなかった部分を明確にし、環境にとって、そして自分たちにとって最適な選択をする。ごみを処分する立場の人は、伝えることで「知らない」から起こる環境破壊を減らす。
それぞれが自分たちの能力をどう活かし、問題に立ち向かうかが問題解決の鍵となります。
小さな工夫や取り組みが、大きな一歩につながるのかもしれません。
(執筆:清水碧、校正:中西須瑞化)
Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。