台湾の水戸黄門

2012年の頃、台湾出張中に、現地の取引先の人に夕食をご馳走になったときの出来事です。

現地のお取引先様の計らいで、台湾で有名な鼎泰豊(ディンタイフォン)の本店で、小籠包をお腹いっぱい食べさせてもらいました。お会計の時、私からご馳走になったお礼として「ごちそうさまです。」と言うと、ご馳走してくれた先方の担当者が「ドウカオカマイナク」と日本語で言ってきたので、「あれっ?日本語?でも、なんか変な使い方だな~」と思って、

「こういう場合は『どうかお構いなく』よりも『どういたしまして』と言った方が、クールジャパニーズになります。」と、教えてあげると...

「ドウイタシマシテ?」

「そうです、そうです。」

「プリーズ ティーチミー クールジャパニーズ モア!オネガイシマス!」

と、前半は英語なのに、なぜか後半の「オネガイシマス」だけ日本語。この人、基本の会話は英語なのに、ちょいちょい日本語を混ぜてくるから、ややこしい。


「わかりました。それでは、今あなたが喋った『お願いします』という日本語の最上級の言い方を教えましす。『お願いします』のあとに『お代官様』を付けると、より丁寧でクールジャパニーズになります。」

「オダイカンヤマ?」

「いやいや、代官山じゃなくて、お代官様です。(でも、なんで代官山知ってるの?)」

「この前、行きました。」

「(あっ、聴こえてた。)」

「なんだ、そうだったんですか~。(-_-;)」

「アリカトウゴザイマス、オダイカンサマ?」

「おっ?さっそく応用しましたね。しかし、人にものを頼むときは『お代官様』で良いのですが、お礼を言うときはお代官様ではなく『黄門様』になります。基本的にお代官様は、感謝されるようなことはしてくれませんから。」

「コウモン?サマ?」「ノー!ノット グーッド!」

「いやいや、そっちの肛門じゃなくて黄門様の方です!!なんで肛門を知ってるのー?!!

「(*´▽`*)照れ」

「(なに照れてんだよー!)」

「黄門様というのは、江戸時代という今よりずっと古い時代の、企業で言ったらバイスプレジデントみたいな地位の人のことです!うーん、バイスショーグンって言った方が海外では分かり易いのかな~?」

「ミトの?」

「そうそう!水戸の..って、えっ?知ってるの???」

「ケーブルTV」

「なるほど、ケーブルTVで台湾でも放送してるのか~!」

「スモールボックス、エブリバディオジギ。ホワイ?」

「あ~印籠ね。あれは徳川家の人しか持てないから。」

「アリカトウゴザイマス、コウモンサマ。」

「いやいや、俺に言わなくていいから。(う~ん、でも、いきなり黄門様だと、なんか分かり難いな。やっぱりお代官様とセットじゃないと。まあ、今日はこれくらいにしておこうかな。)」

「オネガイシマス、オダイカンサマ!」


「おっと、飲み込み速いですね~。(オレの心の声、聴こえてるのかな?)しかしもっとクールなのは『お願いします』を『おねげえしますだ』にすることですが、これは上級者向けなのでやらなくても大丈夫です。」

「オネゲエシマスダ?オダイカンサマ!」

「おーっ!ベリー クール!!(飲み込み良過ぎるー!)」

「アリガトウゴザイマス!コウモンサマ!!」

「あ、それはやめておきましょう!クール過ぎて日本人でも理解できない可能性がありますので。ではまた明日、シーユー!」

「サヨナラ、マチュピチュピチュサマ!」


どんな会話だよ。


う~ん、それにしても飲み込みが速い人だったな~。でも、実はこの人、日本語ペラペラなのに喋れないふりしてたのかもしれない?「肛門」のツッコミあたり、コントの台本並みだったからな~。ちょっと怪しいかも。

ちなみに私が帰国したあと、この人、私と同じ会社の別の日本人に、ホントに「お代官様」を使ったそうです。その結果、それを教えた私が、お代官様以上の悪者になりました。

ははぁ~! 御老公様、どうかお許しください! m(__)m

上司から罰として、「台北市、市中引き回しのうえ、打ち首獄門!」の刑を言い渡されました。(もちろん、江戸時代ジョークです)


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